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1章 商業都市フレンティア
魔法使いと守る立場
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ゼルナのおかげで俺たちも口々に感想を言い合う。
確かに、クレアが15歳でこの実力なのは疑う。
筆頭魔法使いが誉めるほどの実力を持ち合わせている当の本人は、これくらいは当たり前だと言うくらいにけろりとしていた。
ヒルゼ様も感嘆して、拍手をした。
「まさかここまでだとは……。俺が魔法をわからないことに気づいて、わざと水が集まっていくのを見せたんだろう?」
「……はい。さすがにわかりましたか」
「クレア、お前さんには驚かされたよ」
ヒルゼ様がクレアの頭をわしわしと撫でると、クレアは一瞬目を見開いたが、嬉しそうに撫でられる。
それまで真面目な顔で笑いもしなかったクレアの年相応の顔が見えて、その場にいた全員が言いかけていたことを胸にしまった。
「ひとついいですか」
「なんだ?」
クレアは撫でられてぼさぼさになった髪を少しずつ直しながらヒルゼ様に口を開いた。
ヒルゼ様はクレアを相当気に入ったようで、穏やかな雰囲気でクレアと目線を合わせた。
しかし、その雰囲気はすぐに崩れる。
「今見せたとおり、私は杖がなくても魔法が使えます。私がテッドに狙われているなら、私が囮になって誘き寄せれば簡単に解決できると思います。だから、私を____」
「ダメだ」
ヒルゼ様はクレアの提案を遮るように一蹴した。
クレアは傷ついた顔を見せた。
クレアの言うことは納得できる。
確かにテッドがクレアを狙っているなら、クレアが1人のところを誘き出してクレアに制圧してもらうのがいいかもしれない。
この場にいる誰もがそう思って言うのを止めた。
ヒルゼ様に撫でられているときの嬉しそうな顔を見て、クレアを巻き込んで、彼女の笑顔を失いたくないと思ってしまったのだ。
その決意を破るように提案を持ちかけたクレアはそんなことを知る由もなく、ヒルゼ様に詰め寄る。
「それは…私が15歳だからですか?
私が頼りないからですか?
私には任せたくないからですか?
私が……いらない子だからですか?」
声が震えている。あの必死な表情を、俺は昨日見た気がする。
孤児院で留守番を頼んだときも、今と似たような表情だった。
クレアのあの言葉は多分、今思いついた理由ではない。
きっとこれまで何度も言われてきた言葉なのだろう。
問いかけるクレアの肩に手を置いて、ヒルゼ様はなだめるように優しい声音で語りかけた。
「クレア、お前さんに任せたいとこの場のみんなが思ってるだろうな。でもな、俺たちはお前さんのことを危険に晒してまで協力してほしくはない。わかってくれるか?」
「…………わからないです。……どうして、こんなに大事にしくれるのか」
本当にわからないという顔だった。今まで、どんな環境にいたら自分が大事じゃないと思えるのだろう。
胸がいっぱいになりそうだった。
ヒルゼ様はクレアの頭を今度は優しく、壊れ物に触るように撫でた。
クレアは下を向いて、その優しさを受け取りながら話を聞く。
「俺はお前さんのことを知らない。だからこれが答えになるかわからないが………。お前さんは年齢や立場関係なく、俺たちが守るべき民だからだ。いい思い出としてこのフレンティアを旅立ってくれると嬉しいんだ」
「………っ、はい」
涙を流したクレアはついにヒルゼ様に背中をトントンと優しくさすられる。
クレアは優しさを受け取ることに慣れていないようで、少し居心地が悪そうにしながらも身を預けていた。
「それじゃ、周辺の警備を強化するように。商人の方にも言っとく。なんかあったらすぐに報告すること。
ルーク、お前はクレアを孤児院に預けたら俺のとこと協力して行動だ。全員返事ッ!」
「「「「はいっっ!!!」」」」
ヒルゼ様の指示を受けて、皆がまた担当場所へ戻っていく。
俺はヒルゼ様に任されたクレアを孤児院まで連れて行くことにする。
クレアは泣き疲れたのか眠ってしまい、俺の背中ですうすうと寝息を立てている。
(さすがに抱っこしたらまた怒られそうだからなぁ)
俺はくすりと笑いながら孤児院へ悠長に向かって行く。
