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第39話:夜泣きが世界規模の災害(ハリケーン)だった件
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その夜、俺は久々に訪れた静寂の中で、泥のように眠っていた。
昼間、フタバへの農作業指導(という名の災害復旧作業)で体力を使い果たしたからだ。
だが、その平穏は、午前2時に破られた。
「う、うぅ……」
隣のベビーベッドから、小さなぐずり声が聞こえた。
次の瞬間。
ゴロゴロゴロ……ッ!
遠くで雷鳴が轟いた。
いや、ただの雷じゃない。家全体がビリビリと振動するほどの重低音だ。
「……ん?」
俺が重い瞼を開けた直後。
「うえぇぇぇぇぇんッ!!!」
フタバが泣き出した。
その瞬間、窓の外でバチィッ!!と閃光が走り、豪雨が滝のように降り注ぎ始めた。
屋根を叩く雨音が、機関銃の掃射のように激しい。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
俺が跳ね起きると、ドアがバン! と開いて、パジャマ姿のルミナ(神様)が飛び込んできた。
「た、大変ですジンさん! 世界が! 世界の天気がバグってます!」
「はあ?」
「見てくださいこれ!」
ルミナが突き出したタブレットの天気図は、大陸全土が真っ赤な暴風雨マークで埋め尽くされていた。
「砂漠地帯で洪水! 北国で熱波! そしてこの聖域を中心に、カテゴリー5を超える超巨大台風が発生しています!」
「なんだと……?」
「原因はフタバちゃんです! あの子の感情エネルギーが、この星の大気マナとリンクしちゃってるんです!」
俺はベビーベッドを見た。
フタバは顔を真っ赤にして、涙を流しながら泣き叫んでいる。
「うえぇぇぇん!(寂しいよぉぉ!)」
彼女の泣き声が上がるたびに、風速が上がり、家がミシミシと悲鳴を上げる。
このままでは、夜泣きで世界が滅びる。
「よしよし、泣かないでフタバちゃん! ママがいますわよ!」
ローズ(魔王令嬢)が瞬間移動で現れ、フタバを抱き上げた。
彼女は優しくあやそうとして――
「強制睡眠!」
「魔法を使うなバカ者!」
俺が止めた。
赤ん坊に闇属性の睡眠魔法など撃ったら、悪夢を見て余計に泣くぞ。
「じゃあわたくしが! 王家に伝わる子守唄を!」
アイリス女王がネグリジェ姿で現れ、朗々と歌い出した。
「♪おお~、偉大なる~、祖国の~栄光よ~!!」(オペラ調)
「うるさい! 声量がデカすぎて逆効果だ!」
フタバは驚いて、さらに泣き声を大きくした。
ギャァァァァァッ!!!
ズドォォォォンッ!!!
庭に特大の雷が落ち、シロ(フェンリル)の「キャンッ!?」という悲鳴が聞こえた。
「もう! こうなったら私が神の光で……」
「眩しいからやめろ!」
三人のママたちは完全にパニック状態だ。
彼女たちは「世界を救う」とか「敵を倒す」ことには長けているが、「赤ん坊を泣き止ませる」というミッションに関しては素人以下だった。
嵐は激しさを増し、天井からは雨漏り(というか雨雲が発生している)がポタポタと落ちてくる。
フタバは汗だくになりながら、手足をバタバタさせて泣きじゃくっている。
……可哀想に。
自分の強大な力と、制御できない感情の板挟みになって、不快なんだろう。
「どいてろ。俺がやる」
俺は三人を押しのけ、フタバをそっと抱き取った。
ずしり、と重い魔力を感じる。
「フタバ。大丈夫だ、パパはここにいるぞ」
俺は右手を掲げ、部屋全体の空気を掌握した。
「グラビティ・クレイドル」
フワッ……。
俺とフタバの周囲から、重力が消えた。
フタバの体がふわりと宙に浮く。
さらに、俺は重力の膜で周囲の音(雷鳴や雨音)を遮断し、完全な静寂を作り出した。
羊水の中にいるような、温かくて、何にも縛られない浮遊感。
「あう……?」
フタバの泣き声が止まった。
