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3章 依存国ツィーシャ
休憩
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リュークから告げられた言葉を聞いて、クレアは自分がどこか遠くにいる気がした。
何も聞こえなくなって、真っ暗になって、一人でいる気がした。
──────!
あの日、あのとき。
自分を呼んだあの人の顔が浮かぶ。
いつまでも笑顔を崩さないでいたあの人の顔が、初めて涙で歪んだ。
それが、信じられなくて、慰めたくて、伸ばした自分の手が、あの人の頬を伝う涙に触れた感触が、鮮明に思い出される。
とても暖かい涙を。
あの人が顔を涙でぐしゃぐしゃにして、抱きついて何度も言ってきた言葉を。
──────巻き込んでごめんなさい。
言葉の意図がわからなかった自分が悔しくてたまらない。
巻き込んだのは自分のほうだと言いたくても言えない空気だった。
言えていたら、教えてもらえたのだろうか。
「……っ子』!……『ちびっ子』!!」
「あっ………」
肩を揺らされて、現実に引き戻される。
クレアはこちらを心配そうに見てくるリュークを呆然と眺めていた。
息が荒い。
リュークは咄嗟にクレアの状態に気づいて、クレアの肩に手を置いて、目線を合わせるように床に膝をついた。
「ほら、大丈夫だから。まずは、ゆっくり吸って──」
リュークはそう言って手本のように息を吸う。クレアも無意識にそれに倣う。
「はぁーって、吐いて──」
少しずつ息を出していくリュークを見て、クレアも息を出していく。
そして、リュークはクレアの口角を指で無理やり上げた。
「はい、笑顔。……落ち着いた?」
「………うん、ありがとう」
クレアの言葉にリュークは胸を撫で下ろした。
今までもそうしてきたかのように、リュークは慣れた手つきでクレアの呼吸を整えた。
そうして、リュークはクレアを見てため息をついた。
「………悪かったよ。いろいろと端折ったし、早すぎた」
「…………うん」
クレアはリュークから視線をずらして俯きがちに机の方を見る。
二度と思い出したくないあの瞬間が、目の前に広がって気落ちしてしまう。
わかってしまったこともあって、少し落ち着かない。
机の木目を目で追って、できるだけ違うことを考えようとすればするほど、離れない。
それを知ってか知らずか。
リュークは立ち上がって髪と瞳の色を変えた。
クレアが困惑していると、リュークはクレアのローブを渡した。
「昔話は一旦休憩。少し気分転換に街でも歩こうか」
リュークの提案で、クレアたちはまた賑やかな街に戻ってきていた。
とはいえ、転移のために人気のない路地に出ていて、聞こえるのは声だけだった。
リュークの後ろをついて歩いていくと、視界が開けて、たくさんの人が行き来しているのが見えてくる。
「………たくさんいるね」
まだ気持ちに整理がつかないクレアは、少し上の空の感じで前を歩くリュークにそうつぶやいた。
リュークは少し考えるそぶりをしてクレアの言葉に答えた。
「小さな国だからね。面積も人口も多くなくて、中心地に集中してるんだ。
ここはツィーシャの中心地だから多いだけで、もう少し外に行くと、本当に誰もいないよ」
「じゃあ……リュークのあの家もツィーシャの郊外ってこと?」
「そうだね、あそこに建てたのは僕だけど、そうなるかな」
リュークは答え終えると、クレアの手を取って人混みへ引き込んだ。
突然のことに驚きながらついていくクレアにリュークは意地悪そうな顔をした。
「今度は本当に迷子になっちゃうかもしれないね?でしょ、『ちびっ子』?」
「………もう『ちびっ子』じゃないよ」
少し拗ねた声を出したクレアにリュークは少しだけ笑った。
「じゃあ、まずはご飯だね」
そう言って、リュークはクレアの手を握りながら慣れたように人混みを歩いていった。
何も聞こえなくなって、真っ暗になって、一人でいる気がした。
──────!
あの日、あのとき。
自分を呼んだあの人の顔が浮かぶ。
いつまでも笑顔を崩さないでいたあの人の顔が、初めて涙で歪んだ。
それが、信じられなくて、慰めたくて、伸ばした自分の手が、あの人の頬を伝う涙に触れた感触が、鮮明に思い出される。
とても暖かい涙を。
あの人が顔を涙でぐしゃぐしゃにして、抱きついて何度も言ってきた言葉を。
──────巻き込んでごめんなさい。
言葉の意図がわからなかった自分が悔しくてたまらない。
巻き込んだのは自分のほうだと言いたくても言えない空気だった。
言えていたら、教えてもらえたのだろうか。
「……っ子』!……『ちびっ子』!!」
「あっ………」
肩を揺らされて、現実に引き戻される。
クレアはこちらを心配そうに見てくるリュークを呆然と眺めていた。
息が荒い。
リュークは咄嗟にクレアの状態に気づいて、クレアの肩に手を置いて、目線を合わせるように床に膝をついた。
「ほら、大丈夫だから。まずは、ゆっくり吸って──」
リュークはそう言って手本のように息を吸う。クレアも無意識にそれに倣う。
「はぁーって、吐いて──」
少しずつ息を出していくリュークを見て、クレアも息を出していく。
そして、リュークはクレアの口角を指で無理やり上げた。
「はい、笑顔。……落ち着いた?」
「………うん、ありがとう」
クレアの言葉にリュークは胸を撫で下ろした。
今までもそうしてきたかのように、リュークは慣れた手つきでクレアの呼吸を整えた。
そうして、リュークはクレアを見てため息をついた。
「………悪かったよ。いろいろと端折ったし、早すぎた」
「…………うん」
クレアはリュークから視線をずらして俯きがちに机の方を見る。
二度と思い出したくないあの瞬間が、目の前に広がって気落ちしてしまう。
わかってしまったこともあって、少し落ち着かない。
机の木目を目で追って、できるだけ違うことを考えようとすればするほど、離れない。
それを知ってか知らずか。
リュークは立ち上がって髪と瞳の色を変えた。
クレアが困惑していると、リュークはクレアのローブを渡した。
「昔話は一旦休憩。少し気分転換に街でも歩こうか」
リュークの提案で、クレアたちはまた賑やかな街に戻ってきていた。
とはいえ、転移のために人気のない路地に出ていて、聞こえるのは声だけだった。
リュークの後ろをついて歩いていくと、視界が開けて、たくさんの人が行き来しているのが見えてくる。
「………たくさんいるね」
まだ気持ちに整理がつかないクレアは、少し上の空の感じで前を歩くリュークにそうつぶやいた。
リュークは少し考えるそぶりをしてクレアの言葉に答えた。
「小さな国だからね。面積も人口も多くなくて、中心地に集中してるんだ。
ここはツィーシャの中心地だから多いだけで、もう少し外に行くと、本当に誰もいないよ」
「じゃあ……リュークのあの家もツィーシャの郊外ってこと?」
「そうだね、あそこに建てたのは僕だけど、そうなるかな」
リュークは答え終えると、クレアの手を取って人混みへ引き込んだ。
突然のことに驚きながらついていくクレアにリュークは意地悪そうな顔をした。
「今度は本当に迷子になっちゃうかもしれないね?でしょ、『ちびっ子』?」
「………もう『ちびっ子』じゃないよ」
少し拗ねた声を出したクレアにリュークは少しだけ笑った。
「じゃあ、まずはご飯だね」
そう言って、リュークはクレアの手を握りながら慣れたように人混みを歩いていった。
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