62 / 77
6 夢見た未来
9
しおりを挟む
誠さんも椿ちゃんの絵を描いていたが、身近な人を描くというのはどういう気持ちなのだろう。
私自身は、風景や静物の絵しか描かないので、父や誠さんにぜひ訊いてみたいところだ。
二人の話を父としてみたくて、私は慎重に言葉を選びながら、父に話した。
「私、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに会ったよ。お父さんが描いたような夢の中で……」
実際の私の感覚としては、二人との邂逅は夢よりもっとリアルなものだったが、あの不思議な体験を語るには、『夢』で片づけるしかないだろうという結論に至ったのだった。
「お祖父ちゃんは、すごく絵がうまくて、手先も器用な穏やかな人で、お祖母ちゃんのことが大好きだった……お祖母ちゃんは、泣いたり笑ったり忙しくて、でもそんなところがとっても可愛くて、やっぱりお祖父ちゃんのことが大好きだった……」
「おお! 当たってる!」
父は手を叩いて笑いながら、私の顔を見た。
「でも和奏……あの燈籠の絵は、夢じゃなくて、現実なんだよ……」
「え……?」
驚いて目を瞬かせる私に、父は思いもよらない話をしてくれる。
「和奏が五歳の夏だったかな……この町へ家族で帰省して、この家に泊ったんだ。その時の絵だ。あの頃はもうすでに俺は本家に出入り禁止だったから、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんもわざわざ、本家からここへ泊まりに来てくれて……」
「本家?」
首を傾げる私に、父は頷いた。
「ああ、『成宮家本家』。お前がこの間ちらりと聞いた『成宮』だよ……俺の実家……」
やはりそうだったのだと、私も父へ頷き返した。
私自身は、風景や静物の絵しか描かないので、父や誠さんにぜひ訊いてみたいところだ。
二人の話を父としてみたくて、私は慎重に言葉を選びながら、父に話した。
「私、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに会ったよ。お父さんが描いたような夢の中で……」
実際の私の感覚としては、二人との邂逅は夢よりもっとリアルなものだったが、あの不思議な体験を語るには、『夢』で片づけるしかないだろうという結論に至ったのだった。
「お祖父ちゃんは、すごく絵がうまくて、手先も器用な穏やかな人で、お祖母ちゃんのことが大好きだった……お祖母ちゃんは、泣いたり笑ったり忙しくて、でもそんなところがとっても可愛くて、やっぱりお祖父ちゃんのことが大好きだった……」
「おお! 当たってる!」
父は手を叩いて笑いながら、私の顔を見た。
「でも和奏……あの燈籠の絵は、夢じゃなくて、現実なんだよ……」
「え……?」
驚いて目を瞬かせる私に、父は思いもよらない話をしてくれる。
「和奏が五歳の夏だったかな……この町へ家族で帰省して、この家に泊ったんだ。その時の絵だ。あの頃はもうすでに俺は本家に出入り禁止だったから、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんもわざわざ、本家からここへ泊まりに来てくれて……」
「本家?」
首を傾げる私に、父は頷いた。
「ああ、『成宮家本家』。お前がこの間ちらりと聞いた『成宮』だよ……俺の実家……」
やはりそうだったのだと、私も父へ頷き返した。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる