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第35話
しおりを挟む魔力が篭められていたあの石はメルヴェンが一度魔法を唱えると元の灰色に戻った。つまり、魔力を使い果たしたということだ。
オリヴァーさんとギルさんは実証された新たな可能性に嬉しそうな表情を浮かべているけど、私の眉間にはシワが寄っていった。
「不服なのか?姉ちゃんよ」
オリヴァーさんの言葉に小さく頷いた。
だってそうでしょう‥?拳に満たないサイズの石はあれっぽっちの魔力を注入しただけでヒビが入った。キャパシティぎりぎりがあの魔力量だったのだ。
それなのに、一回使えばただの石に戻ってしまう。これじゃあいくら石ころがあっても足りないし、何十個も石を持ち歩いてもらうわけにもいかない。
なんて言えば伝わるかな‥
「‥‥もっと効率が良い方法があると思うんです‥」
私がそう言うと、ギルさんが小さく頷いた。
「まぁ確かに今のままだと効率は悪いな」
「ちょっと試してみてもいいですか?」
「「??」」
うまく出来るかなんてわからないけど‥
石に魔力を注ぎ篭めたということは魔力を具現化できたということ。それなら、わざわざ石に魔力を篭めずとも‥魔力を結晶化させた魔法石ができるんじゃ‥?
ーーー私の魔力を結晶化させてください‥
魔法陣を通してそう願うと、私の手のひらに青白い光が生まれて眩く光輝いた。直視できないほどに眩しいそれは、やがて透き通る青い石へと変わった。
途端にオリヴァーさんが数歩下がり、信じられないといったように目を丸くさせた。
「い、1万‥1万マナもあるぞ‥!!」
魔法石の大きさは指2本丸めた程の大きさ。それで1万マナの魔力を宿しているなら、願ったり叶ったりだ。
「‥これで有効活用できます‥!」
「‥‥体の負担は?」
ギルさんの言葉に私は首を横に振った。
「全くありません」
私のその言葉にギルさんは安堵の表情を浮かべる。
魔力は時間が経ったり眠ったりすると回復する。つまり、時間と体力が許す限り魔法石を生み出せるのだ。
私の魔力値が580万を優に超える。つまり単純計算で1万マナの魔法石を1日に580個生み出せるということ。
「本当、規格外な姉ちゃんだな」
「これが通用するなら盾や剣にアイナの力を込めて兵力を増強することもできるな」
「あー、どうしましょう!ワクワクしてきました」
むしろどうして今まで思いつかなかったんだろう。
過ぎ去りし日々は戻らないから、後悔したって仕方ないけど‥
この魔力をルーン村の人たちに配ることができれば、日々の様々な労働を魔力で賄えるうえに圧倒的な戦力を生み出すことができるはずだ。
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