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閑話 西に向かって
吹雪の宿で親睦会 1
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「…………はっ、くしゅん」
冷たい空気に鼻が震え、クレアは起き抜けでくしゃみをした。
夏でも寒い北方で2年過ごしていたクレアだが、やはり、寒いものは寒いようだ。
昨日の連絡で涙を流しすぎたせいで目が相当腫れると危惧していたが、寒さが氷嚢代わりになったのか、あまり腫れていなかった。
クレアは体を起こして鼻をすすり、すぐに着替えた。
着替えて朝ごはんを食べるために部屋を出ると、入り口の方が騒がしくなっていた。
クレアは気になって入り口の方まで行って、その理由を察した。
昨日に引き続き、酷い吹雪で外は視界が悪く、道には雪が好き放題に積もっているせいでどこが道かすらもわからない。
下手をすれば、今日の吹雪でクレアの身長を抜かすほどの積雪が見込まれそうだ。
思わぬ足止めを食らったのはクレアだけでなく、この馬宿に泊まる皆がそうだった。
「困ったなぁ、例年だとこんなに早く吹雪かねえのに」
「ここ、すぐ近くに山があって降り出したらキリがないんだろう?こんだけの雪がこれから先ずっと降るのかい?」
「何にしたって、ここで泊まるしかないだろうな」
「誰も遭難してないといいが……」
口々に不安をつぶやく宿泊客。
一向に雪は降り続ける。
流石に天候まではどうにもならないのか、クレアも思案している。
ぐうぅぅぅぅぅ~………
そんな中、誰かの腹の虫が大きく鳴いて、話をしていた宿泊客たちは口を閉じて音のした方を見る。
皆がクレアの………後ろの方へ目を向けている。
クレアも合わせて後ろを向くと、すらりとした長身の男が立っていた。
男は顔を赤くして、自身の三つ編みした髪を触りながら口を開いた。
「すまないね……その、昨日の夜を食べそびれてお腹が空いているんだよね…………」
男の腹の虫は、不安だった宿泊客に笑顔を宿した。
「んー、生き返るねぇ」
ぷはぁっと、ほかほかに温まったスープの汁を飲み干してご満悦といった顔で男はお腹をさすった。
クレアはこの男、もといチャトゥラとその仲間と同席して朝ごはんを食べていた。
チャトゥラは昨日荷台に乗せてもらう約束をした商人の1人で、東方出身の人だそうだ。
赤い服にはところどころに、角ばって渦を巻いた刺繍があしらわれている。
寒いのに服一着で薄着だと思ったが、どうやら魔法でずっと温かいらしい。
黒髪黒目で、少し吊り目。目の縁には赤い染料で模様をつけている。
言葉はまだ習いたてなのか、片言で、少し独特な訛りを残して語尾が「ね」なのが気になる。
見た目的には高貴な人だ。
先ほどの腹の虫の後、チャトゥラと一緒にやってきた仲間が昨日荷台を直したクレアだと気づいたため、同席することになったのだが。
「へぇ、クレアちゃんはルクレイシアに行くんだね。1人で大変じゃないかい?」
「クレアちゃんは昨日荷台を直してくれた魔法使いだろう?他に使える魔法はあるのかな?」
「おっ、これうまい!クレアちゃんも食べてみないか?」
「…………えっと」
質問は多いし、とにかくたくさん食べる。
彼らは本当に朝食なのかと疑うほどの量をたいらげ続けている。
対してクレアは、でてきた朝食──両手サイズの少しかたいパンとお椀いっぱいのクリームスープ──を食べ切るのでやっとだ。
「こらこら、クレアちゃん困っちゃってるね」
返答に困っていたクレアを見かねてか、チャトゥラが仲間の質問を止めてくれた。
チャトゥラの言葉で仲間は「おっと、そいつはすまんなぁ!」と言って笑いながらまた食べ始めた。
質問が止んでひと息していると、視線を感じた。
向かいに座るチャトゥラがクレアを見ている。
クレアもチャトゥラを見ると、チャトゥラは袖で口もとを隠して「ふ、ふ、は」と笑った。
結構個性的だ。
袖で口もとを隠して笑うのも上品で少し見惚れていると、チャトゥラは自分の吊り目を細めてクレアに笑いかけた。
「うちの者がすまないね。皆いいやつなんだけどね、おしゃべりが好きなんだね」
「そうですね、とても元気で……」
「ふ、はは。気を遣わなくていいからね」
「あっ、ありがとうございます」
クレアはあまり難しくならない言葉でチャトゥラと話していたが、気づかれてしまったようだった。
話が終わったと思って、残りの朝食を食べ切ろうとするが、なおもチャトゥラが見てくるのでクレアは少しいたたまれなくなっていた。
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
クレアが朝食を食べ終えたのを見て、チャトゥラの合図で皆でそう言うと、他の席に座っていた宿泊客がにこにこしながらクレアたちを見ていた。
お皿を片付けて自室に戻ろうとしていると、チャトゥラに呼び止められ、ロビーに連れて行かされた。
