冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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43. わたしの試験結果

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「ーーー、姫は十分にであらせられていると思いますよ。」
「……それはどういう定義においてなのかしら。」

 ピリッとした空気が流れ、わたしと侯爵の視線がばちばちと火花を散らす。

「……ふっ、やはり貴方様はマイグレックヒェンという名の檻に囚われたですね。」
「………あなたはわたしが世間知らずだと、そう言いたいのかしら。」

 マイグレックヒェンという名の檻……。

 目を細めて彼の言った言葉を丁寧に咀嚼する。
 彼はわたしを公爵令嬢であり、檻に囚われた姫君だと、そう評した。
 否、檻に囚われた姫君であり、公爵令嬢でもある、と評したと考える方が正解なのかもしれない。

 マイグレックヒェンの中しか知らない世間知らずのお姫さまで、けれども、その実そのお姫さまは公爵令嬢であると言いたいのかしら……?
 そして、公爵令嬢を強めの口調で言ったことから、マイグレックヒェンの中から知り得る知識だけを持っている、世間知らずの頭の中が空っぽな公爵令嬢だと、そう言いたいのかしら。

 ………。

 多分これでは彼らの求めるわたしには到達していないのだろう。
 何かが決定的に足りていない。
 本能がそう言っている。

「……姫はどうお考えなのですかな?」
「……世間知らずなのは認めるわ。だってわたしはここから出してもらったことがないもの。わたしの知識源である書類だけで知れることには限りがあるし、人の主観が混ざってしまっていることもある。どこかで情報が捻じ曲げられている可能性も存在する。
 ………そうね、たしかにわたしは世間知らずよ。けれど、わたしはこうも考えるわ。世間についてはこれから知っていくこともできると。」
「!!……姫は坊っちゃまと似ているようで、存外考え方が異なってポジティブでいらっしゃる。」

 わたしの真っ直ぐな視線といたずらっぽい笑みに驚いた侯爵は、優しい微笑みを浮かべた。

「くすっ、……わたしは侯爵のお眼鏡に叶ったかしら?」
「えぇ、はい、合格です。」
「……どーも。」

 わたしに足りなかったのは人に自分のことを、自分の悩みなどを話そうとすること。試験内容が緩かったのは彼が試験官の中でも、わたしを心配していた側の人間だからなのだろう。
 このおじさまはわたしにとって使い勝手の良いおじさまかもしれない。

「……それにね、わたしお外に出る道、1つ見つけているの。今まではフレイアさまとお会いするのに、いつも彼女にこちらに訪れてもらっていたけれど、これからはわたしがフレイアさまのお屋敷に訪れたらいいのだもの。そうしたらお外に出る機会ができるでしょう?」

 同意を求めるように微笑みかけると、侯爵は眩しそうに目を細めた。

「そうですね。
 姫、もっと広い世界を知って自分の手で自由を手に入れてください。姫ならば絶対にできます。」
「……ありがとう。」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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