大便戦争

和スレ 亜依

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第十九糞

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「なあ、和人」
「何だ、泰平」
「毎日毎日受験勉強でストレス溜まってねぇか?」
「確かに溜まっているが、それがどうした?」
「もうじきクリスマスだろ? このままじゃみんな暗い顔でクリスマスを迎えることになっちまう」
「そうかもしれないな」
「だったら、俺たちの力でその鬱憤晴らしてやろうぜ?」
「なるほど、理解した」


 クリスマス当日。
 鰤便高校三年の教室には、受験勉強のために今日も多くの生徒が登校していた。今はちょうど昼休みで、弁当を食べ終わったくらいの時間である。
「ねぇ、山本さん」
「何?」
「和人見なかった?」
「池谷ならさっき運動場に出て行くの見たけど」
「そうなんだ、ありがとう」
 聡美は山本から情報を得ると、小走りで教室を出ていった。その胸にリボン付きの紙袋を抱えながら。
 グラウンドに出ると、和人の姿を見つけた。
「おーい、和―」
 だが、名前を言い切る前にその声は突然の全校放送にかき消された。
『皆さんこんにちは! 突然ですが、受験勉強頑張ってますかー!』
 その声の主は……。
「佐藤さん……?」
 そう、それはクラスメイトの佐藤の声だった。しかし、その声はいつも控えめの彼女とは思えないようなハイテンションなものだった。
『えー今日はクリスマスです、ウキウキしちゃいますね! あれれ? でも皆さんのお顔が暗いですね? もしかしてこれは勉強疲れ!?』
 本当に本人なのかと言いたいくらいの変わりようである。
『ということで、今日は受験勉強でお疲れの皆さんに元気になってもらおうと思ってイベントを企画してきました。グラウンドにご注目ください!』
 何だ何だと生徒たちが窓際に集まった頃に、再びアナウンスが聞こえてくる。
『クリスマスということで、今からサンタクロースたちによるレースをご覧いただきたいと思います。では、メンバーをご紹介します』
 一呼吸置いてメンバー紹介が始まる。
『一に脱糞、二に脱糞! 鰤高にその名を知らぬ者はいない! ストゥールの異名を持つ脱糞の先駆者…………サンタクローーーーーーーーーース池谷!!』
 紹介により登場した和人は赤いサンタクローススーツを身に纏い、荷運び用の一輪車の荷台に乗っていた。
『サンタクロース池谷のソリを引くのは、ふくよかな体躯で皆を癒やす……トナカイ内山!』
 和人の一輪車を引くのはトナカイに扮した内山だ。土煙を上げながら和人を運ぶ。
『そしてそしてええ、対戦相手は誰なのか!?』
 和人たちの登場とは反して対面からもう一つの一輪車がゆっくりと現れる。
『おおおおっとあれはまさか! いや間違いない! 二年前の花火大会で思い人に告白するも玉砕! お尻から打ち上げ花火をぶちまけることになった悲恋の人間スターマイン! その名は…………サンタクローーーーーーーーーース小川!! ソリを引っ張るのは切れ痔に疣痔……何でもござる! トナカイ中村だ!』
 堂々と秘密をばらされる紹介にどよめきが走る。
『両チームスタートラインに立ちました! その時を今か今かと待つように後ろ足で地面を蹴るトナカイ内山! 実況は元放送委員佐藤がお送り致します! ……さぁ、もう待ちきれません! カウントダウンを始めましょう! ……………………3……2……1……』
 大きな深呼吸の音が聞こえ。
『GO!!』
 今、戦いの火ぶたが切って落とされた。
『まず華麗なスタートダッシュを決めたのは池谷・内山ペアだ! おーっと、どうしたことだ? 小川・中村ペアに勢いがない! 何か言い合っているようですが……?』
「おい、どうした中村!」
「どうしたも何も参加を了承した覚えはないでござる!」
「ふざけるな! これはみんなの幸せがかかってるんだ!」
「こっちは未来がかかっているでござる! 受験勉強をさせて欲しいでござる!」
『どうやら仲間割れを起こしているようです! そうこうしているうちに半周遅れだ! これはこのまま池谷・内山ペアが勝ってしまうのかあああ!? なお、このレースは三週勝負です。……おや? 絶望的と思われた小川・中村ペアのスピードが上がっている!? やっとやる気を出したのか? いや、これは…………尻です! サンタクロース小川がトナカイ中村の尻をムチ叩いています!』
「おらっ、もっと速く走れ!」
「や、やめるでござる! 拙者の肛門が……肛門が破れるでござる……!」
『サンタクロース小川の正確無比なムチがトナカイ中村の肛門を責め立てる! どんどん、どんどんと二チームの距離が縮まって……? ここで追いついたあああ!』
「やるな、泰平」
「ふっ、お前が勝つのが王道だろうが、負けるつもりはないぜ?」
「望むところだ!」
「しかし、内山がそんなに持久力があるとはな」
「この日のためにほうれん草だけを食べさせて絞ってきたからな!」
「なん……だと!?」
『壮絶なデッドヒートが繰り広げられているが、両者一歩も譲らない! 残りはあと一週だ! ……おや? トナカイ内山の様子が……何やらもぞもぞしているぞ? 何だ何だ? あっ、脱糞です! トナカイ内山が緑色のう○こを小川・中村ペアにぶちまけた! 手元の情報では内山はほうれん草ダイエットをしていたという情報が入っています!』
「てめぇ、何しやがる!」
「不可抗力だ、仕方ないだろ?」
「そんなんで許せるか! そっちがその気ならこっちにも考えがある!」
『さぁ、トナカイ内山の脱糞により一触即発の気配! おっと、ここでサンタクロース小川が一際力強くムチを振るったー! トナカイ中村から盛大に痔が吹き出す! 血飛沫が池谷・内山ペアを襲う!』
「やりやがったな!」
「お互い様だろ?」
「許せねぇ……!」
『双方怒りが肛門から迸っている! これは危険だ! デンジャラスだー! レース? そんなの関係ねぇ! う○こと血を掛け合いながらレーンを離れて激しくぶつかり合う! 肉弾戦だあ!』
 二つの一輪車が暴走し、タックルをかまし合う。
『緑のう○こと血がクリスマスカラーを演出している! ……余談ですが、クリスマスカラーの緑は永遠の命を、赤はキリ○トの血を表わしているそうです。キリ○ト教徒の皆さんごめんなさい! しかし、図らずも、う○こになっても青々とした色を失わないほうれん草の命と痛みを伴った痔がその原点を表現しているかのようだ! 美しい! 美しいぞ! サンタクローーーーース&トナカイ!!』

「……もう何なのよ、これ」
 そこには、胸に抱えたクリスマスプレゼントを握りしめ、呆然とグラウンドの惨状を見つめる聡美がいた。
 なお、このイベントを主導した和人と泰平は教師にこっぴどく怒られた。
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