強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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5th フェーズ 決

No.107 役目

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 コンクリートの壁に覆われた部屋。トレーニング用の機材が置かれ、その隣には射撃訓練場が隣接している。

 そこにガンマはいた、彼はトレーニングに勤しんでいた。

「ガンマ、調子はどうだ」
「は!現時点で問題点はありません!サー!」
 ガンマはトレーニングを中断し敬礼し答える。

 彼の返事が響く中、冷たい空気が彼らの会話を包み込んでいた。

「はあ、分かった。構うな続けろ」
 ため息をつくバベッジ。彼はこの隊長とその部下ごっこに辟易しているようだ。

「フッフッフッ」
 ガンマは逆立ちの姿勢になり腕立てを始める。

「なぜそんなに鍛える?どのみちお前は身体を機械に変えるんだぞ?その手術に耐える肉体を作るという意味ならまだ理解できる、だが君はやり過ぎだ」

「敵を殺す為であります!一人でも多くの敵をこの世から消す為に!」
 その返答には使命感に満ちていた。

「まだ君には司令が降りていない。ならばオーバーワークは避け、体力回復に努めるべきでは?それこそ兵法書を読むとか色々と出来ることがあるだろう」

「は!それは命令でありますか?」
「違う、研究者故の好奇心から来る質問だ」

「は!自分は弾丸であります!弾丸はあれこれと考えるのではなく、銃が狙う標的を瞬時に撃ち抜くのが役目であります!」

 ガンマはただ役目に忠実であることを強調した。

「役目……数十年前にはそういう考えが流行ってたのか?」
「は!自分は敵兵を死ぬ最後の一瞬まで殺し続けるのが役目であります!」

 バベッジの問いに対して、ガンマは冷徹な覚悟を示して答える。

「その敵とは誰だ?」
「は!隊長殿が殺せと言った者は全て敵であります!」

(まるでアンドロイドだな。確かにあのヴァーリが気に入るわけだ。私にとっても好都合だ)

「隊長命令だ、これから貴様にはスキンタイプの強化外骨格を装着させる」

「イェッサー!」
「こいつは装着するのにその部分の皮膚を剥ぐ必要がある、問題はないな」

 すぐに直立の姿勢になり、敬礼するガンマ。

「は!問題ありません!サー!」 
「ついてこい」

 コンクリートの部屋を出てバベッジの研究室に向う。

「この手術が終われば、ガンマ、お前の身体能力は飛躍的に上昇する。お前は完全なる人形兵器へとまた一歩近づくわけだ」
  
「は!光栄至極であります!」
 そう言って手術台の上で横になるガンマ。

「ではこれより手術を開始する、麻酔投与開始」
 

 同時刻、バベッジたちがいる施設に一台の車が現れる。
 車から降りて来たのはリリィだった。

「リリィさん!」
 ヒメヅカは彼女に駆け寄る。

「お久しぶり、長らく迷惑をかけたね」
「そんな大した事ないですよ、さぁこちらに」
 リリィの手を取り、ヒメヅカは彼女を案内する。

「私にもお呼びがかかるなんてね、てっきりはぶかれ者にされているかと思ったよ」
「呼ばれない方が良い事もあるんですよ、特に今回に限っては。美味しい食事をみんなで食べようっていう会ではありませんから」

 彼女らは部屋に入る、そこには中の様子が見えないようにされた大きなカプセルが置かれていた。

「オニツノくんは……こうなってしまったか」
「まだ目覚めてはいませんが、神経を外骨格に接続しています。戦闘力は飛躍的に向上したでしょうが、もう外骨格を外す事はできませんね」

 リリィに説明するヒメヅカ。

「……そのイヴ様の件ですが」
「ああ、あのお方が死んだ事は知ってるよ」
 自分の顔、それは若かりし頃のイヴそっくりに整形した顔、その顔に手を当ててそう話すリリィ。

「もうこの顔も必要ないのかな」
「リリィさん、私は最後まであなたのおそばにいます」
 ヒメヅカはリリィの手を握る。

「そうだね、もう終わりは近い。ヴァ―リがこのまま世界を壊すのか、それとも何か奇跡が起きてそれが阻止されるのか。最終局面で私達の役目はなんだろうね」




 インファマス刑務所の射撃訓練場でシャーロットはチザキと戦闘訓練をしていた。

 その様子を外からキリサメが観ていた。

「よ、キリサメさんだっけ?」
「ブルズアイ……」
 ヘルメットのスイッチを押して合成音声を流すキリサメ。

「そのヘルメット越しでないと話してくれないの?信用されてないね、まあ妥当だけど」
 頭をかくブルズアイ。

「君はジーナちゃんやキビさんとやりあった事あるんでしょ?やっぱりそっちにいるのは気まずいからこっちに来たの?」

 キリサメは首を横に降る。

「じゃあなんで?視察?」

「やることない」
「あー、暇なんだ」
 頷くブルズアイ。彼女もやることがなく手持ち無沙汰になっていた。

「指令がない」
「今までずっと指令に従い続けたんだね、そんなにひっきりなしに仕事きてたの?」

「毎日任務」
 頷いてキリサメ。

「来すぎでしょ、お勤めしてる会社員でも確か週5ぐらいでしょ?ウルティメイトも無茶させるね」

「ブルズアイは?」
 
「私は楽なもんよ、週3,4ぐらい。最近は身内からの依頼が多いね。今も依頼遂行中だし」

 ブルズアイは斜め上を見て話す。

「……」
 キリサメはヘルメットを外した。

「あら、ヘルメット取ってくれるんだ」
「仕事中、殺し屋、ターゲットと任務の障害以外殺さない。一流ならなおさら」
「へぇ、一流って評価してくれるの?というか顔近くない?」

 顔がひっつきそうな程近づけて話すキリサメに少し驚くブルズアイ。

「初めて殺しで使った道具なに?」
 引き続き近距離で話すキリサメ。

「うーん、普通に銃だったかな」
「キリサメはスプーンとかフォーク」
「……なにそれ?食卓の場で殺しでもした?」
 キリサメの返答を聞き、一瞬眉間に皺を寄せるブルズアイ。

「最初の殺しの理由は?」
 ブルズアイは次の質問を聞きニヤリと笑う。

「大切なものを失ったから八つ当たりでね」
「キリサメも」
 そんな話をしているとシャーロットが訓練の休憩に出て来た。

「あれ、キリサメさんだ。2人で何話してるの?」

「同業者トーク、入る?」
 ブルズアイがそう言うとシャーロットは首を振る。

「混ざる為の話題ストックが無いからいいや」
 

「みんなー!装備出来たよー」
 ユキチカが刑務所内の放送で皆を呼ぶ。

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