13 / 57
第13話:勇者廃業。そして全世界にバレた「ハリボテ」の真実
――ドサッ、ドサッ、ドサッ。
辺境の森の出口付近。
泥だらけの人間が三人、ゴミ袋のように吐き出された。
シロ(フェンリル)とクロ(古竜)による、手厚い「お見送り」の結果である。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」
勇者ライオネルは、震える足で立ち上がろうとして、泥に滑って転んだ。
全身打撲に、精神的な摩耗。ミスリルの鎧はスクラップ同然にひしゃげ、自慢の金髪は見る影もない。
「最悪……あたしの服、ドロドロじゃない……」
「剣が……俺の剣が……」
ルルと剣士も放心状態だ。
だが、彼らの地獄はここからが本番だった。
ブブブブブッ……!
泥の中に落ちていたルルのスマホが、異常な振動を始めた。
通知の嵐だ。
「な、なによこれ……?」
ルルがおそるおそる画面を見る。
そこに表示されていたのは、SNSのリプライ、DM、そしてニュースアプリの速報通知だった。
【速報】勇者ライオネル、配信中に土下座! Sランク詐称疑惑が浮上
【炎上】元メンバーへのパワハラ、給料未払い、手柄の横取り……元関係者が次々と暴露
【悲報】チャンネル登録者数、異例の「マイナス」記録へ
「ひっ……!」
ルルがスマホを取り落とす。
さきほどの「重力土下座」の配信は、アーカイブとしてネットの海に永遠に刻まれた。
それだけではない。
あの配信を見たかつての依頼人や、ライオネルにいじめられていた元ギルド職員たちが、一斉に声を上げ始めたのだ。
『あの時の討伐成功、やっぱりジンの魔法のおかげだったんだな』
『ライオネルの手柄だと言われてたけど、映像見返したら全部ジンがサポートしてるわ』
『こいつ、打ち上げの代金をいつも「ツケ」にして逃げてたぞ』
『脱税疑惑も出てきたぞ』
ダムが決壊したように、過去の悪事が全て噴出していた。
「勇者」というメッキが剥がれ、中から出てきたのはただの醜悪な小悪党だった。
「お、おいルル! ギルドに連絡しろ! これは誤解だ、ジンの捏造だって言えばまだ……!」
ライオネルが縋るように叫ぶ。
だが、ルルは冷ややかな目で彼を見下ろした。
「……触らないでよ、犯罪者」
「は?」
「あんたのせいで、あたしのキャリアもめちゃくちゃよ! どうしてくれんの!? 詐欺師! 無能! ペテン師!」
「な、なんだとぉ!? お前だってノリノリだったじゃないか!」
「あたしは騙されてた被害者なの! ……そうよ、これから配信して『脅されてました』って泣けば、まだ助かるかも……」
ルルはブツブツと呟きながら、壊れた杖を引きずって王都の方角へと歩き出した。
剣士もまた、無言でライオネルに背を向けた。
「お、おい! 待てよ! 俺を置いていくな! 俺は勇者だぞ! これから復活するんだ!」
ライオネルの絶叫が虚しく響く。
誰も振り返らなかった。
残されたのは、巨額の違約金請求と、社会的信用の喪失、そして二度と消えない「土下座動画」のデジタルタトゥーだけ。
数日後。
冒険者ギルドは『シャイニング・ブレイバーズ』の解散と、ライオネルのライセンス永久剥奪を公式に発表した。
理由は「虚偽報告」および「配信規約への重大な違反」。
かつて栄華を極めた勇者は、路地裏の借金取りに怯えるただの浮浪者へと転落したのだった。
◇◇◇
一方その頃。
辺境の廃棄ダンジョン。
「ふんふんふ~ん♪」
俺は鼻歌交じりに、畑で採れたばかりの「ダンジョン芋」を収穫していた。
重力耕運のおかげで、土はふかふか、芋は丸々と太っている。
「シロ、クロ! おやつだぞー」
俺が呼ぶと、森の奥から銀色の風と黒い暴風が飛んできた。
二匹は俺の前で「おすわり」をして、尻尾(片方は極太)を振る。
「はい、蒸かし芋。熱いから気をつけろよ」
ホクホクの芋を投げてやると、二匹は幸せそうに頬張った。
平和だ。
王都の方では何やら大騒ぎになっているらしいが、ここには関係ない。
勇者たちがどうなったかは知らないが、まあ、自業自得だろう。
俺はふと、タブレットを確認した。
チャンネルの登録者数は【102万人】。
動画サイトから「金の盾」を送りたいという通知が来ていたが、住所がバレるので「受け取り拒否」にしておいた。
「ま、俺はここでのんびり暮らせればそれでいいしな」
名声も、地位もいらない。
美味しいご飯と、快適な住処と、ちょっとしたペットたち。
それだけで十分だ。
俺は満足げに空を見上げた。
「地味で映えない」と言われた俺の魔法は、ここでは誰よりも役に立ち、誰よりも輝いている(主に整地とかマッサージで)。
