強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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4th フェーズ 奪

No.96 次に向かうべき場所と障壁

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 シドー達はプライスとアンジェラの家に戻っていた。

「イヴさん……」
「先生も言ってただろ、すぐにまた会えるって」
 俯くジーナを励ますシドー。

「これも計画のうちだってな、ご丁寧に身体まで消滅させて。まったく感心しねぇ考え方だ」
 キビが眉間にしわを寄せる。


「これ水晶で出来てるんだ、電気を流して情報をって言って話だけど。とりあえずやってみるね」

 アンジェラも浮かない顔をしているが、何かをせねばとシドーが受け取った透明の板を預かる。

 手のひらよりも小さい水晶板に電気を流す。

「あれ?こんな装置あった?」
「ああ、この前のゲーム内で見つけたデータの中にこれの設計図が入っててね。昨日皆が施設にいる間に作ったんだ」
 見慣れない装置を見たシャーロットにそう答えるアンジェラ。


「やぁ、これをみれているという事は上手く行ったみたいだね。まあ私の肉体はダメだったけど。でもそれはそんな大きな事じゃない、と言ってもあまり受け入れられないだろうけど。実際に私の身体もかなり限界だったからね」

 装置に接続されたモニターにイヴの顔が映る。施設であったイヴだ。

「身体が限界?年齢的には60代ほど、そこまで言う程ではないと思いますが」

「その通り、私はまだ60代の素敵なマダムだったんだがね。身体が限界っていうのはね、ソウルパッチが原因なんだ」

 映像のイヴがウルルの言葉に反応し、これに驚くシャーロット。

「対話できるの!じゃあこれがバックアップ?」

「あーこれは違うよ、ただ情報を記録させて適宜引き出すためのもの。私と対話できている風に人工知能で処理させているのさ。こっちのほうがわかり易いでしょ?さて、話を戻しますか」

 イヴはそう言っては1枚のあて布のような物を取り出す。青白く淡い光を放っている、ソウルパッチだ。

「このソウルパッチは素晴らしい発明だ、魂を別の肉体、いや別にそれは機械の身体であっても良い、移すせる技術だ。でもそれには欠点がある」

「ソウルパッチの欠点?」
 シドーが首を傾げる。

「これはシドーにも関係あるね。その欠点は私が解凍されてから知ったんだけど。ソウルパッチを使用して肉体に入った際、その肉体に入っていられるのは数年程度が限界なんだ。肉体の個体差はあれど長くて10年、短いと3年程度で身体を変えないといけないんだ」

「私は遠隔でアンドロイドを操作したり色々するのにこのソウルパッチを使った。当時のものより色々と改良しているんだが、それでもこの欠点だけは克服できなくてね。恐らくはこれが自然の法というものなんだろうね」

 やれやれと首をふるイヴ。

「だからダイキ、今はユキチカだね、彼は機械の身体を使うのが都合が良いのさ。では数十年も前に彼の身体を使っているヴァ―リはどうだろうか?」

「その欠点を知ってる。でも待てよ、アイツはユキチカの身体に入ってたぞ」
 イヴはキビの発言に頷く。

「ソウルパッチにはもう一つ欠点があってね、それが同じ肉体に入るにはかなりの間を空けないといけないんだ。だから彼はユキチカの身体を乗っ取ったものの、計画が想定どおりにならず一度の定着期間を終えてしまった。以来彼は幾つかの身体を転々としていた、そして今またユキチカの肉体にソウルパッチを使用した」

