冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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11. わたしは生け贄

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「……お嬢様、残念ながらそろそろお時間です。」
「…………分かったわ。いきましょう。」

 ジェフリーはわたしの感情を知ってか知らずか、ここを離れるように促した。

「……お兄さまは?」
「…まだいらっしゃっていないようです。」
「……そう。」

 ジェフリーが言うのならば間違いないだろう。
 ……ここにいる人は、お兄さまを含めて2年前にあったお母さまのお葬式に参列していなかった人たちだった。

「……参列者が随分と変わっていますね。」
「………そうね。……お母さまの時はお母さまの親族が主だったからではないかしら。」
「ーー、……そう、ですか。」

 わたしとジェフリーは1度見たりすれ違ったりした人間をも忘れない。
 わたしが入場した時から感じていた違和感にはジェフリーも思いがあったのだろう。

 ここに、お父さまのお葬式に集まっている人間が、初見の人間しかいないということに。

 “生け贄”

 これがまず初めにこの現状に対してわたしの頭に思い浮かび、もっとも適切だと判断した言葉だ。
 ここにいるほとんど全ての人間がわたしたちに、否、わたしに敵意にも似た感情を抱いており、それを誰も隠そうともしていない。そしてなにより、お兄さまがこの場にいないということだ。
 ……ここにいる人間は、おそらく全員が反マイグレックヒェンもしくは、それに近い中立の派閥の人間なのだろう。
 そして、これらの現状から判別できることは、お兄さまとマイグレックヒェンに従っている派閥の人間は、わたしを生け贄にしたということだけだ。

 ……プラス思考にすると、こうも考えられる。生け贄として生き残るか否かによって、わたしの利用価値について、ということだ。

 プラスでは無いって?

 初めから捨てることしか選択肢にないのではなく、ここでの働きによって生き残れるという時点でわたしにはプラスのように写っているわ。

 でも、わたしはここで本性を出すわけにはいかない。
 利用しようとする人間たちに、愚かで素直で利用しやすい人間のように映らなければならない。
 キレすぎてはいけない。
 利用しにくいと思われてはいけない。
 利用できる、利用すべきだ、でも、最後まで捨てては勿体ないと思われる、ほんの少しだけ賢い駒で在らなくてはいけない。

「……ジェフ、必ず生き残ろうね。」
「…あぁ……。」

 わたしたちは、決意を新たに敵を見据えた。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

昨日1話閑話を入れました。
よければ9,5話に戻って読んでみてください。

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