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鳩の採掘
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ひとけがない山道を入ったところで車を停める。
車から降り、誰も踏み入っていないであろう獣道を行く。
一歩踏み出す毎に、枯葉が小気味良く割れる。
その感触が足元から伝わり耳に響く。
しばらく、歩き、俺は辺りを見渡す。
「ここでいいかな」
場所を決めると、荷物を一式地面に下ろした。
作業を進めていると、カサカサと音が鳴り、俺はそこに目を向ける。
木々の奥からカサカサと一定のリズムが刻まれている。
ゆっくりと近づいてみると、そこには何羽かの鳩がいた。
上半身を前に倒して、首の筋肉だけで左右に揺らし、クチバシでカサカサと落ち葉をかき分けている。
何を探しているのか。何が見つかるのか。一心不乱に掘り進める鳩達。
カサカサ、カサカサとリズミカルに鳴る音が癖になり、ずっと見てられる。
カサカサ、カサカサ
カサカサ、カサカサ
俺はしばらく、ぼーっと眺めていて、ある記憶が蘇ってきた。
小学生の頃だ。近所に小さなお寺があり、その時も枯葉が積もっていて鳩達がそれを掘っていた。
そこへ小汚い小太りのおっさんが現れて
「この鳩が! やめろ。去ね」と手をバタバタと仰ぎ鳩を追い払う。
鳩は豆鉄砲を食らった様に、飛び去っていった。
「去ね。去ね。去ね」
鳩に親でも殺されたかの様に怒り、次から次へと追い払うおっさん。
なぜ、こんなにも怒り狂って鳩を追い払うのか。
その場にいた俺と友達は疑問が浮かび、それぞれの考察にジョークを交えて話し合う。
・徳川の埋蔵金を探していて、鳩に先をこされるのを危惧している
・カサカサ、カサカサという音が不快で蕁麻疹が出る体質
・実は学会を追放された博識の異端児で、枯れ葉の山には沢山の微生物が住んでいる事を知っており、鳩が掘り起こすたんびに微生物が舞い、人体に有害なので止めている
などと言いながら盛り上がる。
後で知ったが、近所では有名な変なおっさんで、いつも枯葉をかき分けている鳩を追い払っているらしい。
その変なおっさんが俺らの注目の的になったが、ある日を境目にぱたりと見なくなった。
結局、あのおっさんがなぜ鳩を追い払っていたのかは分からずじまい。
でも、今、その答えがわかった気がした。
あのおっさんは、埋めたものを掘り返されたくなかったんじゃないか?
掘り返されてはいけないもの、それをおっさんは埋めていてた。
鳩が枯葉をかき分ける姿が、掘り返されるイメージを彷彿してしまうので追い払っていた。
という答えはどうだろうか。
つまり、今の俺の状況と同じという事だ。
俺はスコップで掘った穴に殺した女を埋める。
丁寧に土を被せて、上に枯葉をトッピングのように振りかけカモフラージュした。
今後、俺もあのおっさんみたいに鳩を追い払うようになるのだろうか。
そんな事を考える。
鳩が掘り起こすカサカサ、カサカサというミュージックを名残惜しく感じながら、俺はその場を後にした。
車から降り、誰も踏み入っていないであろう獣道を行く。
一歩踏み出す毎に、枯葉が小気味良く割れる。
その感触が足元から伝わり耳に響く。
しばらく、歩き、俺は辺りを見渡す。
「ここでいいかな」
場所を決めると、荷物を一式地面に下ろした。
作業を進めていると、カサカサと音が鳴り、俺はそこに目を向ける。
木々の奥からカサカサと一定のリズムが刻まれている。
ゆっくりと近づいてみると、そこには何羽かの鳩がいた。
上半身を前に倒して、首の筋肉だけで左右に揺らし、クチバシでカサカサと落ち葉をかき分けている。
何を探しているのか。何が見つかるのか。一心不乱に掘り進める鳩達。
カサカサ、カサカサとリズミカルに鳴る音が癖になり、ずっと見てられる。
カサカサ、カサカサ
カサカサ、カサカサ
俺はしばらく、ぼーっと眺めていて、ある記憶が蘇ってきた。
小学生の頃だ。近所に小さなお寺があり、その時も枯葉が積もっていて鳩達がそれを掘っていた。
そこへ小汚い小太りのおっさんが現れて
「この鳩が! やめろ。去ね」と手をバタバタと仰ぎ鳩を追い払う。
鳩は豆鉄砲を食らった様に、飛び去っていった。
「去ね。去ね。去ね」
鳩に親でも殺されたかの様に怒り、次から次へと追い払うおっさん。
なぜ、こんなにも怒り狂って鳩を追い払うのか。
その場にいた俺と友達は疑問が浮かび、それぞれの考察にジョークを交えて話し合う。
・徳川の埋蔵金を探していて、鳩に先をこされるのを危惧している
・カサカサ、カサカサという音が不快で蕁麻疹が出る体質
・実は学会を追放された博識の異端児で、枯れ葉の山には沢山の微生物が住んでいる事を知っており、鳩が掘り起こすたんびに微生物が舞い、人体に有害なので止めている
などと言いながら盛り上がる。
後で知ったが、近所では有名な変なおっさんで、いつも枯葉をかき分けている鳩を追い払っているらしい。
その変なおっさんが俺らの注目の的になったが、ある日を境目にぱたりと見なくなった。
結局、あのおっさんがなぜ鳩を追い払っていたのかは分からずじまい。
でも、今、その答えがわかった気がした。
あのおっさんは、埋めたものを掘り返されたくなかったんじゃないか?
掘り返されてはいけないもの、それをおっさんは埋めていてた。
鳩が枯葉をかき分ける姿が、掘り返されるイメージを彷彿してしまうので追い払っていた。
という答えはどうだろうか。
つまり、今の俺の状況と同じという事だ。
俺はスコップで掘った穴に殺した女を埋める。
丁寧に土を被せて、上に枯葉をトッピングのように振りかけカモフラージュした。
今後、俺もあのおっさんみたいに鳩を追い払うようになるのだろうか。
そんな事を考える。
鳩が掘り起こすカサカサ、カサカサというミュージックを名残惜しく感じながら、俺はその場を後にした。
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