このとき、俺はクレアにフードを被せておけばよかったと後で後悔することになる。
確かに、クレアが15歳でこの実力なのは疑う。
筆頭魔法使いが誉めるほどの実力を持ち合わせている当の本人は、これくらいは当たり前だと言うくらいにけろりとしていた。
ヒルゼ様も感嘆して、拍手をした。
「まさかここまでだとは……。俺が魔法をわからないことに気づいて、わざと水が集まっていくのを見せたんだろう?」
「……はい。さすがにわかりましたか」
「クレア、お前さんには驚かされたよ」
ヒルゼ様がクレアの頭をわしわしと撫でると、クレアは一瞬目を見開いたが、嬉しそうに撫でられる。
それまで真面目な顔で笑いもしなかったクレアの年相応の顔が見えて、その場にいた全員が言いかけていたことを胸にしまった。
「ひとついいですか」
「なんだ?」
クレアは撫でられてぼさぼさになった髪を少しずつ直しながらヒルゼ様に口を開いた。
ヒルゼ様はクレアを相当気に入ったようで、穏やかな雰囲気でクレアと目線を合わせた。
しかし、その雰囲気はすぐに崩れる。
「今見せたとおり、私は杖がなくても魔法が使えます。私がテッドに狙われているなら、私が囮になって誘き寄せれば簡単に解決できると思います。だから、私を____」
「ダメだ」
ヒルゼ様はクレアの提案を遮るように一蹴した。
クレアは傷ついた顔を見せた。
クレアの言うことは納得できる。
確かにテッドがクレアを狙っているなら、クレアが1人のところを誘き出してクレアに制圧してもらうのがいいかもしれない。
この場にいる誰もがそう思って言うのを止めた。
ヒルゼ様に撫でられているときの嬉しそうな顔を見て、クレアを巻き込んで、彼女の笑顔を失いたくないと思ってしまったのだ。
その決意を破るように提案を持ちかけたクレアはそんなことを知る由もなく、ヒルゼ様に詰め寄る。
「それは…私が15歳だからですか?
私が頼りないからですか?
私には任せたくないからですか?
私が……いらない子だからですか?」
声が震えている。あの必死な表情を、俺は昨日見た気がする。
孤児院で留守番を頼んだときも、今と似たような表情だった。
クレアのあの言葉は多分、今思いついた理由ではない。
きっとこれまで何度も言われてきた言葉なのだろう。
問いかけるクレアの肩に手を置いて、ヒルゼ様はなだめるように優しい声音で語りかけた。
「クレア、お前さんに任せたいとこの場のみんなが思ってるだろうな。でもな、俺たちはお前さんのことを危険に晒してまで協力してほしくはない。わかってくれるか?」
「…………わからないです。……どうして、こんなに大事にしくれるのか」
本当にわからないという顔だった。今まで、どんな環境にいたら自分が大事じゃないと思えるのだろう。
胸がいっぱいになりそうだった。
ヒルゼ様はクレアの頭を今度は優しく、壊れ物に触るように撫でた。
クレアは下を向いて、その優しさを受け取りながら話を聞く。
「俺はお前さんのことを知らない。だからこれが答えになるかわからないが………。お前さんは年齢や立場関係なく、俺たちが守るべき民だからだ。いい思い出としてこのフレンティアを旅立ってくれると嬉しいんだ」
「………っ、はい」
涙を流したクレアはついにヒルゼ様に背中をトントンと優しくさすられる。
クレアは優しさを受け取ることに慣れていないようで、少し居心地が悪そうにしながらも身を預けていた。
「それじゃ、周辺の警備を強化するように。商人の方にも言っとく。なんかあったらすぐに報告すること。
ルーク、お前はクレアを孤児院に預けたら俺のとこと協力して行動だ。全員返事ッ!」
「「「「はいっっ!!!」」」」
ヒルゼ様の指示を受けて、皆がまた担当場所へ戻っていく。
俺はヒルゼ様に任されたクレアを孤児院まで連れて行くことにする。
クレアは泣き疲れたのか眠ってしまい、俺の背中ですうすうと寝息を立てている。
(さすがに抱っこしたらまた怒られそうだからなぁ)
俺はくすりと笑いながら孤児院へ悠長に向かって行く。
このとき、俺はクレアにフードを被せておけばよかったと後で後悔することになる。
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