サイハテの召喚士

茶歩

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第3章 稼ぎ頭ということで

22 装い新たに

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 オリオンとの再会の日まで、気が付けばあと2日に迫っていた。

 今私たちはW地区にいる。W地区は驚くほどに人里の規模が大きい。関所を通った時から家やお店や露店が続いていて、私とブラウンは思わず息を飲んだ。アキ曰く、この人里は『街』というらしい。


 トレーニングの成果もあり、アキの数値はトータル数値Vからトータル数値Uに上がった。


 ブラウンの分析曰く、トータル数値は各数値の値を足して7で割った平均値。身体能力だけで見れば【X3からU6】という上がりっぷり。短期間にしてはハイペースで上がったと思うけど、平均値として換算すると伸びはイマイチだ。
 でもそれも、今日で解消されるかもしれない。


 今日はW地区で、魅力数値を上げる予定。この小汚い身なりとも今日でおさらばだ。


「W地区まで来ると私とブラウンの原始的な格好もだいぶ目立ってくるもんね」


 緑豊かだったX地区までならそう目立たないけど、W地区はみんな当初のアキのような戦闘とは無縁の服装だし、ましてや私たちのように泥々に汚れていたりしない。


「髪もナイフで切ってたしね。
カラーのその布も、きちんとした眼帯に変えようよ」

「この布も割と臭うしねー」


 アキも着替えがないせいで、いつのまにか私たちと同様にかなり薄汚れていた。荒地の草のように伸びた髭に触りながら、アキも頷く。


「経験が伸びたかわりに魅力が減ってたなら、ここで魅力を上げることができたらトータル数値も伸びてくれそうだよね」


 そう言うアキの腕には、薄っすらと筋が浮かんでる。トレーニング前にはそんな筋すらまるでない細っこい腕だったのに‥。

 カラーメゾットで筋力を高め、ブラウンメゾットで動体視力や体幹を鍛えていたアキ。木を登るにしても手足を掛ける場所を選ぶのが格段に上手くなって、X地区最終日には大きな木のてっぺんまで登ることができるようになった。
(でもそこから降りることはできなくて、猩々を呼び出して降ろしてもらったんだけど)


「あ、ここ!この床屋さん俺行きつけだったんだよねぇ」


 たかだか数週間前までこのW地区にいたというのに、アキは心底懐かしそうに語った。


「じゃあここにしようか」


 アキもその方が嬉しいだろうし、私にとっては人生初の床屋さん!勝手が分からないからこそ、アキの行きつけならば安心だ。


「‥大丈夫かなぁ」


 ブラウンが少し心配そうにこめかみを掻く。


「何が?」


「うーん、いや、考えすぎかな。気にしないで」



 ブラウンの態度が気になったものの、私たちはアキの行きつけである床屋さんに足を踏み入れた。



♦︎




 床屋で切られた髪は、驚くほどに『それなり』に見えた。それまでの私は、笑ってしまうほどの散切り頭だったのだから、この変化は革命的だ。

 おまけに、防具と洋服どちらも取り扱っているお店が近くの露店にあって、そこで3人それぞれ服と防具を見繕った。

 もちろん私の武器の双剣なんかは今まで同様使うけど、サイズが全然違うものを無理やり着ていた上着なんかとはおさらばだ。

 私はもう見るもの全てが新鮮で、正直隣の店に並んだリボンが付いたシャツなんかにも胸がときめいてしまったんだけど、仮にも男として生きているからそれは買えなかった。


 初心者冒険者向けの、タイトな上下セットアップの伸縮性のある黒い服。おまけにさらにその上から紺色のマントを羽織った。アキ曰く、W地区からは兵士や剣士以外が武器を持ち歩く際は、こうしてマントなどで隠すのがマナーらしい。

 背中に背負っている双剣を取り出すのには厄介極まりないマナーだけど、こうしてマントを被っていれば猩々やカーバンクルが眠る『玉』も隠しやすい。
‥まぁ今のところその玉は肩から掛けてるバッグに突っ込んでるんだけど。今後更に玉が増えていってバッグに入り切らなくなってしまった際に、いい目隠しになるかもしれない。


 ともかく、よほど今までの私たちが小汚かったらしい。魅力数値は面白いくらいに増えてくれた。



 《最新のステータス》
【カラー】
身体D23、頭脳V5、財力Z1、経験P11、器用さO12、魅力P11、魔力ー  トータルR

【ブラウン】
身体S8、頭脳A26、財力T7、経験R9、器用さD23、魅力P11、魔力U6  トータルO

【アキ】
身体U6、頭脳P 11、財力X3、経験T7、器用さR9、魅力Q10、魔力Z1  トータルU




 店の鏡に映る私は、白金色の整えられたショートカットに黒の眼帯‥そして真新しい紺のマントを身に付けている。

‥‥なにこれ‥すっっっごく冒険者っぽい。



「うん、冒険者っぽいよ」


 口にしてないはずなのに、ブラウンが私の心情を見透かしたようにそんなことを言う。

 小っ恥ずかしくなった私は思わずブラウンを睨み付けた。


「‥なんでブラウンとアキ、2人揃って似たような格好してるわけ?」


 ブラウンも一応武器として短剣を持ち歩いているから、焦げ茶色のマントは羽織っている。
 けど、そのマントは斜めがけにされているような小洒落たもので、そのマントの下には薄茶色のチノパンとミルクティー色のブーツを着用している。
 今まで目元を隠すように巻いていたバンダナは、クリーム色のものに進化した。ぱっと見、ここらを行き交う商人だ。

 アキはバンダナとマントをしていないだけで、多少の色合いは違うもののブラウンと対して変わらない。ごくごく平凡な町息子といったところ。ちなみにアキはまだ武器は所持してない。


 これからも旅は続いていくんだから、私みたいな『ザ・戦います』って服装の方がいいと思うんだけど。





 
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