彼女は不思議そうに、宙に浮く自分の手足を見つめ、そして俺の顔を見た。
「……ゆーら、ゆーら」
俺は指先で重力を微調整し、フタバの体を優しく、ゆっくりと揺らした。
人間の手では不可能な、完璧に一定のリズム。
優しい重力の波(ゆらぎ)が、彼女の高ぶった神経を鎮めていく。
「よしよし。お前の力は大きいけど、今は全部パパが支えてやるから」
俺が低く囁くと、フタバの瞳から涙が引いていった。
安心したような、とろけるような表情。
「パパ……」
フタバは小さく呟くと、俺の服をギュッと握りしめ、深い吐息をもらした。
「……すぅ」
寝息。
フタバが眠りに落ちた瞬間。
ピタリ。
嘘のように、外の豪雨と暴風が止んだ。
雲が割れ、綺麗な月明かりが差し込んでくる。
世界中の嵐が一瞬で消滅したのだ。
「……す、凄いですわ」
ローズが呆然と呟く。
「重力で寝かしつけるなんて……」
「これが、パパの包容力……!」
アイリスが目を潤ませている。
「いや、ただの物理法則の応用だけどな」
俺は眠ったフタバを、ゆっくりとベビーベッド(重力クッション付き)に戻した。
その寝顔は天使そのもので、さっきまで世界を滅ぼしかけていたとは思えない。
「……ふぅ。これで朝まで寝てくれるといいんだが」
俺は肩の力を抜いた。
育児は、ドラゴン退治より神経を使う。
だが、この寝顔を守るためなら、世界中の天候くらい俺が制御してやろうじゃないか。
そう思った矢先、ルミナがスマホを見て青ざめた。
「ジンさん。さっきの嵐で、隣国の王都の屋根が半分くらい吹き飛んだそうです」
「……見なかったことにしよう」
俺はそっと布団を被った。
明日は、王都への謝罪と修繕作業(物理)が待っているようだ。
昼間、フタバへの農作業指導(という名の災害復旧作業)で体力を使い果たしたからだ。
だが、その平穏は、午前2時に破られた。
「う、うぅ……」
隣のベビーベッドから、小さなぐずり声が聞こえた。
次の瞬間。
ゴロゴロゴロ……ッ!
遠くで雷鳴が轟いた。
いや、ただの雷じゃない。家全体がビリビリと振動するほどの重低音だ。
「……ん?」
俺が重い瞼を開けた直後。
「うえぇぇぇぇぇんッ!!!」
フタバが泣き出した。
その瞬間、窓の外でバチィッ!!と閃光が走り、豪雨が滝のように降り注ぎ始めた。
屋根を叩く雨音が、機関銃の掃射のように激しい。
「な、なんだ!? 敵襲か!?」
俺が跳ね起きると、ドアがバン! と開いて、パジャマ姿のルミナ(神様)が飛び込んできた。
「た、大変ですジンさん! 世界が! 世界の天気がバグってます!」
「はあ?」
「見てくださいこれ!」
ルミナが突き出したタブレットの天気図は、大陸全土が真っ赤な暴風雨マークで埋め尽くされていた。
「砂漠地帯で洪水! 北国で熱波! そしてこの聖域を中心に、カテゴリー5を超える超巨大台風が発生しています!」
「なんだと……?」
「原因はフタバちゃんです! あの子の感情エネルギーが、この星の大気マナとリンクしちゃってるんです!」
俺はベビーベッドを見た。
フタバは顔を真っ赤にして、涙を流しながら泣き叫んでいる。
「うえぇぇぇん!(寂しいよぉぉ!)」
彼女の泣き声が上がるたびに、風速が上がり、家がミシミシと悲鳴を上げる。
このままでは、夜泣きで世界が滅びる。
「よしよし、泣かないでフタバちゃん! ママがいますわよ!」
ローズ(魔王令嬢)が瞬間移動で現れ、フタバを抱き上げた。
彼女は優しくあやそうとして――
「強制睡眠!」
「魔法を使うなバカ者!」
俺が止めた。
赤ん坊に闇属性の睡眠魔法など撃ったら、悪夢を見て余計に泣くぞ。
「じゃあわたくしが! 王家に伝わる子守唄を!」
アイリス女王がネグリジェ姿で現れ、朗々と歌い出した。
「♪おお~、偉大なる~、祖国の~栄光よ~!!」(オペラ調)
「うるさい! 声量がデカすぎて逆効果だ!」
フタバは驚いて、さらに泣き声を大きくした。
ギャァァァァァッ!!!