――だが。
俺はまだ知らなかった。
「100万人登録」の影響力が、俺の想像を遥かに超えていることを。
そして、この平和な辺境に、勇者よりも遥かに面倒な「お客様」たちが押し寄せようとしていることを。
遠くの空から、王家の紋章が入った飛空艇が、こちらに向かって飛んできていた。
辺境の森の出口付近。
泥だらけの人間が三人、ゴミ袋のように吐き出された。
シロ(フェンリル)とクロ(古竜)による、手厚い「お見送り」の結果である。
「はぁ、はぁ……死ぬかと思った……」
勇者ライオネルは、震える足で立ち上がろうとして、泥に滑って転んだ。
全身打撲に、精神的な摩耗。ミスリルの鎧はスクラップ同然にひしゃげ、自慢の金髪は見る影もない。
「最悪……あたしの服、ドロドロじゃない……」
「剣が……俺の剣が……」
ルルと剣士も放心状態だ。
だが、彼らの地獄はここからが本番だった。
ブブブブブッ……!
泥の中に落ちていたルルのスマホが、異常な振動を始めた。
通知の嵐だ。
「な、なによこれ……?」
ルルがおそるおそる画面を見る。
そこに表示されていたのは、SNSのリプライ、DM、そしてニュースアプリの速報通知だった。
【速報】勇者ライオネル、配信中に土下座! Sランク詐称疑惑が浮上
【炎上】元メンバーへのパワハラ、給料未払い、手柄の横取り……元関係者が次々と暴露
【悲報】チャンネル登録者数、異例の「マイナス」記録へ
「ひっ……!」
ルルがスマホを取り落とす。
さきほどの「重力土下座」の配信は、アーカイブとしてネットの海に永遠に刻まれた。
それだけではない。
あの配信を見たかつての依頼人や、ライオネルにいじめられていた元ギルド職員たちが、一斉に声を上げ始めたのだ。
『あの時の討伐成功、やっぱりジンの魔法のおかげだったんだな』
『ライオネルの手柄だと言われてたけど、映像見返したら全部ジンがサポートしてるわ』
『こいつ、打ち上げの代金をいつも「ツケ」にして逃げてたぞ』
『脱税疑惑も出てきたぞ』
ダムが決壊したように、過去の悪事が全て噴出していた。
「勇者」というメッキが剥がれ、中から出てきたのはただの醜悪な小悪党だった。
「お、おいルル! ギルドに連絡しろ! これは誤解だ、ジンの捏造だって言えばまだ……!」
ライオネルが縋るように叫ぶ。
だが、ルルは冷ややかな目で彼を見下ろした。
「……触らないでよ、犯罪者」
「は?」
「あんたのせいで、あたしのキャリアもめちゃくちゃよ! どうしてくれんの!? 詐欺師! 無能! ペテン師!」
「な、なんだとぉ!? お前だってノリノリだったじゃないか!」
「あたしは騙されてた被害者なの! ……そうよ、これから配信して『脅されてました』って泣けば、まだ助かるかも……」
ルルはブツブツと呟きながら、壊れた杖を引きずって王都の方角へと歩き出した。
剣士もまた、無言でライオネルに背を向けた。
「お、おい! 待てよ! 俺を置いていくな! 俺は勇者だぞ! これから復活するんだ!」
ライオネルの絶叫が虚しく響く。
誰も振り返らなかった。
残されたのは、巨額の違約金請求と、社会的信用の喪失、そして二度と消えない「土下座動画」のデジタルタトゥーだけ。
数日後。
冒険者ギルドは『シャイニング・ブレイバーズ』の解散と、ライオネルのライセンス永久剥奪を公式に発表した。
理由は「虚偽報告」および「配信規約への重大な違反」。
かつて栄華を極めた勇者は、路地裏の借金取りに怯えるただの浮浪者へと転落したのだった。
◇◇◇
一方その頃。
辺境の廃棄ダンジョン。
「ふんふんふ~ん♪」
俺は鼻歌交じりに、畑で採れたばかりの「ダンジョン芋」を収穫していた。
重力耕運のおかげで、土はふかふか、芋は丸々と太っている。
「シロ、クロ! おやつだぞー」
俺が呼ぶと、森の奥から銀色の風と黒い暴風が飛んできた。
二匹は俺の前で「おすわり」をして、尻尾(片方は極太)を振る。
「はい、蒸かし芋。熱いから気をつけろよ」
ホクホクの芋を投げてやると、二匹は幸せそうに頬張った。
平和だ。
王都の方では何やら大騒ぎになっているらしいが、ここには関係ない。
勇者たちがどうなったかは知らないが、まあ、自業自得だろう。
俺はふと、タブレットを確認した。
チャンネルの登録者数は【102万人】。
動画サイトから「金の盾」を送りたいという通知が来ていたが、住所がバレるので「受け取り拒否」にしておいた。
「ま、俺はここでのんびり暮らせればそれでいいしな」
名声も、地位もいらない。
美味しいご飯と、快適な住処と、ちょっとしたペットたち。
それだけで十分だ。
俺は満足げに空を見上げた。
