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第三章【昼下がりの恋歌】
チャイムと悲鳴。
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「なるほど……彼女は夕崎くんと違って、自らの意思で魔法をコントロールしているように見えた、と」
「うん……でも、どんな魔法なのかは、ちょっとわからなくて。というか、メガネのレンズが反射してキラキラするのと似てて、いつ発動してるのかちょっと怪しいんだけど……若菜ちゃんの感情が揺れた時……とか、憧れの人に視線を向けた時、とか、特にキラキラな気がする」
「そう……夕崎くんの時は、魔法使いである僕があの鉛筆の魔力の本質を理解したから、魔力のみ切り離して回収することが出来たけど……真昼さんのメガネの魔力は、今のままじゃ情報が足りないな。最悪メガネを奪うことになるけど……それってメガネの人にとって死活問題だよね」
「うん……」
「トーヤもメガネがないとほとんど見えないって、シャワー後とか寝起きにはしょっちゅういろんな所にぶつかってるし」
「先生にそんなドジっ子属性が」
想定外の情報を入手してしまった。姫乃ちゃんに今度教えてあげよう。
若菜ちゃんの場合、視力的な問題もあるかもしれないけれど、あのメガネを奪ったら円川ヒナの顔が出てくるかもしれないのだ。
友達の秘密を守りたいと思う気持ちと、好きな人の仕事を応援したいという気持ちとで、板挟みになる。
「とりあえず、もうお昼休み終わっちゃうから、放課後とーや先生と一緒に考えよう」
「そうだね。それじゃあ、戻ろうか」
別々に来たにも関わらず、一緒に第二音楽室を出るのは少し躊躇われたけれど、差し出された手には抗えない。
わたしはエスコートしてくれるシオンくんの手を取って、部屋を出る。
「あっ」
「あ?」
「あ!?」
出たところで、ちょうど噂をしていた若菜ちゃんと遭遇した。
本来鍵のしてある空き教室から出てきたのを見られた動揺よりも、手を繋いでいるところを見られたことに、硬直した。
わたしは先日お姫様抱っこされていた若菜ちゃんと同じくらい、一気に真っ赤になってしまう。
「わ、若菜ちゃん! えと、これはね、ちがうの!」
「……青春だぁ」
「若菜ちゃん!?」
焦るわたしと対照的に、うっとりとした若菜ちゃん。にこにこと微笑ましそうにわたし達を見る視線は、やはり煌めいている。
「いいね、手を繋いで秘密の会瀬、青春っぽい!」
「ち……がうとも言いきれないけど、違うのぉおお!」
魔法道具、若菜ちゃん、繋いだ手、ドキドキ、キラキラ、いろんな情報が一気に押し寄せて、けれどシオンくんの手を振り払うことなんて出来るはずもない。
昼休みの終わりを告げるチャイムと共に、わたしの悲鳴に似た叫びが響き渡った。
*******
「うん……でも、どんな魔法なのかは、ちょっとわからなくて。というか、メガネのレンズが反射してキラキラするのと似てて、いつ発動してるのかちょっと怪しいんだけど……若菜ちゃんの感情が揺れた時……とか、憧れの人に視線を向けた時、とか、特にキラキラな気がする」
「そう……夕崎くんの時は、魔法使いである僕があの鉛筆の魔力の本質を理解したから、魔力のみ切り離して回収することが出来たけど……真昼さんのメガネの魔力は、今のままじゃ情報が足りないな。最悪メガネを奪うことになるけど……それってメガネの人にとって死活問題だよね」
「うん……」
「トーヤもメガネがないとほとんど見えないって、シャワー後とか寝起きにはしょっちゅういろんな所にぶつかってるし」
「先生にそんなドジっ子属性が」
想定外の情報を入手してしまった。姫乃ちゃんに今度教えてあげよう。
若菜ちゃんの場合、視力的な問題もあるかもしれないけれど、あのメガネを奪ったら円川ヒナの顔が出てくるかもしれないのだ。
友達の秘密を守りたいと思う気持ちと、好きな人の仕事を応援したいという気持ちとで、板挟みになる。
「とりあえず、もうお昼休み終わっちゃうから、放課後とーや先生と一緒に考えよう」
「そうだね。それじゃあ、戻ろうか」
別々に来たにも関わらず、一緒に第二音楽室を出るのは少し躊躇われたけれど、差し出された手には抗えない。
わたしはエスコートしてくれるシオンくんの手を取って、部屋を出る。
「あっ」
「あ?」
「あ!?」
出たところで、ちょうど噂をしていた若菜ちゃんと遭遇した。
本来鍵のしてある空き教室から出てきたのを見られた動揺よりも、手を繋いでいるところを見られたことに、硬直した。
わたしは先日お姫様抱っこされていた若菜ちゃんと同じくらい、一気に真っ赤になってしまう。
「わ、若菜ちゃん! えと、これはね、ちがうの!」
「……青春だぁ」
「若菜ちゃん!?」
焦るわたしと対照的に、うっとりとした若菜ちゃん。にこにこと微笑ましそうにわたし達を見る視線は、やはり煌めいている。
「いいね、手を繋いで秘密の会瀬、青春っぽい!」
「ち……がうとも言いきれないけど、違うのぉおお!」
魔法道具、若菜ちゃん、繋いだ手、ドキドキ、キラキラ、いろんな情報が一気に押し寄せて、けれどシオンくんの手を振り払うことなんて出来るはずもない。
昼休みの終わりを告げるチャイムと共に、わたしの悲鳴に似た叫びが響き渡った。
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