強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす

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5th フェーズ 決

No.127 鍛錬

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 戦いが始まる前、まだジーナ達がインファマス刑務所で戦いに向けて準備をしていた時の話。

 Ms.ストレングスは一人で鍛錬しているジーナを見つけた。

「へぇーそれが部位鍛錬かい」
「そうです。いつもよりちょっとハードなのを」
 ジーナは鉄の塊に突きや蹴りを打ち込んでいた。

「あんたの手、傷が結構あるよね、その鍛錬でできたものだったんだね」
「小さい頃からやってるんで、古傷とかも……」
 打ち込みながら答えるジーナ。

「まあ、それも良いがちゃんと休みなよ」
「はい」
 
 鍛錬の様子を座って眺めているMs.ストレングス。

「……何か不安なことでもあるのかい?」
 彼女が問いかけるとジーナは頷く。

「その……黒鉄だけではきっとあの人は倒せないって思って」
「オニツノ・モチか。確かにアイツは強いね」
 Ms.ストレングスはそう言った。

「会った事あるんですか?」

「一度だけね。ここに来たのさ、アイツ」
 これを聞き、思わず手を止めて振り返るジーナ。

「え?来たって、収監されるとかじゃなく?」
「そうだ、ここに収監されたら釈放は無いからね。奴は乗り込んできたんだよ、所長と喧嘩するためにね」
 首をかしげるジーナ。

「ぽい動機……いやでもどうやって……」
 そう聞かれてMs.ストレングスは小さく笑う。

「ここに来る船にしがみついてさ」

「いやいやいや、そんな!……あ、でもやりそう」
「流石に驚いたよ、正に狂気だね」


「ずぶ濡れのスーツを脱ぎ捨てて、喧嘩しようって所長に言ってね。アイツも分かったと言ってその場で喧嘩を始めたんだ」
「うわあ……」
 話に引いてしまうジーナ。

「結果は所長の勝ち。拮抗してたとは言えない展開だったね。アイツはボロボロ、でも大の字で倒れたまま笑ってたよ」

「その後は?」
 ジーナにそう聞かれて、また笑うMs.ストレングス。

「所長が船に乗せて帰らせようとしたら、"勝手に来たんや勝手に帰るわ"って、そのままスーツを持って海に飛び込んだ」

「泳いで帰ったんだ……あの海を……うわぁ」
「あの身体能力は認めざるを得ないね」
 ジーナはこのエピソードを聞いてオニツノの異常さを改めて認識した。

「とんでもない人に気にられたなぁ」
「何いってんだい、ジーナは師範なんだろ?」
 そうMs.ストレングスに言われてため息をつくジーナ。

「私、一応師範なんですけど、まだ一つだけ出来ない技があるんですよね」
 ジーナはそう言って再び部位鍛錬に戻る。

「え?そうなのかい?」
「おばあちゃんは、時間がかかるからまだ出来なくて良いよーって、師範になるのに良いのかって話ですよね」

 鍛錬をしながらジーナは笑う。

「その技を出来るようにしておかないと。きっとあの人には勝てない」
 ジーナは自分の手を見てそう言った。


 ヴァ―リが仕向けたアンドロイド兵達に襲撃を受けている明王学園。

「みんなぁ~」
 そんな殺伐とした場所に似つかわしくない人物が現れた。

「ジーナさんのおばあさま!?なんでここに?」
 エンドウが驚く。それはジーナのおばあちゃんだった。

 そんな彼女の背後にアンドロイド兵が迫っていた。

「おばあさま!危ない!」
 呆気に取られていたエンドウは頭を振り、おばあちゃんの後ろに指を差し警告する。

 ジーナのおばあちゃんに襲い掛かるアンドロイド兵。

「あらまあ」
 彼女はその攻撃を難なくかわし、裏拳を食らわせた。

 まるで金属同士がぶつかったような音がした。 
 
「ちょ、ちょっと!あんな金属の塊を素手で殴るなんて!」
 エンドウは彼女に駆け寄る。

 おばあちゃんの手が無事かを確認する。

 彼女の手はよくみると自分のものとは全く違う、指は太く、手の甲は膨らんでいるように見えるが非常に硬かった。

(なんだ?この手……まるで総合格闘技に使うグローブをつけてるような。掌は柔らかいのに手の甲は硬い。これが姐さんの言ってた部位鍛錬か)

「ほっほっほ、おばあちゃんの手は大丈夫よ」
 おばあちゃんはそう言って笑う。

(鍛錬で人の手はこう変わるものなのか?)
 エンドウが驚いているとおばあちゃんは何かを彼女に渡す。

「はいこれ、みんな動いてお腹へってるかと思ってね、おばあちゃんお弁当作ってきたの」
 それはおにぎりが沢山入ったお弁当だった。

「え……あ、ありがとうございます。美味しく頂かせてもらいます」

「みんなはそれ食べて元気つけて、おばあちゃんがその間にあの子たちの相手をしてるから」
 おばあちゃんはエンドウにお弁当が入った大きな袋を渡し、アンドロイド兵達の方に向かって歩き始める。

