一条物語

いしぽよ

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第1章 序章

第3話 元服 

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承久の乱から4年後、三寅は8歳となった。時代は1225年、いわゆる鎌倉時代中期と呼ばれる時代に突入していく。
この時代、三寅が生まれた九条家が3つの家に分離し、一条家と二条家が生まれ、三寅の親戚である近衛家が2つに分離し、鷹司家が生まれた。一条家、二条家、九条家、近衛家、鷹司家、いわゆる五摂家の成立である。
三寅の兄弟達は、それぞれ一条家、二条家、九条家の当主を務め、三寅にとって、強力な協力者となっていくのだが、それはまた後の話。

三寅が8歳になったということで鎌倉では、元服の話が出ていた。
北条氏にとっては、実朝亡き今、一刻も早く誰かを将軍職に就任させ、幕府としての体が欲しかった。
加えて、北条氏の貢献で三寅が将軍になれば、益々北条の力が強くなるというもの。
三寅は現在8歳。この時代と言えどもかなり早い部類、下手すれば歴代最年少の元服になるかもしれないくらいだが、北条泰時は、まだ早いのでは?という周囲の声を一蹴し、三寅元服を強行する。
以上の話を、零からの文で読んだ道家は、早すぎる元服に戸惑いながらも、我が子の元服に喜ぶ。
綸子は、三寅が元服するだの、将軍職だの、本音ではどうでもよく、とにかく得体の知れない三寅と離れられてご満悦といったところである。道家は、都より、お祝いの品を鎌倉へ送り、これを祝福した。
一方、鎌倉では、三寅元服の儀が行われ、三寅は元服し、名を頼経と改めた。ここに、藤原頼経が誕生した。
鎌倉で都からきた父からの祝福の品を受け取った頼経は、父の愛を感じ、涙ぐんだ。
それを見た零もまた涙ぐみ、一緒に道家の代わりに頼経の元服をお祝いした。
8歳になり、文字が書けるようになった頼経は、初めて直筆で父にお礼の文を書いた。
それを都で受け取った道家は、初めてみる我が子の文字に感動し、頼経の成長を感じて大いに喜んだ。(続く)
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