訳アリ兄妹 

いしぽよ

文字の大きさ
上 下
19 / 24
第2章 雪乃との日常

第19話 俺、雪乃と旧南都へ行く6

しおりを挟む
雪乃「ふぅ。一体猫又ちゃんはどこへいってしまったのか、、、。ん?あれは?」
見るとそこには武装した警察官が隊を組んで進んでいた。
雪乃「ちょっと待つにゃああ!おみゃあら一体ここで何をしているのか!?またか猫又ちゃんの退治をしに来たのではあるまいか!?」
警察「ん?もちろんそうだけど。お嬢ちゃんこそこんなところで何やってんの?」
雪乃「それはダメにゃあああ!あの子は悪い猫ちゃんではにゃいにゃああ!退治なんかしたらだめにゃあ!」
警察「じゃあどうしろと?」
雪乃「あたしがお友達になってこの山から連れ出して面倒を見るので乱暴な真似はよして頂きたく?」
警察「ダメだダメだ。何を訳の分らぬことを。君みたいな娘にあれを手名付けられるとは思えない。さぁ、帰った帰った。」
雪乃「カッチーン!頭に来たのである!なら、おみゃあらよりも先に猫又ちゃんを見つけてやるにゃあ!」
そう言い放つと、雪乃は山を駆け上がっていった。
警察「こ、こらぁ!待ちなさい!一人で行動したら危ないだろう!おじさんたちと一緒に行動しなさい!守ってやるから!」
雪乃「お尻ペンぺーンである!」
警察「……」
警察「行っちまった。何なんだあの娘は、、、」
雪乃は、休む間もなくどんどん山を駆け上がっていった。すると、猫又退治を目的とした別の警官隊や猟師達をあちこちで見掛けた。
雪乃「まずいのである。こんなにたくさんの人たちが猫又ちゃん目当てで来てるなんて。はやく安全な場所に誘導してやらねば!」
猟師「いたぞ!あそこだ!打てぇ!」
「パンッ!パンッ!パンッ!」
「にゃああああああああああ!」
雪乃「あのなき声は!間違いない!猫又ちゃんだにゃ!」
銃声のなる方へと駆ける雪乃。
雪乃「はぁ、はぁ、はぁ、、、可哀そうに今助けてやるにゃあ!」
「パンッ!パンッ!パンッ!」
「にゃああああああああああ!」
「パンッ!パンッ!パンッ!」
「にゃああああああああああ!」
「パンッ!パンッ!パンッ!」
「にゃああああああああああ!」
雪乃「どこにゃあ!どこにゃあ!」
「パンッ!パンッ!パンッ!」
「にゃああああああああああ!」
雪乃「は!今一瞬巨大な尻尾が見えた!み、見つけたにゃあ!きっとあの大きな尻尾は猫又ちゃんに違いないにゃあ!」
尻尾が見えた方へ一気に加速する雪乃。
「パンッ!パンッ!パンッ!」
「........................」
猟師「ちっ、見失っちまった。逃げられたか。しかし、相当打ち込んだ。もはや遠くまでは逃げられまい。辺りを隈なく探せ!!」
雪乃(さっきの銃声はあの猟師たちによるものと見た。奴らより先に猫又ちゃんを探し出さなければ。このままでは殺されてしまうにゃあ。)
雪乃は唯との触れ合いで覚えた猫特有の匂いを頼りに猫又を探す。
雪乃(ん?この匂い!間違いにゃい!猫の匂い!それに、血の匂いも混じってる!間違いなくこの匂いは猫又ちゃんの匂いだにゃあ!)
雪乃は一気に加速して匂いのする方へと駆ける。行き着いた先は洞窟だった。洞窟を奥まで進んでいくと、そこには銃で傷つけられた猫又がぐったりと倒れていた。
雪乃「!!?ね、猫又ちゃん!!」
猫又を見つけるやいなや一目散に猫又に駆け寄る雪乃。しかし、、、
猫又「ぐるるるるるるるる!!!」
猫又は雪乃を強烈に威嚇する。
雪乃「あ、あわ、あわ、あわわわわわわわわわ、、、と、とりあえず、ぺ、ペン吉、、、つ、通訳を、、、」
ペン吉「任せな。うわ!何だこの猫!でっけー!」
猫又「それ以上近づくな!さもないとバラバラに引き裂くぞ!?」
