R指定はないけれど、なんでかゲームの攻略対象者になってしまったのだが(しかもBL)

黒崎由希

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世知辛い世の中にサヨナラを6

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「――邪魔するよ」

「はいはい? …ああ、カシューイン侯爵の坊っちゃん!」

「坊っちゃんって呼ぶなって、いっつも言ってるだろーが!」

「分かってますって。 そのムキになる態度がおかしくて、ついねぇ」 

「ったく。 今日はおれの親友が、兄弟の誕生日に贈る品物がほしいって言うんで、連れてきたんだが」

「兄弟の、誕生日?」

 恰幅が良く、髭をたくわえた店主が首を捻るその前で体を横にずらし、金糸と銀糸が絶妙に織り込まれた乳白色のローブを目深に被った小柄なシルエットをその視界へ晒すと、束の間黙りした店主は目を見開き、

「これはこれは…」

 と言って、なぜか得意顔をしているアルデバランへ目を向けた。

「つーことで、金に糸目はつけねぇ買い物がしたい」

「わ、分かった。 どうぞ、こちらへ」


 淡い明かりが灯された店内には、様々な金銀細工が展示されている。

 しかしそれは、一般庶民でも生活にかかる金を切り詰めればどうにか手の届く値段のものばかりで、高価な品物は店の奥にしまっていることをアルデバランも承知していた。


「お前らは、店の中と外で警護しろ」

「はっ」


 城勤めの騎士団からアルデバランが選んだ数人の男たちは命令する声にそう応えると、店を人に任せ、奥へと続く扉を開いた店主に続き、アルデバラン、カノープス、エンケラドゥスの順番で、あまり人を通したことのない小部屋へ足を踏み入れた。


「カノープス王子様」


 人目のある場所ではその名を呼ばぬよう努めていた店主に名前を呼ばれて顔を上げると、店主から隣にいたエンケラドゥスへ視線を向ける。


「…」


 フード、取っていい? と、視線で尋ねたカノープスに向け、軽く頷き応えた仕草で了承を得たカノープスがフードを取ると、どんな金糸より美しく輝いて見える頭髪が溢れ出すように現れ、その輝きを目にした店主は、思わずほうっと称賛のため息をついた。


「なんと、お美しい…」

 鳥の羽ばたきを思わせるほど長い睫毛が瞬くたびに、色を変える青い瞳に見惚れる口からカノープスの美しさを讃える言葉が零れ落ちると、照れくさそうにはにかんだその頬に薔薇色が灯る。

「おっちゃん」

「!」

「褒めてばっかいねぇで、ちゃんと仕事してくれよ」

「い、いやいや、申し訳ない! こんな間近で美しいことで評判の王子様を見たことがなくて…舞い上がっちまったっ」

「そぉーだろ~。タダで見せたんだ、いーもん紹介しなかったら、逆におれが金取るからなッ」

「アディーが言うと、冗談に聞こえないから止めとくれ! え、ええっと…それで、ご所望の品物とはどういったものでしょう?」

「金でできた、細工物のブレスレットを探している」


 しゃきっと背を正し、客人用のソファーへ座るよう促した店主は、勧めたソファーに座ったカノープスから、その背後に立ち発言をしたエンケラドゥスへと視線を転じた。



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