ズドォォォォンッ!!!
庭に特大の雷が落ち、シロ(フェンリル)の「キャンッ!?」という悲鳴が聞こえた。
「もう! こうなったら私が神の光で……」
「眩しいからやめろ!」
三人のママたちは完全にパニック状態だ。
彼女たちは「世界を救う」とか「敵を倒す」ことには長けているが、「赤ん坊を泣き止ませる」というミッションに関しては素人以下だった。
嵐は激しさを増し、天井からは雨漏り(というか雨雲が発生している)がポタポタと落ちてくる。
フタバは汗だくになりながら、手足をバタバタさせて泣きじゃくっている。
……可哀想に。
自分の強大な力と、制御できない感情の板挟みになって、不快なんだろう。
「どいてろ。俺がやる」
俺は三人を押しのけ、フタバをそっと抱き取った。
ずしり、と重い魔力を感じる。
「フタバ。大丈夫だ、パパはここにいるぞ」
俺は右手を掲げ、部屋全体の空気を掌握した。
「グラビティ・クレイドル」
フワッ……。
俺とフタバの周囲から、重力が消えた。
フタバの体がふわりと宙に浮く。
さらに、俺は重力の膜で周囲の音(雷鳴や雨音)を遮断し、完全な静寂を作り出した。
羊水の中にいるような、温かくて、何にも縛られない浮遊感。
「あう……?」
フタバの泣き声が止まった。
彼女は不思議そうに、宙に浮く自分の手足を見つめ、そして俺の顔を見た。
「……ゆーら、ゆーら」
俺は指先で重力を微調整し、フタバの体を優しく、ゆっくりと揺らした。
人間の手では不可能な、完璧に一定のリズム。
優しい重力の波(ゆらぎ)が、彼女の高ぶった神経を鎮めていく。
「よしよし。お前の力は大きいけど、今は全部パパが支えてやるから」
俺が低く囁くと、フタバの瞳から涙が引いていった。
安心したような、とろけるような表情。
「パパ……」
フタバは小さく呟くと、俺の服をギュッと握りしめ、深い吐息をもらした。
「……すぅ」
寝息。
フタバが眠りに落ちた瞬間。
ピタリ。
嘘のように、外の豪雨と暴風が止んだ。
雲が割れ、綺麗な月明かりが差し込んでくる。
世界中の嵐が一瞬で消滅したのだ。
「……す、凄いですわ」
ローズが呆然と呟く。
「重力で寝かしつけるなんて……」
「これが、パパの包容力……!」
アイリスが目を潤ませている。
「いや、ただの物理法則の応用だけどな」
俺は眠ったフタバを、ゆっくりとベビーベッド(重力クッション付き)に戻した。
その寝顔は天使そのもので、さっきまで世界を滅ぼしかけていたとは思えない。
「……ふぅ。これで朝まで寝てくれるといいんだが」
俺は肩の力を抜いた。
育児は、ドラゴン退治より神経を使う。
だが、この寝顔を守るためなら、世界中の天候くらい俺が制御してやろうじゃないか。
そう思った矢先、ルミナがスマホを見て青ざめた。
「ジンさん。さっきの嵐で、隣国の王都の屋根が半分くらい吹き飛んだそうです」
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