 肉体か、それとも機械かヴァーリは幾度とその身体を取り替え生きながらえていた。そこまでして生きてきた彼が再びユキチカの身体に取り憑いていたのだ。

「という事はだ……彼の計画は最終段階に入ったという事だ。奴にとって私やユキチカは最後の障壁だからね、あの身体に入れば色々と私達に手を打てると考えているんだろう」

 イヴは一通りの説明を終える。

「さて、ここまで話をしたのは君たちにもう時間が迫っていることを知らせる為だ。ヴァ―リの計画は大詰め、もし計画が成就してしまえば人類は終わりだ。自然に淘汰されるなら文句はない。でも奴は憎悪で動いている。悪意を持った者一人の勝手でどうこうなるのは納得できない。だから君たちにお願いしたい、ユキチカと共にヴァ―リを止めるのを手伝ってほしい」

 皆は黙って頷いた。

「本当に、彼は素敵な人達に出会えたようだ」
 イヴはその様子をみて微笑む。

 これも人工知能がそれっぽく演出しているだけなのだろうか、それとも彼女自身の反応なのか。


「それで先生、まずは何をすれば良い」
 シドーが画面のイヴに尋ねる。

「まずは情報だ。最も重要なグレイボットの研究所の場所なんだが、すまない私でもその情報は見つけられなかった。だが目星はついている、ウルティメイトが隠している情報の中に土地の売買に関する物があったんだ」

 イヴはその資料を見せた。

「どうやら島らしくてね。ウルティメイトは島を買うこともあるにはあるが、どれもしっかり記録に乗ってある。だけどある島を購入した履歴を消した、ご丁寧にその分の金の動きすらも消していた」

「後学の為に聞きたいんだが、どうやって分かったんだ?」
 キビが質問する。

「ベテラン刑事さんに教えるなんて、釈迦に説法だね。購入の痕跡は消せてもそこに研究所を置くなら運営するためには莫大な維持費がかかる。流石にそれら全ては消しきれないからね。自社で開発した発電機のネジ一本の発注まで掘り下げたりしてればボロは出てくるもんさ」

「なるほど参考になるよ。その執念」
「それほどでも」

 イヴはニコッと笑う。


「私もそちらに合流できるように努めているけど、少し時間がかかるだろう。それまでに皆にはまずこの場所を調べておいて欲しいんだ」

「ダイキはどうなるんだ、先生!」
 シドーが聞くと落ち着いたままイヴは答える。

「そうだね彼の話もしておかないとね。彼は大丈夫だ、私にも頼れる仲間が他にもいてね、そっちに頼んである。彼はちゃんと君たちに合流するはずだ」

「仲間?一体誰の事だ」
 キビが尋ねるが映像にノイズが走る。

「おやもうこの媒体の使用限界みたいだ。あんな場所じゃ水晶板もろくに作れないか。あ!ゲームから取り出した情報、あれにまだ使えそうなものがあると思うから良かったら見てみてね。では、健闘を祈っているよ」



 やることが決まった一行はひとまず休息を取ることにした。今朝からずっと動き続け緊張の連続だった、皆はもう疲労困憊だ。

 シャーロットがソファに座り込みテレビをつける。どっと疲れが出てきて睡魔がやってきた。

 しかしその睡魔はすぐさま退散することになる。

「みんなこれみて!」
 目を見開いたシャーロットが皆を呼ぶ。
 皆がテレビの前に集まる。

「臨時ニュースです、本日正午過ぎに介護施設を強盗集団が襲撃しました。こちらが現在逃亡中の犯人です」

 映し出されたのはユキチカ、キビ、ジーナ、シャーロット、そしてウルルの顔だった。

「介護施設の警備員複数名を負傷させ、また施設の破壊などを行ったもようです。銃を所持していたという情報も入っています、みかけたらくれぐれも近づかずに通報をしてください」
 
 介護施設内で警備員を相手取っている所やシドーが銃を奪った所が都合の良いように切り抜かれ放送されている。まるでシドーが銃を持ち警備員を脅しているようにみえる。

「政府はこの4名に加えアンドロイドを国際指名手配し、捜査を進めています」

「これはまた手の込んだ事をしてくれるな」
 一瞬にして世界的なお尋ね者となってしまったシドーたちであった。

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