ロビーには、先ほど食事を一緒にした仲間の商人もいた。
「親睦を深めるとしようね」
チャトゥラはにこりとクレアに向かって笑った。
冷たい空気に鼻が震え、クレアは起き抜けでくしゃみをした。
夏でも寒い北方で2年過ごしていたクレアだが、やはり、寒いものは寒いようだ。
昨日の連絡で涙を流しすぎたせいで目が相当腫れると危惧していたが、寒さが氷嚢代わりになったのか、あまり腫れていなかった。
クレアは体を起こして鼻をすすり、すぐに着替えた。
着替えて朝ごはんを食べるために部屋を出ると、入り口の方が騒がしくなっていた。
クレアは気になって入り口の方まで行って、その理由を察した。
昨日に引き続き、酷い吹雪で外は視界が悪く、道には雪が好き放題に積もっているせいでどこが道かすらもわからない。
下手をすれば、今日の吹雪でクレアの身長を抜かすほどの積雪が見込まれそうだ。
思わぬ足止めを食らったのはクレアだけでなく、この馬宿に泊まる皆がそうだった。
「困ったなぁ、例年だとこんなに早く吹雪かねえのに」
「ここ、すぐ近くに山があって降り出したらキリがないんだろう?こんだけの雪がこれから先ずっと降るのかい?」
「何にしたって、ここで泊まるしかないだろうな」
「誰も遭難してないといいが……」
口々に不安をつぶやく宿泊客。
一向に雪は降り続ける。
流石に天候まではどうにもならないのか、クレアも思案している。
ぐうぅぅぅぅぅ~………
そんな中、誰かの腹の虫が大きく鳴いて、話をしていた宿泊客たちは口を閉じて音のした方を見る。
皆がクレアの………後ろの方へ目を向けている。
クレアも合わせて後ろを向くと、すらりとした長身の男が立っていた。
男は顔を赤くして、自身の三つ編みした髪を触りながら口を開いた。
「すまないね……その、昨日の夜を食べそびれてお腹が空いているんだよね…………」
男の腹の虫は、不安だった宿泊客に笑顔を宿した。
「んー、生き返るねぇ」
ぷはぁっと、ほかほかに温まったスープの汁を飲み干してご満悦といった顔で男はお腹をさすった。
クレアはこの男、もといチャトゥラとその仲間と同席して朝ごはんを食べていた。
チャトゥラは昨日荷台に乗せてもらう約束をした商人の1人で、東方出身の人だそうだ。
赤い服にはところどころに、角ばって渦を巻いた刺繍があしらわれている。
寒いのに服一着で薄着だと思ったが、どうやら魔法でずっと温かいらしい。
黒髪黒目で、少し吊り目。目の縁には赤い染料で模様をつけている。
言葉はまだ習いたてなのか、片言で、少し独特な訛りを残して語尾が「ね」なのが気になる。
見た目的には高貴な人だ。
先ほどの腹の虫の後、チャトゥラと一緒にやってきた仲間が昨日荷台を直したクレアだと気づいたため、同席することになったのだが。
「へぇ、クレアちゃんはルクレイシアに行くんだね。1人で大変じゃないかい?」
「クレアちゃんは昨日荷台を直してくれた魔法使いだろう?他に使える魔法はあるのかな?」
「おっ、これうまい!クレアちゃんも食べてみないか?」
「…………えっと」
質問は多いし、とにかくたくさん食べる。
彼らは本当に朝食なのかと疑うほどの量をたいらげ続けている。
対してクレアは、でてきた朝食──両手サイズの少しかたいパンとお椀いっぱいのクリームスープ──を食べ切るのでやっとだ。
「こらこら、クレアちゃん困っちゃってるね」
返答に困っていたクレアを見かねてか、チャトゥラが仲間の質問を止めてくれた。
チャトゥラの言葉で仲間は「おっと、そいつはすまんなぁ!」と言って笑いながらまた食べ始めた。
質問が止んでひと息していると、視線を感じた。
向かいに座るチャトゥラがクレアを見ている。
クレアもチャトゥラを見ると、チャトゥラは袖で口もとを隠して「ふ、ふ、は」と笑った。
結構個性的だ。
袖で口もとを隠して笑うのも上品で少し見惚れていると、チャトゥラは自分の吊り目を細めてクレアに笑いかけた。
「うちの者がすまないね。皆いいやつなんだけどね、おしゃべりが好きなんだね」
「そうですね、とても元気で……」
「ふ、はは。気を遣わなくていいからね」
「あっ、ありがとうございます」
クレアはあまり難しくならない言葉でチャトゥラと話していたが、気づかれてしまったようだった。
話が終わったと思って、残りの朝食を食べ切ろうとするが、なおもチャトゥラが見てくるのでクレアは少しいたたまれなくなっていた。
「「「「「ごちそうさまでした」」」」」
クレアが朝食を食べ終えたのを見て、チャトゥラの合図で皆でそう言うと、他の席に座っていた宿泊客がにこにこしながらクレアたちを見ていた。
お皿を片付けて自室に戻ろうとしていると、チャトゥラに呼び止められ、ロビーに連れて行かされた。
ロビーには、先ほど食事を一緒にした仲間の商人もいた。
「親睦を深めるとしようね」
チャトゥラはにこりとクレアに向かって笑った。
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