冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

68 早る気持ち

「ほら、早く起き上がって。フレイア様が来ちゃうよ。」
「！！　お洋服に皺がついちゃうわ。」
「もうついてるよ………。」

　ジェフはわたしに苦笑して服を整えてくれた。わたしが振り向くと、髪がふんわりと舞った。長い髪は時として邪魔だ。重たいし、まとめると凶器にもなり得る。
　そう、今のように。

「ぶべっ、」
「あ、………ごめんなさい。」

　髪に殴られてたジェフは、鼻をさすさすとしていた。

「地味に痛いんだけど。」
「……だからごめんって。」

　無駄にキラキラした髪を撫で付けながら、文句をブーブーと言いつけているジェフに、わたしは苦笑した。ツインテールは大きなリボンがひらひらと揺れるのは可愛いけれど、こういう時には不便だ。

「あ、………これって自己防衛になる？」
「うん、ならないから馬鹿な考えは捨てようか。」
「むぅ、ひどい。」

　馬鹿な考えなことはわかっているけれど、楽しそうだから言ってみたのに総攻撃を喰らってしまった。
　酷い。この従者はいつも真っ直ぐで辛辣だ。

「…………ねぇ、ジェフは逃げてね。わたしに何かあったらジェフだけでも逃げてね。」
「最悪の事態はもう起こらないと思うって返しとくね。」

　ジェフは悲しそうに微笑んだ。今日の態度から見ていても、嫌われていることは明白だっただろうに。本当に、お馬鹿なのか賢いのか分からない子だ。

「レティー、僕は逃げないよ。何があっても、」
「そ、」

　呆れ返ったわたしは、フレイアさまとの待ち合わせ場所に早く着くべく、ジェフに目配せした。フレイアさまとはできるだけ長く一緒にいたいのだ。母親代わり出る彼の方は、わたしの甘えの対象だ。たまにしか会えないのなら、会える時にたっぷり甘える。

「レティー、顔が残念なことになてるよ。」
「！？　………お客さまやお兄さまの監視の目もあるかもしれないし、しっかりしないといけないわね。」
「そうだね………。」

　彼が何故かとても遠い目をして、この鈍感主人どうにかならないかな、と呟いていたが聞かなかったことにしよう。主人を鈍感だなんて不敬だもの。ま、なんて言ったって今日はフレイアさまが訪れてくれるのだし。

「レティーはフレイア様が大好きだね。」
「えぇ、もちろんよ。」

　部屋を出たわたしは、一直線にガーデンへと出た。
　鈴蘭ばかりの庭園は真っ白だけれど、とても美しいわ。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

読んでいただきありがとうございます😊😊😊



『あの、……どなたでしょうか？』

という作品が本編完結いたしました。短編ですので、もしよろしければ読んでやってください(๑>◡<๑)
紹介文としましては、

「キャサリン・ルーラー
　爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」

見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………

「あの、……どなたのことでしょうか？」

まさかの意味不明発言！！

今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ！！

結末やいかに！！

です。
よろしくお願いいたします(*≧∀≦*)


あと、23日から新作を始めます♪

題名は

『本好き元地味令嬢～婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました～』

です。
紹介文は

　シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
　だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
　本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎

～これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である～

です！
よろしくお願いします！！