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第36話:命名会議、あるいは「キラキラネーム」vs「野菜ネーム」の戦争
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巨大キャベツから女の子が生まれて数時間後。
俺のログハウスのリビングは、世界の命運を分ける御前会議のような重苦しい空気に包まれていた。
議題は一つ。「この最強の赤ん坊に、どんな名前をつけるか」だ。
テーブルの中央では、主役である赤ん坊が、重力魔法(自力)でプカプカと宙に浮きながら、スヤスヤと眠っている。
その周囲を、三人の女性が鬼の形相で取り囲んでいた。
「では、わたくしから提案させていただきますわ」
まずはアイリス女王が、ホワイトボードに優雅な筆記体で長い名前を書き出した。
『エリザベス・クリスティーナ・ド・サンクチュアリ・ユグドラシル』
「長ぇよ」
俺は即座にツッコミを入れた。
「寿限無か。呼ぶだけで日が暮れるぞ」
「あら、これでも削ったんですのよ? この子は将来、わたくしの養子として王位継承権を持つ可能性があります。これくらい格式高い名前でないと、貴族たちが黙っていませんわ」
「黙らせればいいだろ、物理で。却下だ」
俺がバッサリ切り捨てると、次はローズ(魔王令嬢)が不敵に笑って手を挙げた。
「フフフ……甘いですわね、アイリス。この子の魔力を見ました? 間違いなく魔王クラス。ならば、その力に相応しい『真名』が必要ですわ」
ローズが書いた名前は、血のような赤いインクで書かれていた。
『終焉の翼・ヴォルガノス・デストロイヤー』
「怪獣かよ」
俺は頭を抱えた。
「女の子だぞ? デストロイヤーて。学校でいじめられるぞ」
「ふふ、いじめる側が消滅しますから大丈夫ですわ」
「そういう問題じゃない。却下」
最後に、ルミナ(神様)が自信満々に手を挙げた。
「もー! 二人ともセンスないですね! この子は私の神気を受けてるんですよ? もっと未来的で、神聖で、かつ親しみやすい名前じゃないと!」
ルミナがタブレットに表示したのは、ロゴマークのようなデザインだった。
『ルミナ Mk-II』
「量産機か」
俺は深くため息をついた。
「お前らな……。名前ってのは、その子の一生を決める大事な贈り物だぞ。もっとこう、呼びやすくて、愛着が湧くような名前にできないのか」
「むぅ。じゃあ、パパであるジンさんの案を聞かせてくださいよ」
三人の視線が俺に集まる。
俺は腕組みをして、宙に浮く赤ん坊を見た。
鮮やかな緑色の髪。生命力に溢れた肌。そして何より、畑出身。
「……そうだな」
俺は口を開いた。
「ナッパ」
「「「却下ですわ!!!!」」」
三人がハモった。
「なんですのナッパって! サイヤ人のエリートですか!? 女の子ですのよ!?」
「いや、菜っ葉だろ。緑だし」
「単純すぎます! せめて『グリーン』とか!」
「それ色じゃねーか」
議論は平行線をたどった。
高貴すぎるキラキラネームか、中二病ネームか、適当すぎる野菜ネームか。
その時。
「あうー……」
騒がしさに目を覚ましたのか、赤ん坊がむずがり始めた。
金色の瞳がうるうると潤み、周囲の空間がビリビリと震え始める。
「あ、まずい! 泣きますわ!」
「ジンさん! あやして! 泣かれるとまた家が吹き飛びます!」
俺は慌てて赤ん坊を抱き上げた。
軽い。キャベツ一個分くらいの重さだ。
俺の腕の中で、赤ん坊はきょとんとして俺を見上げている。
その頭頂部に、ぴょこんと跳ねた「アホ毛」があるのが目に入った。
緑色の髪から飛び出した、二股に分かれた小さな毛束。
まるで、土から芽吹いたばかりの双葉のようだ。
「……フタバ」
俺は無意識に呟いた。
