エンシェント・テイル・オンライン

第35話 ディアス

「振り向くな！そして、答えろ。貴様は何者だ？私の研究資料が目的か？」

トーシンは、ディアスの家のドアの前で後頭部に銃を突きつけられていた。

(えっ？えっ？えー！何この状況！俺、ただディアスさんの家に着いたはいいけどいるか分からないから、ドアをノックしているか確かめようとしただけなんですけど、なんなんだよこの状況！)

そうトーシンは、ただディアスの家のドアをノックしようとしたら、背後から急に何者かに後頭部に銃口を突きつけられたのだ。

「あと、3秒以内に答えろ。さもなくば、貴様の頭に風穴が空くことになるぞ。3…、2…、」

(風穴？えっ、俺バァンされちゃうの？バァンされちゃうの!?)

「ちょっ、ちょっと待った!!僕の名前はトーシンです！目的は、ディアスさんに聞きたいことがあっただけです！」

トーシンは、焦りながら自分の名前と目的を答える。

「ほう、そうかこの私に聞きたいことが…。」

(この私に？ってことはこの人がディアスさん!?ディアスさんってこんなおっかない人なのかよ！)

「だが、貴様も運が悪かったな。その言葉が真実であれ、嘘であれ、私は今この家の敷地に入った者は問答無用で殺すことにしている。そして、このことは街中の者が知っていることだ。」

(おいおい、何それ！聞いてねぇぞ！あっ！もしかしてさっきのNPCが言ってた頑張れってこのことか！いや待って、それならそうでこのことおしえろよ！てか、敷地に入っただけで殺すとかこの人マジ怖いんだけど！)

トーシンは心の中で先程のNPCに対する文句を言う。

「じゃあな、恨むならお前の運の無さを恨むんだな。」

「ちょまっ…!!」

パァーン!!

発砲音が響き渡る。

だが、銃弾による衝撃はいつまで経っても来ない。

「え？」

いつまでも衝撃が来ない事を不思議に思い疑問の声が漏れる。

「なーんちゃって、冗談だよーん。」

と軽い感じの声がトーシンの背後から聞こえてくる。

「は？どゆこと？」

トーシンは振り向きながら、声の主に問いかける。

振り向いた先に居たのは、イタズラが成功した子供のようにニヤニヤした顔の壮年の男性が立っていた。

「だからさっきも言ったろ？冗談だよーんと。お前さんがここに来るの知っておったから、ちょっとイタズラしてやろうと思ってな。」

そう、あっけからんとした態度でディアスが答える。

「は？は？はあああああああああぁぁぁ!?」

トーシンは叫ぶ。

「ハッハッハ、少し落ち着きたまえ。まぁ、立ち話もなんだし、とりあえず私の家に入るといい。私に用があるんだろ？」

そう笑いながら、ディアスは自分の家へとトーシンを招待する。

「いや！ちょ、あんたなぁ！」

「いいから、いいから。ほら早く入りなさい。」

そう言いながら、文句を言おうとしているトーシンをディアスが自分の家に押し込む。

そして、2人が家の中に入るとディアスはガチャリと扉の鍵を閉める。

「これで良し！と。」

「おい、あんたなぁ！初対面であんなドッキリ仕掛けるなんて何考えてんだよ！マジで怖かったんだからな！」

「すまんすまん。つい私の中に眠るとてつもなく大きなイタズラ心を抑えることができなくてな。それより、私への用事とはコボルトメタルのことだろう？」

「いや、何サラッと話題変えようとしてるの？ん？ちょっと待って、なんであんたコボルトメタルのこと知ってんの？」

こうしてディアスの口から予想外の言葉が出て、トーシンはサラッと話題を変えられたのだった。