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第1話
しおりを挟む床についてもなかなか寝付けない夜はセンチメンタルな気分になりがちだ。
堀木はベッドの上で二転、三転寝返りを打ちながら眠れぬ夜を過ごしていた。
頭の中に浮かぶのはかつての恋人の面影だ。
彼は、隣で眠る恋人の穏やかな寝息を聞きながら眠るのが好きだった。
何も考えず、満たされた気持ちの中で漂いながら恋人の呼吸に合わせていると、徐々に意識
がとろけてゆき、いつの間にか眠りに落ちている。
俺はあいつがいなくなってから眠り方を忘れてしまった。
どうして俺を置いていってしまったの?
お前に会いたいよ、たかひろ…。
堀木はパジャマのズボンを膝まで下ろすと、ベッドの上でうつ伏せになった。
彼の恋人に対する想いが固く、大きく膨張し、震えている。
彼はペニスに手を伸ばして、ゆっくりとしごき始めた。
あぁ…たかひろ…またお前に抱かれたい。
快感の波が徐々に大きくなっていき、まさに絶頂に達しようとした時、玄関の方からガチャガチャと鍵を開ける音がした。
たかひろだ。来てくれるなら連絡ぐらい入れてくれればいいのに。
堀木はズボンを履き直してベッドから出ると、玄関へと向かった。
たかひろはスーツケースを片手に持ったまま、靴を脱いでいる。
たかひろ、ずっとお前に会いたかった。
また会えるなんて夢のようだ…。
「おかえり、たかひろ」
感極まった堀木はたかひろの手を握った。
堀木はこの上なく幸せな気持ちだった、この瞬間までは。
「イカ臭い手で触らないで下さい、サカリのついた豚野郎」
たかひろは冷たく言い放つと、堀木の手を振りほどいた。
…なんで?怒ってる?
たかひろは有無を言わさず堀木の股間に膝蹴りを加えた。
「うっ…」
くぐもったうめき声をあげながら、堀木は股間を押さえてその場にうずくまった。
「なぁ、おいあんた、浮気しただろ、大野って奴と」
「…どうして大野くんの事知ってるの?」
「質問してるのは僕の方ですよね、浮気したんでしょ?はいかいいえで答えて下さい」
たかひろは壁にもたれて腕を組んだまま、堀木を見下ろしている。
顔面は蒼白で、いつにもなく瞬きを繰り返しながらぽってりとした厚い唇を震わせている。
やばい、これは本気で怒っている。
長い付き合いの中で、彼がここまで怒っている姿を堀木は初めて目の当たりにした。
「…はい、浮気しました、ごめんなさい」
「はあ…やっぱりね。見て下さいよ、この写真」
たかひろは床にしゃがみ込んで、堀木の顔の前にスマートフォンを突きつけた。
そこに映っていたのはベッドに腰掛けて切なげな表情の堀木と、後ろから堀木を抱きしめながら勝ち誇ったような笑みを浮かべた大野の姿だった。
「先週その大野明仁さん?って方から仕事用のアドレスにメールが来てたんですよ。写真からは事後か前か分かりませんけど、寝たんですよね?その人と。どうして?」
「だって、淋しかったんだもん…。」
「寂しい?それはあなたの感想ですよね。あなたは自分の性欲に負けただけでしょ。
チンコが欲しくてたまらなかったんでしょう?
そんなに尻が淋しいなら、根菜でも挿入れてればいいじゃない。
あなたなら大根も挿入るんじゃないですか?」
たかひろは蔑んだような笑みを顔に貼りつけたまま、一方的にまくし立てた。
「ひどい!人の気も知らないで好き勝手なことばっかり言いやがって。お前だって俺のことを言えるのか?
どうせ嫁さんと毎晩やってるんだろ、ずるいよお前ばっかり。
俺だって…俺だってお前と一緒にいたかったのに、どうして俺じゃダメなの?
俺の知らない間に彼女作ったと思ったら、結婚するからって、急に出て行きやがって…。
俺のことなんてもうどうでもいいんだろ、なのになんで束縛しようとするの?」
そう言うと、堀木はうずくまったまま泣き出した。
たかひろは腕を組んで床に座り込んだまま、ずっと黙って聞いていた。
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