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怪異25『馬車の下』
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いまだオブキュロス村に滞在している中、季節外れの吹雪によって、僕は村に足止めされていた。
いつの間にか円卓亭では、僕は食事をおごってくれる人ということで、ちょっとした有名人となっていた。
そして、その日も一人の冒険者が僕に話しかけてきた。
「飯をおごってくれるって本当?」
「えぇ……ちょっとした話をしてもらえれば……」
「怖い話……だっけ?」
「そうです」
話しかけてきたのは、冒険者のダニエラ。
このオブキュロス村を根城に活動している変わり者だ。
「まったく、この吹雪じゃ商売あがったりだからねぇ……あんたに言えばうまい飯が食えるって聞いたからさ」
「どうぞ、好きなモノを頼んでください」
ダニエラは、ロック鳥の手羽先のローストを頼むと、静かに語りだした。
-----
この村に生まれて、ずっとこの村を出ていくことを夢見ていたわ。
冒険者になったのだって、この村を出ていくためだったもの。
だから、ギルドに登録されたその日に、ドレスデネに向かう馬車に乗るはずだったのよ……。
ここは関所のある街だから、各地へ向けての商人キャラバンが馬車が集まる場所だから、行き先は選び放題だったわ。
とにかく一刻も早く、こんな何にもない街を出たい一心で、ドレスデネ行の商人に声をかけたて、いくばくかのお金を払って乗せてもらうことになったのよ。
でも、出発の時……変なことが起こったの。
「もう出発だ! さぁ、乗ったのった!」
商人から声がかかった時だったわ。
背後から聞いたこともない、女の声が聞こえてきたのよ。
「その男は……今夜死ぬ……」
「え?」
振り向いたけど、誰もいなかった。
「乗らないのか? 乗らないなら出発するぞ」
傭兵の男が馬車の上から、私に促した。
その時、また背後から声がした。
「その男も……今夜死ぬ……」
私、その声で動けなくなってしまって……。
「乗るなら早くのっておくれよ」
乗り合いの女性の一人に嫌味を言われても、足が動かないのよ。
「その女は……はらわたを垂らしたまま苦しんで明日死ぬ……」
「ご、ごめんなさい。乗りません……」
「しょうがねぇな……ほら、これは返しておくよ」
商人は、私の足元に先に渡しておいた運賃を放り投げると、馬車を発進させた。
私は呆然と去っていく馬車を見つめるしかなかった。
「……」
離れていく馬車の下に、明らかに人ではない女が張り付いていた。
笑顔で私を見つめながら……。
-----
その後、その馬車がどうなったかは知らないわ……。
でも、私はこの村を出る気がうせてしまった。
だから、これからも、ここを根城に活動していくつもりよ。
そう言うと、ロック鳥の手羽先にかぶりついていた。
いつの間にか円卓亭では、僕は食事をおごってくれる人ということで、ちょっとした有名人となっていた。
そして、その日も一人の冒険者が僕に話しかけてきた。
「飯をおごってくれるって本当?」
「えぇ……ちょっとした話をしてもらえれば……」
「怖い話……だっけ?」
「そうです」
話しかけてきたのは、冒険者のダニエラ。
このオブキュロス村を根城に活動している変わり者だ。
「まったく、この吹雪じゃ商売あがったりだからねぇ……あんたに言えばうまい飯が食えるって聞いたからさ」
「どうぞ、好きなモノを頼んでください」
ダニエラは、ロック鳥の手羽先のローストを頼むと、静かに語りだした。
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この村に生まれて、ずっとこの村を出ていくことを夢見ていたわ。
冒険者になったのだって、この村を出ていくためだったもの。
だから、ギルドに登録されたその日に、ドレスデネに向かう馬車に乗るはずだったのよ……。
ここは関所のある街だから、各地へ向けての商人キャラバンが馬車が集まる場所だから、行き先は選び放題だったわ。
とにかく一刻も早く、こんな何にもない街を出たい一心で、ドレスデネ行の商人に声をかけたて、いくばくかのお金を払って乗せてもらうことになったのよ。
でも、出発の時……変なことが起こったの。
「もう出発だ! さぁ、乗ったのった!」
商人から声がかかった時だったわ。
背後から聞いたこともない、女の声が聞こえてきたのよ。
「その男は……今夜死ぬ……」
「え?」
振り向いたけど、誰もいなかった。
「乗らないのか? 乗らないなら出発するぞ」
傭兵の男が馬車の上から、私に促した。
その時、また背後から声がした。
「その男も……今夜死ぬ……」
私、その声で動けなくなってしまって……。
「乗るなら早くのっておくれよ」
乗り合いの女性の一人に嫌味を言われても、足が動かないのよ。
「その女は……はらわたを垂らしたまま苦しんで明日死ぬ……」
「ご、ごめんなさい。乗りません……」
「しょうがねぇな……ほら、これは返しておくよ」
商人は、私の足元に先に渡しておいた運賃を放り投げると、馬車を発進させた。
私は呆然と去っていく馬車を見つめるしかなかった。
「……」
離れていく馬車の下に、明らかに人ではない女が張り付いていた。
笑顔で私を見つめながら……。
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その後、その馬車がどうなったかは知らないわ……。
でも、私はこの村を出る気がうせてしまった。
だから、これからも、ここを根城に活動していくつもりよ。
そう言うと、ロック鳥の手羽先にかぶりついていた。
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