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13 人間とあやかし
①
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翌日。
いつものように出張所を開店する準備をしたが、体が重かった。
「あいたたたた」
昨日往復四時間もかけて、田中さんの家へ行き来した間、ずっと車のハンドルを握りっぱなしだったことがいけなかったのかもしれない。
家へ帰るとすぐに昼食を食べて、大学へと行ったシロを見送り、私自身はずっと午後からだらだらしていたのに、疲労は抜けなかった。
もちろん、そんなことを態度に出そうものなら、「余計なことをするからだ」とクロに冷たい目を向けられるとわかっていたので、昨夜も今朝も必要以上に溌溂と、元気にふるまった。
そのツケを感じる。
「もう今日は、ここでずっと座ってていいかな……」
回転椅子に座って机に突っ伏していると、いつものように多香子さんがやって来た。
「あらー、今日は朝からお疲れ? 休みの日に遊びすぎちゃったんじゃないのー?」
押してきた台車からテキパキと荷物を下ろして、代金の入った封筒をさし出す多香子さんに、私は慌てて椅子から立ち上がり、準備していた領収書を渡す。
「遊びじゃないんですけど、ちょっと前任の田中さんのお家へ車で行ったら、思っていた以上に遠くて……」
「ええっ!? 田中のお爺ちゃんの家へ行ったの? それはくたびれ果てるはずだわ……」
多香子さんは驚いたように目を見開いて、それからすぐ同情するような顔になる。
「すごーく遠かったでしょ?」
「はい」
「でも田中のお爺ちゃんは、毎日あそこからここまで通ってたのよ」
「そ……うなんですか……」
聞き取りやすいはっきりとした声で、多香子さんは朗々と語る。
「ええ。出張所の裏の家も掃除はしてたみたいだから、いっそそこに住んだらって何度も言ったんだけど、自宅のお仏壇を放っておけないからってね……十年前くらいに、奥さんが亡くなったから……毎日お線香を上げて、自分が食べるのと同じ料理を供えて、まだ一緒に暮らしてる気分なんだって言われたら、もう何も言えないわよね……」
「そうですね……」
まるで自分のことのように胸が痛み、自然とうつむきがちになる私の肩をバシンと叩いて、多香子さんはガラス扉を押し開けた。
「訪ねて行ったら喜んだでしょう? また行くことがあったら、私からもよろしくって伝えておいてね、じゃあ!」
忙しく店を出ていく多香子さんを見送り、私は昨日の帰り道に感じたような、寂しさをまた感じていた。
いつものように出張所を開店する準備をしたが、体が重かった。
「あいたたたた」
昨日往復四時間もかけて、田中さんの家へ行き来した間、ずっと車のハンドルを握りっぱなしだったことがいけなかったのかもしれない。
家へ帰るとすぐに昼食を食べて、大学へと行ったシロを見送り、私自身はずっと午後からだらだらしていたのに、疲労は抜けなかった。
もちろん、そんなことを態度に出そうものなら、「余計なことをするからだ」とクロに冷たい目を向けられるとわかっていたので、昨夜も今朝も必要以上に溌溂と、元気にふるまった。
そのツケを感じる。
「もう今日は、ここでずっと座ってていいかな……」
回転椅子に座って机に突っ伏していると、いつものように多香子さんがやって来た。
「あらー、今日は朝からお疲れ? 休みの日に遊びすぎちゃったんじゃないのー?」
押してきた台車からテキパキと荷物を下ろして、代金の入った封筒をさし出す多香子さんに、私は慌てて椅子から立ち上がり、準備していた領収書を渡す。
「遊びじゃないんですけど、ちょっと前任の田中さんのお家へ車で行ったら、思っていた以上に遠くて……」
「ええっ!? 田中のお爺ちゃんの家へ行ったの? それはくたびれ果てるはずだわ……」
多香子さんは驚いたように目を見開いて、それからすぐ同情するような顔になる。
「すごーく遠かったでしょ?」
「はい」
「でも田中のお爺ちゃんは、毎日あそこからここまで通ってたのよ」
「そ……うなんですか……」
聞き取りやすいはっきりとした声で、多香子さんは朗々と語る。
「ええ。出張所の裏の家も掃除はしてたみたいだから、いっそそこに住んだらって何度も言ったんだけど、自宅のお仏壇を放っておけないからってね……十年前くらいに、奥さんが亡くなったから……毎日お線香を上げて、自分が食べるのと同じ料理を供えて、まだ一緒に暮らしてる気分なんだって言われたら、もう何も言えないわよね……」
「そうですね……」
まるで自分のことのように胸が痛み、自然とうつむきがちになる私の肩をバシンと叩いて、多香子さんはガラス扉を押し開けた。
「訪ねて行ったら喜んだでしょう? また行くことがあったら、私からもよろしくって伝えておいてね、じゃあ!」
忙しく店を出ていく多香子さんを見送り、私は昨日の帰り道に感じたような、寂しさをまた感じていた。
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