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第1章『ロリ顔の女好きという扱い』
第5話 兄弟設定
しおりを挟むわたし史上1番贅沢な暮らしを送ることができるなんて、なんて幸せなのかしら。
ただ、問題は女であることを隠し通さないといけないということね。
でも女だと言っていたのに、まったく信じてくれなかったのはこの学園の教師。そしてあの嫌味で忌々しい玉のせい。
正直女だとバレたところで、わたしはまったく悪くない。
だけど、開き直って内側からロンの命を狙うのであれば、これ以上目立つのは厳禁よね。
ロンがどれだけ将来有望な出来る男かはわからないけど、わたしはもう何年も暗殺者教育を受けてきた暗殺者の卵。それに、持ち前の凄まじい運動神経もある。
あっという間に任務達成できちゃいそうだわ。
でも、並みの人間らしい暮らしが望めないダンバルに早々に戻るより、空気が綺麗なロザリオでVIP待遇を受けてる方が正直幸せ。
すこーし、ほんのすこーし、この暮らしを楽しんでから任務遂行したっていいわよね。
任務に期限は決められてないし。
ジロはロンの暗殺だけでなく、情報収集も命じられてたから、わたしも情報収集と銘打てば咎められないわね、きっと。
そうと決まれば、まぁまずはお風呂にでも入りましょうかね。
わたしは、旅装束のマントを脱ぎ捨てた。
中に着ていたシャツのボタンを外そうとしたところで、並々ならぬ殺気を感じて窓の外に目をやった。
あ、ジロだ。
ジロが木の上から訴えかける視線を向けている。
良かった、やっぱり入学資格をゲットして潜入できていたのね。
窓を開けた途端、驚異のジャンプ力でわたしの部屋に入り込んできた。
「おまえさっ!アホかよっ!!」
炎のような赤い瞳が、ジロの怒りのボルテージが最高潮なのだと教えてくれた。
「しょうがないじゃないの。
だって女だって信じてくれなかったのよ?!」
「考え無しにニノ玉触っただろ?!」
ジロったら、見てたのね。
「だって完全個室なんだもの。
潜入しちゃったからにはバレない方いいでしょ?」
「小柄で小汚いスケべな男がニノ玉引っ叩いたって大騒ぎになってるんだぞ!目立ってどうするんだよ」
まぁ、それは‥うん。
確かに注目は浴びてしまっていたけど。
「だってあの玉酷いじゃない!
人のこと男扱いして!あの玉のせいでロザリオ女学院に入れなかったのよ?!」
わたしが噛み付くように反抗すると、ジロは心の底からの溜息をついた。
「あのなぁ。
ここは竜騎士の卵のための学院。武術に長けた学校なんだぞ。俺とおまえは、戦い方がそっくりだろ?絶対にバレちゃうんだよ、俺とおまえが身内だって」
誰しもが、体の動かし方に一定の特徴があったり、得意な戦法というものがある。
わたしとジロは、暗殺者に必要な体術や戦闘術をマスターしている。剣士や格闘技あがりの人たちとは、体の使い方はまるで違う。
武術大会でもあった日には、わたしたちが同郷だということはすぐにわかるでしょうね。
もちろん意識的に暗殺者教育あがりだとバレないように戦うことはできるけど、ここは腕に自信がある人たちが集う場所。
ふとした時に、癖が出てしまうかもしれないし、それを見抜ける人達もきっといるもの。
「ジロ、もう受付済ませたの?」
「まだだよ」
「じゃあ、ひとつ作戦があるわ」
わたしは、わたしが『リュカ・ロベール』になったことを伝えた。そして、フォードの住所を伝えて暗記させる。
「幸いにも、わたしたちの髪色はダンバル特有の闇色じゃないわ。それに、入学試験に突破できた時点で闇の息がかかってる人間だとは誰も思わないわよ!
白金のわたしと、真っ赤なジロ。わたしたちは、腹違いの兄弟ということにすればいいじゃない!」
「おま‥どこに俺らが兄弟だって信じる奴がいるんだよ‥」
「それぞれ母と2人暮らしをしていたわたしたちは、不幸にも母を失くして、物心がつく前にフォードの辺境の地に住んでいた父に引き取られるの。
父に武術を教え込まれたわたしたちは、2人ともそっくりな戦い方をするのよ!どう?」
「んー‥‥‥はぁ。仕方ないな、そうするか‥」
「そしてね、もしも、もしもよ。
ロザリオ女学院の方には『リサ・ロベール』が入学することになってた。届け出をしている住所も同じよ。
もしも誰かにリサ・ロベールのことを聞かれたら、その子も腹違いの妹にすればいいわ。どんなお父さんなのって感じだけどね。リサ・ロベールは度胸がなくてロザリオまで来れなかったってことにすればいいわ」
「おまえ、よくそんなぺらぺらと物語を作れるな‥」
「だってダンバルじゃあ妄想に明け暮れるくらいしか癒しがなかったもの」
「ってかそんなに頭の回転早いならもうちょい上手くやれよな‥」
ジロが盛大にため息を吐く。
まぁ、ちょっとどころかかなり予想外な展開になっちゃって計画倒れもいいところだけど、正直わたしも怒りに身を任せちゃったところあるけど、でもわたしよりもあの玉が悪い。
「‥ジロだけじゃなくてわたしまで入学できるなんて、みんなあの玉を信じ込みすぎよね。警備薄すぎると思わない?ダンバルの人たち幾らでも入り込めちゃうわ」
「んー、まぁな。もしかしたらあの玉もダンバルがなんか手を加えてたり‥は無いか」
「ないわね。わたしたちは、幾らでも代わりがいるもの。ちょっと成績が良くて、ロザリオに馴染みやすそうな明るい髪だったから選ばれたようなものだわ。そんなわたしたちのために、玉を弄るような目立つことしないと思うわ。特にニノ玉なんかは門の内側にあるしね。‥‥ジロはニノ玉触らなかったの?」
「いや、さすがに肉のことだけ考えて突破できるほど甘くねぇかなって思ったんだよ。
リサの後に続いてた男子生徒たち本気で死にかけてたし」
うーん、でもわたしが通れちゃったんだから、壊れてると思うんだけどなぁ。
「まぁ、ジロは集団部屋でもなんとかなるわよね。刻印さえ見られないようにすれば。あ、あと、リサはダメよ!リュカだからね?」
「あ、あぁ。おまえもオネエ口調気を付けろよ」
太ももの内側、股の付け根。
そんな際どいところにわたしたちはダンバルの刻印がある。コードネームが焼き付けられているの。
乙女の肌に、まったくもって酷いことするわよね。
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