「相手って……」

「さてさて、うちの可愛いジーナちゃんにちょっかいを出す悪い子はきっちりお灸をすえないとね」
 おばあちゃんは瞬く間にアンドロイド兵達を破壊していく。

 その姿にブルジョ達も驚いていた。

「な、なんだあのご老人!小さい体で次々と倒していくぞ!」
「完成されている、動きに一切の無駄がない」
 ヴィクトリアも彼女の戦いぶりに関心していた。

「ふふん、鍛えてる年季が違うのよ」
 生き生きとした様子でそういうおばあちゃんであった。



「せっかく部位鍛錬したのに!あのアホ!手に鉄板埋めおって!腹にも埋まっとる!」
 殴り合いしながら文句を言うオニツノ。

「通りでいい音するわけだね」
「せやけど脚はそのまんまや!」
 オニツノの蹴りを防ぐジーナ。

 骨に響く蹴り、もしジーナ以外の人間がこれを受けていたら腕が折れていただろう。

「ずいぶんと急ピッチだったんだね」
「まあの、基本的にはあの小綺麗なお洋服を着るための改造や」
 彼女が外した強化外骨格たちがそこら辺に転がっていた。

「そんな事よりもや、鉄板入ってるワシの手と普通に殴り合えてるジーナちゃんの手足、どうなっとるんや」
「年季が違いますから」
 闘いながらそう答えるジーナ。

「せやな!さあどんどん行くで!」
 オニツノは彼女に急接近する。

(でもこのままじゃ決着はつかない、隙を作らないと)
 ジーナは近づくオニツノの膝を蹴った。

(まずは膝!)
「おっ?!」
 動きがとまるオニツノ。

 その瞬間にジーナは距離を詰める。

(一気にいく!)

 距離を詰めた勢いで相手の顎に肘を打ち込むジーナ。更にそこから顎を拳で打ち上げる。そして最後に相手の頭を掴み押さえ、下から膝で蹴り上げた。

「ぐおわ!効く……わ!」
 頭部への連続ダメージにより、視界が大きく歪むオニツノ。

「ーーーッ!」
 オニツノがふらついた隙に彼女は全身の力を抜く。
 力を抜き、地面に倒れ込みそうになるジーナ。
 
 次の瞬間、ジーナは脱力から一気に力を解放し全神経を指先に集中させる。

黒羽鉄!クロハガネ
 まるで弾丸のように放たれた彼女の手がオニツノの腹部を捉えた。

 血が周囲に飛び散る。

「まさか、鉄板ぶち抜くなんてな」
 オニツノの腹部から血が溢れ出す。
 彼女は膝をつくが、立ち上がる。

「ちょっと……お腹に大けが負ったんだから倒れてなよ」
「何言うとんねん、こんなオモロイ必殺技が出て来たんや。まだ何か隠してるんちゃうんか?」
 まだまだ闘争心は一切揺らがない様子のオニツノ。


「タフ過ぎだって……ん?」
 
 そんな話をしているとアンドロイド兵達が現れる。

「あ?なんやお前ら?ブリキ人形がなんの用……」
 オニツノが話し終える前にアンドロイドは銃をジーナに向けて構え、発砲した。

「……っと!」
「お、オニツノッ!」

 ジーナの前に立ち、盾となったオニツノ。改造されたとはいえ、彼女の身体はチャールズたちのように完全な機械ではない、殆ど生身のまま、撃たれれば血が出る。

 「人の喧嘩に水差すようなことしおって!」
 オニツノは血を流しながらもアンドロイド兵を破壊する。

「オニツノ!」

「ジーナちゃん、悪いがこの喧嘩は一旦お開きや。また今度決着つけようや」
「え?いや、それよりも撃たれたところ!」

「大丈夫や、それよりも早うここから離れた方がええ」
 遠くから大勢のアンドロイド兵達が押し寄せてきていた。

「アホ共のボスをしばくの、譲ったるわ」
「……」
 ジーナが俯く、するとオニツノが彼女の頭に手を置く。

「何を心配しとんねん。ワシのタフさ知っとるやろ。絶対に生きてまた会いに行く、その時はまた喧嘩しようや、な!」

「……分かった、絶対だよ」
「おう、這ってでも行くわ」
 ジーナは立ち上がる。

「ありがとう」
 そう礼を告げ、ジーナは走り出す。

「ジーナちゃんほど楽しめるとは思えんが、まあええやろ。相手したるわ!」

 押し寄せるアンドロイド兵達に向かって走り出すオニツノ。

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