22 / 24
第3章 稼ぎ頭ということで
22 装い新たに
しおりを挟むオリオンとの再会の日まで、気が付けばあと2日に迫っていた。
今私たちはW地区にいる。W地区は驚くほどに人里の規模が大きい。関所を通った時から家やお店や露店が続いていて、私とブラウンは思わず息を飲んだ。アキ曰く、この人里は『街』というらしい。
トレーニングの成果もあり、アキの数値はトータル数値Vからトータル数値Uに上がった。
ブラウンの分析曰く、トータル数値は各数値の値を足して7で割った平均値。身体能力だけで見れば【X3からU6】という上がりっぷり。短期間にしてはハイペースで上がったと思うけど、平均値として換算すると伸びはイマイチだ。
でもそれも、今日で解消されるかもしれない。
今日はW地区で、魅力数値を上げる予定。この小汚い身なりとも今日でおさらばだ。
「W地区まで来ると私とブラウンの原始的な格好もだいぶ目立ってくるもんね」
緑豊かだったX地区までならそう目立たないけど、W地区はみんな当初のアキのような戦闘とは無縁の服装だし、ましてや私たちのように泥々に汚れていたりしない。
「髪もナイフで切ってたしね。
カラーのその布も、きちんとした眼帯に変えようよ」
「この布も割と臭うしねー」
アキも着替えがないせいで、いつのまにか私たちと同様にかなり薄汚れていた。荒地の草のように伸びた髭に触りながら、アキも頷く。
「経験が伸びたかわりに魅力が減ってたなら、ここで魅力を上げることができたらトータル数値も伸びてくれそうだよね」
そう言うアキの腕には、薄っすらと筋が浮かんでる。トレーニング前にはそんな筋すらまるでない細っこい腕だったのに‥。
カラーメゾットで筋力を高め、ブラウンメゾットで動体視力や体幹を鍛えていたアキ。木を登るにしても手足を掛ける場所を選ぶのが格段に上手くなって、X地区最終日には大きな木のてっぺんまで登ることができるようになった。
(でもそこから降りることはできなくて、猩々を呼び出して降ろしてもらったんだけど)
「あ、ここ!この床屋さん俺行きつけだったんだよねぇ」
たかだか数週間前までこのW地区にいたというのに、アキは心底懐かしそうに語った。
「じゃあここにしようか」
アキもその方が嬉しいだろうし、私にとっては人生初の床屋さん!勝手が分からないからこそ、アキの行きつけならば安心だ。
「‥大丈夫かなぁ」
ブラウンが少し心配そうにこめかみを掻く。
「何が?」
「うーん、いや、考えすぎかな。気にしないで」
ブラウンの態度が気になったものの、私たちはアキの行きつけである床屋さんに足を踏み入れた。
♦︎
床屋で切られた髪は、驚くほどに『それなり』に見えた。それまでの私は、笑ってしまうほどの散切り頭だったのだから、この変化は革命的だ。
おまけに、防具と洋服どちらも取り扱っているお店が近くの露店にあって、そこで3人それぞれ服と防具を見繕った。
もちろん私の武器の双剣なんかは今まで同様使うけど、サイズが全然違うものを無理やり着ていた上着なんかとはおさらばだ。
私はもう見るもの全てが新鮮で、正直隣の店に並んだリボンが付いたシャツなんかにも胸がときめいてしまったんだけど、仮にも男として生きているからそれは買えなかった。
初心者冒険者向けの、タイトな上下セットアップの伸縮性のある黒い服。おまけにさらにその上から紺色のマントを羽織った。アキ曰く、W地区からは兵士や剣士以外が武器を持ち歩く際は、こうしてマントなどで隠すのがマナーらしい。
背中に背負っている双剣を取り出すのには厄介極まりないマナーだけど、こうしてマントを被っていれば猩々やカーバンクルが眠る『玉』も隠しやすい。
‥まぁ今のところその玉は肩から掛けてるバッグに突っ込んでるんだけど。今後更に玉が増えていってバッグに入り切らなくなってしまった際に、いい目隠しになるかもしれない。
ともかく、よほど今までの私たちが小汚かったらしい。魅力数値は面白いくらいに増えてくれた。
《最新のステータス》
【カラー】
身体D23、頭脳V5、財力Z1、経験P11、器用さO12、魅力P11、魔力ー トータルR
【ブラウン】
身体S8、頭脳A26、財力T7、経験R9、器用さD23、魅力P11、魔力U6 トータルO
【アキ】
身体U6、頭脳P 11、財力X3、経験T7、器用さR9、魅力Q10、魔力Z1 トータルU
店の鏡に映る私は、白金色の整えられたショートカットに黒の眼帯‥そして真新しい紺のマントを身に付けている。
‥‥なにこれ‥すっっっごく冒険者っぽい。
「うん、冒険者っぽいよ」
口にしてないはずなのに、ブラウンが私の心情を見透かしたようにそんなことを言う。
小っ恥ずかしくなった私は思わずブラウンを睨み付けた。
「‥なんでブラウンとアキ、2人揃って似たような格好してるわけ?」
ブラウンも一応武器として短剣を持ち歩いているから、焦げ茶色のマントは羽織っている。
けど、そのマントは斜めがけにされているような小洒落たもので、そのマントの下には薄茶色のチノパンとミルクティー色のブーツを着用している。
今まで目元を隠すように巻いていたバンダナは、クリーム色のものに進化した。ぱっと見、ここらを行き交う商人だ。
アキはバンダナとマントをしていないだけで、多少の色合いは違うもののブラウンと対して変わらない。ごくごく平凡な町息子といったところ。ちなみにアキはまだ武器は所持してない。
これからも旅は続いていくんだから、私みたいな『ザ・戦います』って服装の方がいいと思うんだけど。
0
あなたにおすすめの小説
やりません。やれないんです。
朝山みどり
恋愛
国の制度変更により、薬の調合・販売には免許が必要となり、長年村で薬師をしてきた祖母は年齢制限のため資格を取得できず、薬師を名乗れなくなった。経験や評判は評価されず、「紙(免許)」がすべてになった。
ダイアナは祖母の店を再開するため、講習と試験を受け、町のポイード薬局で半年間の住み込み見習いを始める。講習では祖母の経験が理論として体系化されていることを学び、学問と実践の両立を実感する。
同室となったマリアと協力しながら、厳格な規格・衛生管理のもとで調薬を学ぶ日々。祖母の知恵と新しい制度の知識を胸に、半年後に胸を張って帰ることを楽しみ過ごしていたが……
他のサイトでも公開しています。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています
きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる