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図書室を出てすぐの階段を降り、一階の廊下を進む。他の生徒に見つからないかとびくびくする花音に対して、律は落ち着いたものだった。
「大丈夫。今は授業中だから」
律の言うとおり、廊下に人の姿はない。花音は安心する傍ら、授業中なのに堂々と単独行動をしている律の存在を不思議に思う。
(律くん――律でいいか。一体何者なんだろう。そういえばこの白衣からして、変だよねえ?)
律の後ろを歩いているのをいいことに、穴があくほどその背中を見つめていた花音は、「ここ」と言って急に立ち止まった彼にぶつかりそうになった。さも当然であるかのように中に入った律に続き、十分に距離を取ってから、花音も室内に足を踏み入れる。
薄暗い部屋だった。机と椅子は脇に追いやられ、普通の教室としては使われていないことが見て取れる。
中央付近にまで歩を進めたとき、律が照明のスイッチを押した。周囲を見渡して、花音は息を呑んだ。
大中小、様々な大きさの写真が、四方の壁すべてを覆い尽くすように大量に貼られている。
東側の壁には人物を撮った写真がこれでもかというくらい飾られており、南側には風景を切り取った写真が、その隣は動物、そして最後の壁は、星空の写真でぎっしりと埋め尽くされている。
窓がない部屋だから暗かったのだ。いや、もしかしたら写真で隠れているだけなのかもしれないが、隙間がないのでその形跡も見えない。
「うわあ……」
ようやく声が出ると、律が視線だけで頷いた。
「写真部の部室。結構力を入れていて、展覧会とかで賞も取ってる」
「すごい……」
花音はしばらく教室の真ん中に立ち尽くしていた。作品で作り上げられた一面の壁には畏怖すら感じてしまう。やがて、覚悟を決めてその中の一つに近寄ってみる。
「――うわあ、これとか、すごい鮮やかな色……! CGじゃないんだよね!? こんな景色、現実にあるんだ!」
一気にテンションが上がってすごいすごいとはしゃぐ花音を尻目に、律はきょろきょろと視線を巡らす。
「わー、これもきれい! ……ん!? ね、ねえちょっと、あの辺、外国の写真じゃない!?」
「え? あ、うん」
律は雑多に積まれた機材を動かしながらも、花音の質問には律儀に答えてくれる。
「合宿は、毎年海外らしいから」
「なんだって!?」
花音は思わず目をむいた。
ここまで見てきた廊下などの内装は、花音の通う学校ともさほど変わらない簡素なものだった。それ故、金持ち学校という実感がまだわいていなかったのだが、お金をかけているところが違ったらしい。
「でも、色々ノルマがある。写真部のノルマは、展覧会には必ず毎回出品すること。合宿では一日百枚以上撮ること。そして、一人一枚、この壁に星空の写真を貼ること……だったかな」
さすがに無条件というわけではないようだ。しかし、妙なノルマではある。
律が探していたのは脚立だったようで、壁際に持ってくると、その上に乗った。そして、中央に貼られたひときわ大きい写真を壁からはがす。
「わっ、取っちゃっていいの!?」
「ここのはどれも自由に見ていい写真だから。……それに、これ、ずっと前からここに貼ってあるんだけど……」
律が渡してくれた一枚を見る。暗号にあった、北斗七星の中の七番目の星が中心に映っている写真だ。だが、そのアルカイドをじっくり観察してみても、何の変哲も感じられない。
「大丈夫。今は授業中だから」
律の言うとおり、廊下に人の姿はない。花音は安心する傍ら、授業中なのに堂々と単独行動をしている律の存在を不思議に思う。
(律くん――律でいいか。一体何者なんだろう。そういえばこの白衣からして、変だよねえ?)
律の後ろを歩いているのをいいことに、穴があくほどその背中を見つめていた花音は、「ここ」と言って急に立ち止まった彼にぶつかりそうになった。さも当然であるかのように中に入った律に続き、十分に距離を取ってから、花音も室内に足を踏み入れる。
薄暗い部屋だった。机と椅子は脇に追いやられ、普通の教室としては使われていないことが見て取れる。
中央付近にまで歩を進めたとき、律が照明のスイッチを押した。周囲を見渡して、花音は息を呑んだ。
大中小、様々な大きさの写真が、四方の壁すべてを覆い尽くすように大量に貼られている。
東側の壁には人物を撮った写真がこれでもかというくらい飾られており、南側には風景を切り取った写真が、その隣は動物、そして最後の壁は、星空の写真でぎっしりと埋め尽くされている。
窓がない部屋だから暗かったのだ。いや、もしかしたら写真で隠れているだけなのかもしれないが、隙間がないのでその形跡も見えない。
「うわあ……」
ようやく声が出ると、律が視線だけで頷いた。
「写真部の部室。結構力を入れていて、展覧会とかで賞も取ってる」
「すごい……」
花音はしばらく教室の真ん中に立ち尽くしていた。作品で作り上げられた一面の壁には畏怖すら感じてしまう。やがて、覚悟を決めてその中の一つに近寄ってみる。
「――うわあ、これとか、すごい鮮やかな色……! CGじゃないんだよね!? こんな景色、現実にあるんだ!」
一気にテンションが上がってすごいすごいとはしゃぐ花音を尻目に、律はきょろきょろと視線を巡らす。
「わー、これもきれい! ……ん!? ね、ねえちょっと、あの辺、外国の写真じゃない!?」
「え? あ、うん」
律は雑多に積まれた機材を動かしながらも、花音の質問には律儀に答えてくれる。
「合宿は、毎年海外らしいから」
「なんだって!?」
花音は思わず目をむいた。
ここまで見てきた廊下などの内装は、花音の通う学校ともさほど変わらない簡素なものだった。それ故、金持ち学校という実感がまだわいていなかったのだが、お金をかけているところが違ったらしい。
「でも、色々ノルマがある。写真部のノルマは、展覧会には必ず毎回出品すること。合宿では一日百枚以上撮ること。そして、一人一枚、この壁に星空の写真を貼ること……だったかな」
さすがに無条件というわけではないようだ。しかし、妙なノルマではある。
律が探していたのは脚立だったようで、壁際に持ってくると、その上に乗った。そして、中央に貼られたひときわ大きい写真を壁からはがす。
「わっ、取っちゃっていいの!?」
「ここのはどれも自由に見ていい写真だから。……それに、これ、ずっと前からここに貼ってあるんだけど……」
律が渡してくれた一枚を見る。暗号にあった、北斗七星の中の七番目の星が中心に映っている写真だ。だが、そのアルカイドをじっくり観察してみても、何の変哲も感じられない。
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