この聖域の豊かな土から芽吹いた、新しい命。
これ以上ないくらい、しっくりくる響きだった。
「フタバ……?」
俺が呼びかけると、赤ん坊は一瞬瞬きをして――
ニパァッ! と、天使のような満面の笑みを浮かべた。
「きゃう!」
同時に、家中の観葉植物が一斉に急成長し、テーブルに置いてあった果物の種から芽が出た。
どうやら気に入ったらしい。
「……あら」
アイリスが口元を緩めた。
「フタバ……。悪くありませんわね。大地に根付く、始まりの名前」
「まあ、デストロイヤーよりは可愛げがありますわね」
ローズも納得したように頷く。
「決まりですね! 『聖農村』の申し子、フタバちゃん! うん、可愛い!」
ルミナがフタバのほっぺをぷにぷにと突っついた。
こうして、数時間の激論の末、彼女の名前は『フタバ』に決定した。
「よし、フタバ。パパだぞー」
俺が高い高いをすると、フタバは「きゃはは!」と笑いながら、無邪気に重力波を放出した。
バリンッ。
修復したばかりの窓ガラスがまた割れた。
「……やれやれ。教育が必要だな」
俺は苦笑いした。
だが、安堵したのも束の間。次の問題が浮上した。
グゥゥゥゥ……。
フタバのお腹から、地響きのような音が鳴ったのだ。
「あ、お腹空いたみたいですね」
「ミルク! ミルクが必要ですわ!」
「待って、この子……普通のミルクでいいんですの?」
ローズの指摘に、全員が固まった。
キャベツから生まれ、神と竜と魔王の魔力を秘めた赤ん坊。
そんな規格外の生命体が、ただの牛乳で満足するだろうか?
試しにルミナが哺乳瓶を近づけると、フタバは「プイッ」と顔を背けた。
そして、テーブルの上に置いてあった最高級Sランク魔石(ドラゴンの心臓)に手を伸ばし――。
ガリッ。
バリボリバリボリ。
煎餅のように齧り始めた。
「「「ヒィィィィィッ!?」」」
「く、食ったァァァ!? 国宝級の魔石をオヤツみたいに!?」
「歯が丈夫すぎますわ!?」
「エネルギー効率どうなってるんですか!?」
俺は白目を剥いた。
ミルク代(食費)が、国家予算レベルになりそうだ。
俺のログハウスのリビングは、世界の命運を分ける御前会議のような重苦しい空気に包まれていた。
議題は一つ。「この最強の赤ん坊に、どんな名前をつけるか」だ。
テーブルの中央では、主役である赤ん坊が、重力魔法(自力)でプカプカと宙に浮きながら、スヤスヤと眠っている。
その周囲を、三人の女性が鬼の形相で取り囲んでいた。
「では、わたくしから提案させていただきますわ」
まずはアイリス女王が、ホワイトボードに優雅な筆記体で長い名前を書き出した。
『エリザベス・クリスティーナ・ド・サンクチュアリ・ユグドラシル』
「長ぇよ」
俺は即座にツッコミを入れた。
「寿限無か。呼ぶだけで日が暮れるぞ」
「あら、これでも削ったんですのよ? この子は将来、わたくしの養子として王位継承権を持つ可能性があります。これくらい格式高い名前でないと、貴族たちが黙っていませんわ」
「黙らせればいいだろ、物理で。却下だ」
俺がバッサリ切り捨てると、次はローズ(魔王令嬢)が不敵に笑って手を挙げた。
「フフフ……甘いですわね、アイリス。この子の魔力を見ました? 間違いなく魔王クラス。ならば、その力に相応しい『真名』が必要ですわ」
ローズが書いた名前は、血のような赤いインクで書かれていた。
『終焉の翼・ヴォルガノス・デストロイヤー』
「怪獣かよ」
俺は頭を抱えた。
「女の子だぞ? デストロイヤーて。学校でいじめられるぞ」
「ふふ、いじめる側が消滅しますから大丈夫ですわ」
「そういう問題じゃない。却下」
最後に、ルミナ(神様)が自信満々に手を挙げた。
「もー! 二人ともセンスないですね! この子は私の神気を受けてるんですよ? もっと未来的で、神聖で、かつ親しみやすい名前じゃないと!」
