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第7話 秘奥義破れたり(1)

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しばらくするとドアがノックされて、メイドのような姿の女性が現れた。
その頃には、私を呼ぶ勇者の声は聞こえなくなっていた。


女性と交代するかのように、レイが部屋を出て行く。
私の顔を見ようともしないレイに対し、私は内心苦笑いを浮かべながら、その姿を横目で追った。



「はじめまして。
私はメイドのローラです」


そう言って、ローラが頭を下げた。
下された茶色の巻き髪がふわりと揺れる。

見た目で言えば20代前半、少し冷めた瞳が特徴的だけど全体的に柔らかいイメージを受けた。


「‥ケイトです、よろしく」


私がヘラヘラっと笑みを浮かべると、ローラは私の笑みに反応することもなく、言葉を続けた。
その瞳は氷のように、なんとも冷たいものだった。


「‥あんなにも重厚な結界を張っていたくせに、どうして突然手のひらを返したのですか」


抑揚なく流れ出たその言葉は、私への不信感を物語っていた。

少なくとも、私はお客様ではないらしい。


「誰にだって気持ちの変化は有りますよ」


「‥‥私は貴女の見張り役を仰せつかってます。
不審な動きを見せた途端、貴女の身柄は拘束します」


‥そんなこと言ってるけど、私が結界を張ったりする心配とかしてないのかしら?
ローラは冷めた瞳をしているけど、大人しそうな美人さん。私をどうこうできるような力は持ってなさそうなのに。


「ご心配なく。
私のテリトリー内では、貴女は力を発揮できません」


私の考えを見透かしたかのように、ローラがそう言葉を落とした。


「え??なぜ?」


私の力を打ち消す能力?
そんなのゲーム内にもなかったけど‥って、あった!あったわ。そういえば。
自我をなくしたレイの化け物との戦いのほんの少し前、仮面を被った敵の中に、封魔のネックレスを身に付けた人がいたの。
その『封魔』は白魔法にも対応していて、私の力は無き物とされた。

つまり、きっと‥
仮面の敵はローラだったんだわ。


「ふんっ、誰がほいほい教えるものですか」


ローラが嘲笑った。
幸薄そうな美人。整ったその塩顔の美女の、人を小馬鹿にするかのような笑いはなんとも絵になるものだ。


「封魔のネックレスね?」


「なっ!!」


ローラがあんぐりと口を開けた。
というか、勝手に開いた、という方が合ってるかもしれない。


どうやら大正解だったらしい。


「な、なぜ!なぜそれを!!」


ゲームの中でも、ここぞという場面までその存在を隠していたのかな。


「あーごめんなさい。
レイにも言ったけど私、少し予知能力というか、見えてしまうタイプの人間なのよ」


「くっ!!」


ローラがギリっと奥歯を鳴らした。


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