魔王、現代に転生する、そこそこ苦労しながらしっかり適応しています。

HATABOU

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 幕間 娯楽について

魔王と音楽 娯楽編(夕方)

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「ねっねっ加藤君、今日は楽しみだね」
「ふん、別に…」
「なに怒っているの?、ねえ、ねえ、ノエルさん見て、加藤君コワイ!」
「怒ってないぞ…」
 正直に言えばはじゃぐシモダにすごく感傷的になっている我輩は若干苛立っていた。
「私も怒っているように見えますけどね」
 淡々とノエルも答える。
 ここは人として放っておくところだろう。
 舞殿達と別れ、我輩なぜかシモダとノエルとともにコンサートに向かっていた。
 我輩としては舞殿ともう少し将棋をしたかったが、舞殿も疲れているようなので、無理はせず休んでもらうことになった。

 しかし、約束とはいえ、

 隣ではじゃぐシモダを見る
 髭の男が何を浮かれているかといえば、シモダはノエルに一目ぼれしたらしい。
 それならばさっさと自分のものにすればいいだろうと思ったが、どうやら一人では恥ずかしくて食事にもいけないので、我輩も同席してほしいと頼まれたのだ。

 無論、断った。
 魔王でもカトウでもやる仕事ではない。
 
 しかし、考えて欲しい、髭のおっさんに泣きつかれるあのうっとおしさ、
 我輩結果押しきられてしまった。

 シモダのプランとしてはまずシモダの好きな音楽鑑賞をするらしい。

 音楽鑑賞ね
 我輩、魔王の頃から音楽は好きである。
 特に、壮大なオーケストラやオペラなどはヒトの作ったものとしても認めていた。
 ただ、難点は我輩、当時歌は歌えなかったのだ、
 我輩、声にも力がこもってしまうので、歌うだけで攻撃呪文と化してしまうのだ。
 よく死の歌デス・ボイスといわれたものだ。
 替わりに腹心が良く歌っていたが
 
 んっ?

 だんだん、周囲の人間の性質が変わっていくのを感じた。

 何といえばよいのか、体中に鎖で装飾するもの
 真っ白な化粧をし口中を真っ赤に塗るもの
 尖った金髪にするもの

 どこかの戦闘民族のような格好である。

 「ねえ、シモダさんの好きな音楽って…」
 引きつった顔でノエルが聞く。

「無論、ヘビメタですよ」
 満面な笑顔でシモダが答える。

 「どういう音楽なんだ?」
 「魂の叫びだね、特に今夜のガローズは最高、魔王賛歌って曲がサイコーなの!」
 「おい、シモダ再び口調が変だぞ。しかも魔王賛歌って…」
 いやな予感がしてきた、
 すごくいやな予感がする。

 「おお、我が王!」
 突然、大きな女性の声が響く。

 見ると、真っ白な白髪の長身の女性が我輩に手を振っていた。
「えっガロ?」
 シモダが悲鳴のような声を上げる。
「あの方…」
 ノエルが何者か気づいたらし、が
「ガローズのボーカルよ、ボーカル、えええ加藤の知り合い!!」

 知り合いというか、

 一応部下の獣王ストロング・ビースト ガロである。
 
 「我が王よこの世で会うとは感激です」
 ガロは涙目になりながら我輩の手を握りぶんぶん振る。

 「マジ最高!!、マジ神に感謝です!!」
 お前魔族だろ、
 ノエルが嫌そうな顔で我輩とガロのやり取りをみていた。
 こいつはいつもこういう奴なんだ、無駄に熱くそして大変頭が弱い。
 
 「何かお互い弱くなりましたね、でも大丈夫、私はいつでも我が王のモノです!!」
 周囲の視線が痛い、そこまで大声で喋らなくても
 周囲から、あいつは誰だ、何か付き合っているのか、殺してやろうか、など多少物騒な声までひそひそと聞こえてくる。

「私の歌聴いてください!!」
 ガロの激しいアプローチに我輩何度も頷いた。


 曲が最高潮に達した。
 皆の熱量が伝わる。

 しかし我輩はひどく、寒かった。
 
 ガロはすごくうまく歌っていた。
 切れのあるソプラノ調の高音と荒々しいシャウトを駆使し

 魔王賛歌を

 地獄の業火に生まれし闇の王
 その荘厳なる力はセカイを支配する
 闇を支配し美しき獣の世界を作る
 その名は、サガ
 闇の王ロード・オブ・ダークネス  サガ
 偉大なる、闇の帝王 サガ
 
 「痛々しいですね」ポツリとノエルがつぶやく


 不思議だな、と我輩思う


 次元や立ち位置が違うだけで、どうして音楽というのは聞こえ方が違うのだろう。

 我が世界では賛歌さとしても
 この世界では何となく、

     

 我輩、かなり恥ずかしい

 大変ですね
 ノエルが呟いた。

 我輩、静かに頷いた。
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