雪乃「が、ガクガクブルブル、、、」
猫又「お前は雪乃とか言ったな?昨晩はよくもだまし討ちしてくれたじゃねえか!」
雪乃「ち、ちがうのである!あたしは本気であなたとお友達になりたかったのである!
昨晩は事情を知らないあたしの仲間があたしが襲われていると誤解して猫又ちゃんを攻撃してしまっただけである!し、信じてにゃ?」
猫又「何をもって信じろと?」
雪乃「そ、それは、、、」
そのとき、雪乃のカバンから唯が飛び出す。
唯「にゃあああ!」
雪乃「あ、唯ちゃん、勝手に出てきたらダメである。」
猫又「そいつ、かなりお前に懐いているみたいだな。」
雪乃「そりゃあまぁ!お友達なので!」
猫又「ペットではなく、友達、だと?」
雪乃「そうである!この子に限らず、このペン吉もペットではなくお友達。近くにいるであろうチュン太郎もお友達である。」
猫又「なぜ首輪をつけて飼わない?」
雪乃「そんなもの必要ないので!あの子たちは主従関係ではなく、協力関係を結んでいる子達である!あたしは、猫又ちゃんともお友達になって、協力関係を結びたいのにゃ。」
猫又「なぜ強力関係なのだ。人間は我々動物を飼いならして使役しようとするではないか。」
雪乃は下を向き、俯いて答える。
雪乃「あ、あたしには、人間のお友達がいない。」
猫又「...」
雪乃「あたしは学校でいじめを受けている。皆、話し方がおかしいだの、チビだの、猫臭いだの言っていじめてくる。そのせいで、性格が捻じ曲がってしまい、道を踏み外しそうになり、塞ぎ込んだことがあった。そんな時、寄り添ってくれたのがこの子達である。この子達はこんなあたしを理解してくれる。この子達はこんなあたしを受け入れてくれた大切なお友達である。だから使役するなどもっての他。いつかこの子たちに恩返ししたいと思っている。
猫又ちゃんもきっとあたしと同じはずである!昔は誰かに飼われていた善良な猫ちゃんだったはず。けど、何かにつけていじめられて性格が捻じ曲がってしまったのでは?そして巨大に膨れ上がった憎悪により、普通の猫から猫又へと変貌してしまい、人間から気味悪がられて駆除されてしまったのでは?」
猫又「...」
雪乃「あたしと猫又ちゃんの違いは、いじめを受け、捻じ曲がってしまった後、手を差し伸べてくれた者がいたかいなかったかの差でしかないにゃあ!あたしだって誰も手を差し伸べてくれなかったら、今の猫又ちゃんと同じように悪に染まって、今頃きっと犯罪者になっていたにゃ?悪者は生まれて落ちた瞬間から悪者なのではなく、みんな生まれたときは善良なのにゃ。その後、周りからいじめや陰湿な嫌がらせ等を受け、後天的に捻じ曲がって成長してしまい、限度を超えると悪者になって犯罪に走るのにゃ。あたしはそうなる前に救われた。そして猫又ちゃんはそうなってしまった。ただそれだけのことである。」
猫又「...」
雪乃「あたしは、猫又ちゃんを見ているとまるで昔の自分を見ているようで放っておけないのにゃあ!
この子たちがあたしに手を差し伸べてくれたように、今後はあたしが猫又ちゃんに手を差し伸べたい。そして半端者同士、仲良くしようにゃ?まずは、猫又ちゃんがそうなってしまった訳を話してほしいのにゃ。」
猫又「お、お前、、、」
猟師「いたぞ!あそこだ!打てぇ!」
雪乃・猫又「!!?」
「パンッ!パンッ!パンッ!」
ペン吉「雪乃!危ない!」
雪乃「ひゃあああああ!」
「ビシャアア!!」
あたりにドス黒い血潮が飛び散る。
猫又「ぐ、、、」
雪乃が目を開けると、なんと猫又が雪乃を庇って銃弾を受けていた。
雪乃「な、なぜ、、、」
猫又「...............」
「パンッ!パンッ!パンッ!」
雪乃「ああ!ペン吉!唯ちゃん!危ないのであるぅ!」
ペン吉「うわあああ!」
