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気がついたら、上司と…1
しおりを挟む「…離婚して、何年になるんですか?」
「ん~?」
――会議で持ち越しとなった資料をまとめるため、初めて斎藤が暮らすマンションを訪れた日の夜。
暗がりに沈む部屋を眺めていた快斗は、靴を脱ぐ斎藤の背中へ視線を落とすと、何気なさを装いながら口を開いた。
「いや、意外に綺麗にされてるな、と思って」
「…そんな風に思われていたことの方が、意外だな」
斎藤の暮らしぶりがだらしないと思っていた口ぶりだ、と快斗の言葉を解釈する声に、快斗は慌てて手を振りながら誤解を正した。
「違います! 自分は課長のようにできてないから、それに比べてしまって…すみません」
意外、だなんて言葉を使ったのがまずかった、と思いつつ内心で汗を掻いていると、喉の奥で笑った斎藤が身を起こし、快斗の目を真っ直ぐに見た。
「君の」
そこで一度言葉を区切った斎藤の手が、快斗の肩に乗る。
「そういう素直な所を、私は信用しているんだ」
良く言えば、嘘がつけない。
悪く言えば、駆け引きができない男、ということになる。
(それって)
何気にオレのことバカにしてないか、と鼻白んでいると、不意に笑みを零した斎藤が口を開いた。
「ああ、さっきの揚げ足をとる訳じゃないが、言葉通りに受け取ってくれないか」
ネガティブに捉える必要はない、という言葉を含む言い回しをした斎藤は快斗の肩を軽く叩くと、先に立ってマンションの奥へと姿を消した。
「…お邪魔します」
(褒められてるのかけなされてるのか、イマイチだよな)
――斎藤は、滅多に部下を褒めない。
しかしそれは相手を冷遇している訳ではない証拠に、他の部署でも斎藤という人物の評価は高く、自慢できる上司であった。
…落ち着いた、大人の雰囲気を醸し出している斎藤は、その美声と相まって、更に魅力的な男として写って見えた。
同じ男のオレでもそう思うんだから、女なら絶対放っておくはずないよな、と思いながら通されたリビングに落ち着くと、早速仕事の続きを進めるため、広めのテーブルの上に資料を広げた。
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