魔王、現代に転生する、そこそこ苦労しながらしっかり適応しています。

第二章 心霊現象について

魔王の日常

ノエルが興奮していたが、水を薦めるとそれを飲み干し、キッと睨みつける。

「貴方の狙いはなんですか、人間世界に溶け込んで何をするつもりですか？、闇の王ロード・オブ・ダークネスサガ・ディオス」

　ノエルが知りたいのは我輩がなぜ普通に生活しているのかということだろう、何か狙いがあるとみなされてもむりもない。

「まあ普通に日常を生活をするつもりだ、なぜここに来ているか理由もまったくわからん、元に戻るにも色々手間はかかろう、ならばしばらくは成り行きに任せてみても良いだろう、それにな、今は楽しいぞ」

「楽しいですか？」

　ノエルが訝しげに首をひねる。
　まあ、無理もない。
　こいつらには我輩の日常生活など知る由もないからな。

　魔王の役割なんてものは面倒なものだ、毎日、妖魔や魔獣、竜族などの自己主張の塊みたいな連中の暴走を規制したり、争いごとをまとめたりと日々関係調整に時間を費やしている。
　大体、魔そのものが自己中心的で攻撃的なものである、それを制御しコントロールするんはどうしても建築的な視点が重要である。
　
　「まあ、それはさておき、ノエルよ、アラニールはどうしている？」
　ぶっ
　我輩がそう言うと、ノエルが珈琲を噴出した。

　やはりこいつはわかりやすい。
「アラニール？、ああ、アラニールね」
　必死にとぼけようとしている。

　しかし、とぼけても無駄だと感じたのか、吹っ切れたように

「私がアラニールのパーティメンバーといつ気づいたの」

「最初からだ、あの名刺の紋章はアラニールの一族のものだし、我輩一度見たものは忘れない、例え外見が変わっても魂は変わらないからな」

　はあ、とノエルは肩を落とした。

　アラニールというのは勇者である。

　無謀にも何度も我輩たちに挑み、何度も追い返されたものである。
　非常に始末が悪く、めんどくさく、うざったい奴である。

「今回の転生はあいつが絡んでいるのか」
　我輩が静かに問う。
　ノエルはぶんぶんぶんと首を横に振る
「まさか、とんでもない、私もいきなりこんな場所に飛ばされて戸惑っているんだから」

　うむ、どうやらかかわりがあるらしい。

　目が泳いでいるし、何より、飛ばされたという表現は普通しない。
　転生は基本生まれ変りだ、それを最初から選択肢から除外されているのはおかしい。

　ただし無理な追求はさけておこう、おいおいわかってくるだろうし、何より今の関係を断ち切るほうがデメリットになる。
　
　我輩の視線に耐えられないのか、ノエルは異常なほどの水を飲み始めている。
　もう十杯目である。

「今は奴や他のメンバーはどうしている？」

「それがわからないの」
　心底困ったようにノエルがため息をつく
　これは本当らしい。
　
「まあ、しばらくは共同戦線というのでどうだ」
　我輩の提案にノエルもしぶしぶだが頷いた。