唯「にゃあああ!」
「ビシャアア!!」
あたりにドス黒い血潮が飛び散る。
猫又「ぐ、、、」
雪乃が目を開けると、なんと猫又がペン吉と唯を庇って銃弾を受けていた。
雪乃「な、なぜ、、、」
猫又「...............」
「パンッ!パンッ!パンッ!」
次の瞬間、猫又は雪乃、ペン吉、唯の三人を抱きかかえ、銃弾を搔い潜り、高速で洞窟を脱出すると、遠方へと駆けた。
雪乃「猫又ちゃん、どうして庇ってくれたのかにゃ?」
猫又「...............」
しばらくしたのち、猫又の足が止まった。かなり山奥まで来た。
猫又「...............」
「バタンッ!」
猫又は力尽きたようにその場にばったりと倒れこんでしまった。
雪乃「!?ね、猫又ちゃん!だ、大丈夫であるか!!?は!い、意識がにゃい!」
見ると猫又は全身に銃弾を浴びており、酷い重症で回復が追い付いていなかった。
雪乃「そ、そんなぁ、、、こ、これでは死んでしまう。ど、どうすれば、あ、あわ、あわ、あわわわわわわわわわ、、、」
ペン吉「雪乃!しっかりしろ!いまはとにかく、俺たちのできることをするんだよ!」
雪乃「は!そうだにゃ。あたしがしっかりせねば!よし。おーいチュン太郎ぉー!」
チュン太郎「呼んだか?うわ、なんだこのでっかい猫は!こ、これが、噂に聞く猫又ってやつか。それにしてもひでー怪我だな。」
雪乃「チュン太郎、栄養になりそうな木の実をたくさん採ってきてほしいのにゃ。」
チュン太郎「ああ、任せな。」
雪乃「唯ちゃんは川で魚を採ってきて欲しいにゃ。」
唯「ああ、任せな。」
雪乃「ペン吉は引き続き、通訳を頼むにゃ。」
ペン吉「ああ、任せな。」
雪乃「では各々方。抜かりなく。」
チュン太郎・唯・ペン吉「了解!」
猫又「...............」
雪乃「安心するにゃあ!猫又ちゃんはあたしが必ず助けてやるにゃあ!半端者同士、仲良くしようにゃあ?」
猫又「...............」
しばらくすると、夜になり、冷え込んできた。雪乃はガクガクブルブル震えだす。
雪乃「さ、寒いにゃあ、、、」
すると、猫又は大きな手で雪乃を掴み、全身で雪乃を包み込んで、雪乃を寒さから守り出した。
雪乃「あ、あったかいにゃあ!ありがとにゃあ!」
猫又「...............」
雪乃「ふふ、おみゃあは相変わらずツンデレな猫ちゃんだにゃあ!図体のわりに、意外と小心者かにゃ?」
猫又「...............」
雪乃「何はともあれ、助かるにゃあ!」
猫又「...............」
その後、雪乃は猫又の腕の中でスヤスヤと眠ってしまった。

翌朝。
雪乃「ううーん!良く寝たにゃあ!皆の衆、おはようにゃ!」
しかし返事はなかった。
猫又「...............」
ペン吉「スースース―スー。」
雪乃「ありゃ?あそうか、チュン太郎も唯ちゃんもまだ帰ってきていないし、ペン吉はまだ寝ているのかにゃ。ペン吉の寝顔、中々に可愛いのにゃあ!ちょっといたずらしてやるにゃ!」
ペン吉の横っ腹をツンツン突いて遊ぶ雪乃。
そうこうしていると、チュン太郎と唯が帰ってきた。
雪乃「二人とも、ご苦労様だにゃ!」
ふたりが採ってきた木の実と魚を猫又に食わせる雪乃。
雪乃「ほらほら遠慮せずにたくさん食べて体力付けるにゃあ!」
猫又「あ、ありがとう。」
雪乃「!!?つ、ついにしゃべったにゃあ!」
猫又は顔を真っ赤に染めてそっぽを向く。
チュン太郎「はははははは!誰かさんにそっくりだな!」
雪乃「う、うるさいわ!」
木のみと魚をむしゃむしゃ食べてすっかり元気になると、猫又は重い口を開けて、自身の過去を語り出す。
しおりを挟む

処理中です...