魔法使いと魔の手鏡〜馬鹿にされ続けた下級魔法使いが突然超チート級上級魔法使いになった話〜

茶歩

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第9話

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周りから、どんなに蔑まれようと、馬鹿にされようと、嫌われようと、それでも良かった。
それでも、私はカルマート家が好きだった。



「‥どのようなご用件でしょうか?」


玄関先で、お父さんが問う。
貴族バッチを付けた高級スーツを着た数人と、そのSPのようなガタイのいい男たちが、朝からカルマート家を訪れていた。

ああ、やっぱり。

許されなかったのか。‥そりゃあそうか。
だって相手は貴族。しかも、領主の息子。そして、私たちはあのカルマート家。




異常なほどに静まり返ったリビング。
古時計の音だけが響く。

お母さんと私とレベッカはただ静かに、玄関から聞こえる声に耳を傾けていた。


固まる私たちに、優しく微笑みかけるお母さん。
ただ一点を、悔しそうに唇を噛みながら見つめるレベッカ。

一体、私はどんな顔をしているのだろうか。




レベッカを責めようとは思わない。
それは、微塵たりとも。

私は、なんだかんだ、カルマート家が好きだった。
もちろん周りが羨ましかった。でも、それでも、カルマート家が好きだった。
でもレベッカは違う。レベッカは、とても屈辱を感じていた。きっと、ただただ悔しい毎日を送っていたはずだ。でも、家族は好き。だから全てを否定できない。そんな葛藤を送っていた。


レベッカの気持ちを痛いほど理解できる。
だからこそ、お父さんもお母さんも私も、レベッカを責めようなんて思わない。



もしも万が一、無礼な行いをしたレベッカが何かの罪に問われたり、レベッカがこれ以上辛い思いをすることがあるのなら、私の命を賭けてレベッカを守ってあげたいと思うほどだ。



ガタガタっと玄関先で物音がする。
私は思わず立ち上がり、玄関へと向かった。

お父さんが床に突っ伏し、押さえ付けられている。



細い体のお父さんは、体格のいい人間にいとも簡単にねじ伏せられている。
ほぼほぼ魔力のないお父さんが、なんでこんなに一方的に押さえ付けられる必要があるのだろうか。少なくとも、お父さんが罵声を上げたり、反抗したりするような様子は感じられなかったのに。



「貴様らは、もうロストリアで面倒を見ることはできん」


見事に天を向く洒落た髭をこさえた、貴族の年配の男が言う。
この人たちは、ただの貴族ではなく、政治的な権力を持つような人達なのかもしれない。


「‥‥それは、この領土から出て行けということでしょうか?」


お父さんは床に押さえ付けられながら、顔色を変えずに、淡々と問いかける。


「そうとは言ってない‥が、優遇金も支給されず、人間からも嫌われてる貴様らがこのロストリア領で生きていけるとは思えない」


フン、と笑いながら、押さえ付けられているお父さんと、そこに駆け寄る私を嘲笑い、見下しながら貴族の男は言葉を続けた。



「貴様らのためにも、出て行った方が生きていけるんじゃないのか?虫のように、雑草のように這いつくばって生きていけばいい‥」


‥どうして。
どうして私たちはこんなにも‥こんなにも嫌われなくてはいけないんだ。
今までだって、這いつくばって、静かにただひっそりと生きてきたというのに。



「ふざけんな!!!」



家の奥から大きな声が聞こえた。
レベッカだ。

毎日毎日、魔法書を読み漁り、暗い納屋の中で日々何十時間も、隠れて魔法の練習をしていたレベッカ。並々ならぬ努力を重ね、他の魔法使いと同じように生きていきたいと望んでいたレベッカ。

カルマート家を恨みながらも、カルマート家を救いたくて、実を結ばない努力をただひたすらに積み重ねてきた、そんなレベッカが涙を浮かべて貴族を睨みつける。



「おやおや、威勢のいい小娘だ。
いいんですかい?止めなくて」


貴族は、高らかに笑いながら、お父さんへと問いかける。
お父さんはレベッカを制することなく、ただ黙っていた。


「立派な反逆罪だ。
ロストリアのお荷物なだけでなく、立派な罪人。
救えない馬鹿どもだな」


こんな時だけど、私は冷静に分析をしていた。
いまのレベッカの発言を反逆罪と言ったということは、元々はただのお荷物として、出ていけと言われたということ。

昨日のリュウという男との事件とは、関係なく来たのかな‥。



お母さんが、レベッカに駆け寄り、ただただレベッカに寄り添った。



お父さんは、やっと口を開くと‥



「娘はまだ未成年です。
普段からの私の発言を真似たのでしょう。この責任は、親が取るもの。どうか、娘を、そしてカルマート家をお許しください‥。追い出されても致し方ありませんが、皆の命は‥。どうか、私1人の命で‥。」


そう言って、押さえ付けられたまま、淡々と言葉を落とした。


レベッカは膝から崩れ落ち、お母さんもポロポロと涙を零していた。

私は、お父さんの近くで膝を付けたまま、何もすることができなかった。涙さえ流せず、ただただ、呆然とその状況を飲み込むことしか、できなかったのだ。



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