「地味で映えない」と言われた俺の魔法は、ここでは誰よりも役に立ち、誰よりも輝いている(主に整地とかマッサージで)。
――だが。
俺はまだ知らなかった。
「100万人登録」の影響力が、俺の想像を遥かに超えていることを。
そして、この平和な辺境に、勇者よりも遥かに面倒な「お客様」たちが押し寄せようとしていることを。
遠くの空から、王家の紋章が入った飛空艇が、こちらに向かって飛んできていた。
あなたにおすすめの小説
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を
タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。
だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。
雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。
血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、
“最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~
リーフレット
ファンタジー
「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」
帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。
アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。
帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。
死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。
「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした
新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。
「ヨシュア……てめえはクビだ」
ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。
「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。
危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。
一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。
彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。
聖女の力を妹に奪われ魔獣の森に捨てられたけど、何故か懐いてきた白狼(実は呪われた皇帝陛下)のブラッシング係に任命されました
AK
恋愛
「--リリアナ、貴様との婚約は破棄する! そして妹の功績を盗んだ罪で、この国からの追放を命じる!」
公爵令嬢リリアナは、腹違いの妹・ミナの嘘によって「偽聖女」の汚名を着せられ、婚約者の第二王子からも、実の父からも絶縁されてしまう。 身一つで放り出されたのは、凶暴な魔獣が跋扈する北の禁足地『帰らずの魔の森』。
死を覚悟したリリアナが出会ったのは、伝説の魔獣フェンリル——ではなく、呪いによって巨大な白狼の姿になった隣国の皇帝・アジュラ四世だった!
人間には効果が薄いが、動物に対しては絶大な癒やし効果を発揮するリリアナの「聖女の力」。 彼女が何気なく白狼をブラッシングすると、苦しんでいた皇帝の呪いが解け始め……?
「余の呪いを解くどころか、極上の手触りで撫でてくるとは……。貴様、責任を取って余の専属ブラッシング係になれ」
こうしてリリアナは、冷徹と恐れられる氷の皇帝(中身はツンデレもふもふ)に拾われ、帝国で溺愛されることに。 豪華な離宮で美味しい食事に、最高のもふもふタイム。虐げられていた日々が嘘のような幸せスローライフが始まる。
一方、本物の聖女を追放してしまった祖国では、妹のミナが聖女の力を発揮できず、大地が枯れ、疫病が蔓延し始めていた。 元婚約者や父が慌ててミレイユを連れ戻そうとするが、時すでに遅し。 「私の主人は、この可愛い狼様(皇帝陛下)だけですので」 これは、すべてを奪われた令嬢が、最強のパートナーを得て幸せになり、自分を捨てた者たちを見返す逆転の物語。