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第12話
しおりを挟む深夜3時頃、たかひろは隣で眠っている堀木が微かにいびきをかき始めたのを聞くと、彼を起こさないようにこっそりとベッドから抜け出した。
たかひろは、堀木が自分の寝息を聞きながら眠るのが好きであることを以前から知っていたので、眠れない日でも、すぐに眠りに落ちたふりをしてじっと目を閉じたまま、堀木が眠るまで彼の胸に顔を埋めていたものだった。
実のところ、たかひろはあまり寝つきが良い方ではない。
日頃、たばこや缶コーヒーを何本も飲みながら日付が変わるまで書斎で仕事をしているので寝つけなくても当然といえば当然なのだが、今晩は特に眠れそうにない。
口では写真の人と一緒になってもいいと言ったけれど、本当は、自分だけの堀木さんでいてほしい。
あの若い男と、堀木さんが抱き合っているのを想像すると、腹が立って眠れない。
たかひろはリビングでたばこをふかしながら、堀木の白くてもっちりとした、なめらかな肌を思い出していた。
『愛してるよ、たかひろ…。』
たかひろの脳裏には、涙で潤んだ瞳で息を弾ませながら愛の言葉を囁く堀木の姿が浮かんでいた。
二人とも汗で肌をしっとりとさせ、愛を貪りあった快感に酔っていた。
おいらだって堀木さんの全てを愛している。
そんなの、言わなくたってわかるじゃないですか…。
たかひろは大きなため息とともに煙を吐き出しながら、煙草の火を揉み消した。
灰皿にぽつんと残された吸殻の先が折れ曲がってぼろぼろになっている。
たかひろは寝室の扉をそっと開け、その隙間から眠っている堀木を見つめた。
彼はベッドの真ん中で大の字になり、いびきをかいている。
その無防備な姿、子供のような寝顔が愛おしい。
堀木さんが別の誰かに奪われるなんて、全く考えたことがなかった。
いつだってあなたは、おいらのそばにいて、おいらを求め、必要としてくれた。
おいらは今までずっと、あなたの気持ちに応えたいと思ってきたし、あなたを誰よりも求めている。
自分の家族と堀木さん、両方とも手に入れようとするのは強欲なのか。
どちらも同じくらい大切に思っているはずなのに…。
どうして、それができないんだろう。
どちらかだけを選ぶなんて、おいらにそんなことできるのだろうか・・・。
彼は答えを出すことができぬまま、扉の前で思い悩んだ。
そして、そっとベッドに潜り込み、堀木の身体に自分の顔を埋めた。
たかひろは堀木の身体に顔を埋めたり、彼のぽっこりしたお腹に頭を乗せて眠るのが好きだった。
堀木のもっちりとした、暖かくて柔らかい肌に包まれていると、自分の苛立ちや不安も、何もかも全て包み込んでくれるような気がして、安らかな気持ちになってくる。
すると急に、堀木と知り合うより前のずっと昔、小さな子供の頃のことを思い出して、懐かしい思い出に浸っているうちに、いつのまにか意識が途切れている。
たかひろは遠くの方で鳴いているカラスの鳴き声を聞きながら、堀木の肌の温もりを感じていた。
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