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第3話 美味しい設定は水面下に(1)
しおりを挟む目が覚めると、見たことのない部屋にいた。
天蓋付きのベッドで眠っていたらしい。人気がないので恐る恐るベッドから立ち上がり周囲を見渡してみる。
ここどこだろう‥
私が元々いた部屋も無駄に広めだったけど、この部屋はもっと広い。
っていうか、私どうしてここに‥
なかなか動き出してくれない脳味噌を無理矢理はたき起こしてみると、途端に左の首筋がズキズキと痛み出した。
思わず顔を顰めて首筋に手を当てると、何やら手当てがしてあるようでガーゼのようなものが貼られている。
な、なんなの。どういうことなの、これ。
手当てをしてくれているということは、私を殺すつもりではなかったということ?
いや、でも、あの吸血行為はなんだったんだろう。
レイモンド・リデルの肩書きは闇の騎士のはずだけど‥吸血鬼属性でもあったのかしら。
呑気にそんなことを考えていると、突然ドアが開いた。
バゴーンと、壁に当たって跳ね返ったドアが大きな音を鳴らす。
私は思わず肩をすくませて、その侵入者に目をやった。
「‥」
「‥」
蒼白気味な、白い肌。青みがかった黒の長めの髪。切れ長の瞳が特徴的な、端正な顔立ち。
え、誰ですか。この美少年。
ゲームに出てこなかったんですが。
この12年間でも一度も出てきてない。
しばらく見つめ合ったけど、その美少年は緊迫したような表情のまま、ド派手な登場をしたにもかかわらず私に近付こうともしてこない。
「‥‥どちらさまですか」
痺れを切らした私がそう問いかけると、美少年はハッと我に返り、それから気まずそうに頭を下げた。
「悪い、結界が貼られているかもしれないと思って、目を覚ます前に帰って来なければいけないと」
「‥‥えっと」
答えになっておりませんが!!
「‥‥?俺がわからないのか?」
「え??お知り合いですか?」
え、私こんな美少年と知り合ったことないけど。
いやそりゃあ攻略キャラ達も美少年だけどね?王子は金髪碧眼のザ・王子だし、勇者は筋肉質で茶髪で少しワイルドなザ・勇者、執事は黒髪でしっかり者でSっ気のあるザ・執事。
でもこんな引き込まれるような、少し危うい香り漂う美少年のお知り合いなんていない。というか、この世界を何度も生きていても、知り合ったことがない。
ゲームの設定上の話なんだろうけど‥
「‥‥お前を誘拐した本人だろう」
え!!じゃあもしかして!!!!
「あ、貴方がレイモンド・リデル?!」
ひゃあ。なんてこと。こんなイケメンに誘拐されていたなんて。全てのゲーム信者にこの美味しい設定を教えてあげたい!!!!!
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