魔法探偵の助手。

雪月海桜

文字の大きさ
上 下
2 / 70
第一章【恋と魔法の出会い】

お昼休みの恋愛相談。

しおりを挟む

 そんな一目惚れを自覚してからの授業は、当たり前のように手に付くはずもなかった。
 わたしは教室のちょうど真ん中の方で、シオンくんは後ろの方の席だったから、授業中度々振り向いては先生に怒られたし、真後ろの姫乃ちゃんには笑われた。

 そしてあっという間にお昼休みを迎えて、給食が終わったらシオンくんに話しかけようと思っていた矢先、とーや先生に連れられてどこかへ行ってしまうのを見て、わたしは溜め息を吐く。

「シオンくんと仲良くなりたい……」

 それは朝のわくわくとは異なる、なんとも切実な呟きだった。
 恋わずらいから少食になるなんてこともなく、給食のクリームシチューとコッペパンは全部完食して、なんなら自棄になっておかわりもした。
 お腹が満たされたあと、わたしは後ろの席の姫乃ちゃんに泣きつく。

「ひめえもーん、どうしたらいいかな!?」
「なにその呼び方。……月宮くんに、放課後一緒に帰ろうとか声をかけてみたら?」
「そ、そうだよね……お家どの辺なんだろう……? 反対方向だったらあれだし……」
「私が調べてもいいけど、そういうのこそ話題にして、少しでも会話するべきじゃない? 結局じろじろ見るだけで、最初の会話しかしてないじゃない」
「はっ……それもそうだよね、ありがとう姫乃ちゃん!」
「ふふ、どういたしまして」

 姫乃ちゃんは、泣き黒子のある目元を緩めながら、長い黒髪を揺らして綺麗に笑う。
 こんな風に美人で大人っぽい子なら、きっとシオンくんにも釣り合うのに。つい、そんな風に思ってしまう。

「ねえ、ちなみになんだけど、姫乃ちゃんは気になる人とか……」
「……ところでみゆり。次の算数、小テストあるけど勉強してきた?」
「あー!?」

 お昼休みで人の少ない教室に、わたしの悲鳴が響き渡った。


*******
しおりを挟む

処理中です...