ルミナがタブレットに表示したのは、ロゴマークのようなデザインだった。
『ルミナ Mk-II』
「量産機か」
俺は深くため息をついた。
「お前らな……。名前ってのは、その子の一生を決める大事な贈り物だぞ。もっとこう、呼びやすくて、愛着が湧くような名前にできないのか」
「むぅ。じゃあ、パパであるジンさんの案を聞かせてくださいよ」
三人の視線が俺に集まる。
俺は腕組みをして、宙に浮く赤ん坊を見た。
鮮やかな緑色の髪。生命力に溢れた肌。そして何より、畑出身。
「……そうだな」
俺は口を開いた。
「ナッパ」
「「「却下ですわ!!!!」」」
三人がハモった。
「なんですのナッパって! サイヤ人のエリートですか!? 女の子ですのよ!?」
「いや、菜っ葉だろ。緑だし」
「単純すぎます! せめて『グリーン』とか!」
「それ色じゃねーか」
議論は平行線をたどった。
高貴すぎるキラキラネームか、中二病ネームか、適当すぎる野菜ネームか。
その時。
「あうー……」
騒がしさに目を覚ましたのか、赤ん坊がむずがり始めた。
金色の瞳がうるうると潤み、周囲の空間がビリビリと震え始める。
「あ、まずい! 泣きますわ!」
「ジンさん! あやして! 泣かれるとまた家が吹き飛びます!」
俺は慌てて赤ん坊を抱き上げた。
軽い。キャベツ一個分くらいの重さだ。
俺の腕の中で、赤ん坊はきょとんとして俺を見上げている。
その頭頂部に、ぴょこんと跳ねた「アホ毛」があるのが目に入った。
緑色の髪から飛び出した、二股に分かれた小さな毛束。
まるで、土から芽吹いたばかりの双葉のようだ。
「……フタバ」
俺は無意識に呟いた。
この聖域の豊かな土から芽吹いた、新しい命。
これ以上ないくらい、しっくりくる響きだった。
「フタバ……?」
俺が呼びかけると、赤ん坊は一瞬瞬きをして――
ニパァッ! と、天使のような満面の笑みを浮かべた。
「きゃう!」
同時に、家中の観葉植物が一斉に急成長し、テーブルに置いてあった果物の種から芽が出た。
どうやら気に入ったらしい。
「……あら」
アイリスが口元を緩めた。
「フタバ……。悪くありませんわね。大地に根付く、始まりの名前」
「まあ、デストロイヤーよりは可愛げがありますわね」
ローズも納得したように頷く。
「決まりですね! 『聖農村』の申し子、フタバちゃん! うん、可愛い!」
ルミナがフタバのほっぺをぷにぷにと突っついた。
こうして、数時間の激論の末、彼女の名前は『フタバ』に決定した。
「よし、フタバ。パパだぞー」
俺が高い高いをすると、フタバは「きゃはは!」と笑いながら、無邪気に重力波を放出した。
バリンッ。
修復したばかりの窓ガラスがまた割れた。
「……やれやれ。教育が必要だな」
俺は苦笑いした。
だが、安堵したのも束の間。次の問題が浮上した。
グゥゥゥゥ……。
フタバのお腹から、地響きのような音が鳴ったのだ。
「あ、お腹空いたみたいですね」
「ミルク! ミルクが必要ですわ!」
「待って、この子……普通のミルクでいいんですの?」
ローズの指摘に、全員が固まった。
キャベツから生まれ、神と竜と魔王の魔力を秘めた赤ん坊。
そんな規格外の生命体が、ただの牛乳で満足するだろうか?
試しにルミナが哺乳瓶を近づけると、フタバは「プイッ」と顔を背けた。
そして、テーブルの上に置いてあった最高級Sランク魔石(ドラゴンの心臓)に手を伸ばし――。
ガリッ。
バリボリバリボリ。
煎餅のように齧り始めた。
「「「ヒィィィィィッ!?」」」
「く、食ったァァァ!? 国宝級の魔石をオヤツみたいに!?」
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