冷酷無慈悲なお兄さまに認められたい

桐生桜月姫

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82 わたしはメイド長と話す

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「いらっしゃいませ、レティシアお嬢様。どんなご用件で?」

 深く頭を下げて挨拶をしたメイド長は、人好きのする暖かな笑顔をわたしに向けた。心を和ませると評判の笑みだが、わたしにとっては表情を読み取るのを妨げる邪魔な仮面だ。ジェフリーも前に同じことをいっていたきがする。
 ストンとカウチに腰掛け、メイド長に微笑みを向けると、わたしは2本の指を立ててゆらゆら揺らした。

「ご機嫌よう、メイド長。………要件は2つあるわ。端的に言うと、フレイアさま関連と、新しいメイド関連。どっちから聞きたい?」
「フィリアザフィロ公爵閣下の要件からお願いいたします。」

 一瞬悩む仕草を見せたが、やっぱりちょっとだけ迷子気質なフレイアさまの方が気になったメイド長は、聞きたい方を優先させた。

「う~ん、………多分だけれど、フレイアさまはまた迷子よ。目を離した隙にいなくなっちゃった。」
「………………メイドを10人ほど投入して探させます。行き先はお嬢様のお部屋で構いませんか?」
「えぇ、お願い。」

 テキパキと手慣れた様子で進めていく彼女は、実際にフレイアさまの迷子騒動に慣れてしまっている。毎度毎度同じお屋敷の中で見事に遭難をするのは、実にすごい才能だと、わたしはフレイアさまが迷子になってしまう度に心の底から感心している。

「………新しいメイドの件は、お皿を割っちゃったってこと。」
「はい?」
「………お母さまがご結婚の際に生家から持ち込んだ、あのすみれのやつ。ほら、絶対に割らない伝説の。」
「はあああああ!?だ、だだだ、誰が割ったのですっ!!」
「知らない。それに、知ってても秘密。わたし、あの子のこと気に入っちゃったから。」

 メイド長はこの世の終わりのような絶望的な表情をしている。わたしが気に入ったと言うのは、死刑宣告と同意義後なのだろうか。決してそのようなことはないはずなのだが………。
 でも、いつも冷静なメイド長を困らせるのは少しだけ楽しそう。

「………ジェフリー、彼女のお名前は?」
「クララだよ。クラリーさんの妹さん。」
「あぁ、………彼女、使える?」
「レティシアお嬢様が望むのだったら、使えるようにしてみせるよ。」
「じゃあ、お願い。」

 姉妹揃ってジェフリーの鬼畜授業とは大変そうだ。ま、それに追い込んだわたしが言うのもなんだけれど。

「………ということだから、メイド長、すみれのお花のお皿、全部粉々に砕いて捨てといて。あのお皿、前からとっても目障りだったの。」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

新作です。
題は、

『小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ』

です。
紹介文は、

 久遠心菜は惰性的に学校生活を送っていた。
 けれど、中学3年生の秋、初恋を自覚して学校生活に晴天が訪れる。
 初恋の男の子は不器用だけれど優しい子で、面倒くさがりでコミュニケーションが苦手な心菜には憧れの存在だった。3年生の終わりが近づき、好きな男の子と高校が絶対に分かれてしまう心菜は、初恋の男の子、立花颯に卒業式で告白することを決意する。
 けれど、颯は卒業式を目前に唐突に引っ越してしまうことに。
 迷いに迷いながらも、幼馴染の高梨優奈に背中を押された心菜の告白は颯に届くのか………!?

です。
是非是非読んで見てください。
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