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4-フランケンシュタインの怪物に一握の温もりを
草原、3人、独白前
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「平和だ……」
「平和だね……」
平和というには風景が寂れすぎている気もするが、あたりに敵が一切いないという点では平和といってもまぁいい。
フェイのヘリコプター(燃料過積載)に行動半径ギリギリまで送ってもらい、しかしそれでも届かなかったのでそこから徒歩、何も無い、ボロボロの自動車道がまっすぐ伸びるだけの草原をひたすら徒歩。
敵味方共に戦力が集中している地域を完全に離れた、ここにまとまった部隊は無い、適当な雑兵がたまーーに巡回している程度。戦う力を持たない村、集落にとってはそれらに見つかるだけで全滅沙汰だが。
「なーんか気味の悪い、でも真実なら戦いに役立ちそうな噂があるから探ってこい」という漠然とした命令を受けて3人はここまでやってきた。ヒナとメル、それからフェルトで3人。シオンは病院だ、内臓損傷で全治1ヶ月の宣告である。最後に見た時はなんか、「時間かかっていいから普通の治療ォォォォーーッ!!」とかやってた。
「ティーは?」
「シオン姐さんが退院するよりは早く謹慎解けるんじゃない?」
「あぁ、結局バレたの命令無視」
「そりゃ生存者連れ帰っちゃったし」
目的地まではまだかなりある、この草原のど真ん中で既に一度野宿しており、到着予定は今日の夜。事前情報によれば廃都市をそのまま使った居住区らしい、敵が少ないからできる事だ、拠点の近くで同じ事をやったら半日はもつまい。
「……え、じゃあ私らって今、脳みそ不在?」
「あぁー……出発から36時間経ってようやく気付くんだこのおバカさんはぁ……」
背負った大きなリュックサックにそれぞれライフルをくくりつけ、気だるげに話しながらとぼとぼ歩くヒナとメル。最初はもうちょっと元気だったのだが、いかんせん接敵も無く、だだっ広ーい草原をひたすら歩き続けるだけなので心も平坦になってしまうというか。
フェルトも、考えてみたらしばらく口を開けていない。
「……平和だ……」
「平和だね…………」
ふと顔を上げる、何かがぽつんと建っていた。
柱を4本打って、簡単な屋根と壁を貼っただけの小屋。腰まで高さのある草に埋もれ、壁の一面が元から無く、他も大部分が剥がれてしまっているものの、長椅子があり、雨宿りくらいはできるように見える。傍には看板があり、錆びきってしまって文字は読めず。だが何かはわかる、公共交通機関の停留所だ。AIの反乱以前は運賃を払って乗り合うタイプの輸送網が地上、海上問わず張り巡らされ、世界は今よりずっと狭い、地球の反対側に手を伸ばそうと思えば容易に届くものだったという。もしこれが生きていたら30kmも40kmも歩く必要はなかったろうに、いやせめて車輪を使う類の乗り物が満足に走れないほど荒れ果てていなければ
「フェルト」
「へぁっ…?」
などと、ぼんやり考えていたらいつの間にか、眼前にヒナの顔があった、少しばかり驚いて声が出る。心配げな表情だ、こちらが笑顔を作っても変わらず、足を止めて体ごとフェルトを向く。
「具合悪い?」
「え……ううん、大丈夫。ずっと同じ景色だから、ぼぉーっとしちゃっただけ」
「ブリーフィング終わった頃にはもうそんなだった気もするけど……」
嘘、そう、今のは嘘だ。眺めが変わり映えしないから頭が飽きているのでは、いや実際問題それも多分にあるが、根底の理由は別にある。
あまり良い思い出が無い、この先にあるのは生まれ故郷だ。今回3人が調査すべき"噂"とやらも知っている、かなり深く。
異形の怪物がAI兵器を壊して回っていて、しかもそれは人間に従っている。ごく最近、外縁部集落に住み着いた流れ者の証言である。それだけなら単なる与太話と一蹴したのだが、複数人数で話が一致し、その後も噂を知っている旅人が少なくない数いたものだから、とりあえず1部隊を偵察に派遣してみよう、と偉いさんが言い出して、丁度よくシオンの入院によりフルスペックでの戦闘行動ができなくなっていたサーティエイトが請け負う事となったのだ。戦闘を伴わない、予定のこの内容なら1人くらいいなくてもなんとかなるやろ、と、常に稼ぎ続けなければならない3人は思った訳だ。
それがまさかこの場所とは。
「大丈夫」
「…………休憩するわよ」
できるだけいつも通り笑えば、納得はしてなさそうだったがヒナはフェルトから目を離した。一足先に例の停留所へ荷物を降ろしていたメルを追い、屋根の下にリュックサック3つを並べる。ひとまず双眼鏡で辺りを見回すメル、水筒を取り出すヒナと順に眺め、椅子に着席、息を吐いた。
想像以上の気の落ちようだ、まずいかもしれない。今、切り裂き魔の如しでも現れたら。
「ヒナちゃん、グリムリーパー」
「うぇっ?」
「の残骸」
一瞬だけ緊張が走ったが、すぐ肩を落としてヒナがメルの横へ。座ったばかりのイスから離れそっちを見てみる、草むらの中に何かあった。
「ちょっとおかしな壊れ方してる、上から潰されたみたいな」
4本脚の鏡餅、サイクロプスの子分みたいなやつだ、道から少し離れた所に転がっていた。何にやられたのだろうか、砲塔がぺしゃんこになっている、飽きられた粘土細工が如く真上から何度も何度も叩かれたような潰れ方。問題はあれが油粘土ではなく縦横5mオーバーの金属の塊という点だ、ゴリラ程度では足りない、今の世の中には"ビースト"と総称されるアホみたいに巨大化したクマとかコイとかいるが、今のところ、そのような大型クリーチャーの痕跡は見つかっていない。
「足跡は?」
「あるよ、でもちょっと小さくて浅い、贔屓目に見ても3メートルかな、グリムリーパーをぺしゃんこにするにはねぇ」
筋力だけでは足りない筈、何か別のエネルギー源がなければ、例えば魔力とか。だがそれを使えるのは人間だけ、それならぺしゃんこなんて無駄な事はしない、撃つか、斬る。
「じゃあ、噂の奴?」
「かもね、写真撮ってくる、休んでて」
大体わかった、観察は十分だろう、フェルトはイスに戻った。
まだ終わっていない、やめていない。理想などとうに失っているだろうに、ただ好奇心だけで続けているのか。
「フェルト」
「ん…?」
「……いや、いいわ、今は」
やはり、駄目だ、ヒナにさえこんな事を言わせるなら今の自分はきっと酷い顔をしている。今日の夜か、明日か、その時が来たら、
きっと、止まらない。
「平和だね……」
平和というには風景が寂れすぎている気もするが、あたりに敵が一切いないという点では平和といってもまぁいい。
フェイのヘリコプター(燃料過積載)に行動半径ギリギリまで送ってもらい、しかしそれでも届かなかったのでそこから徒歩、何も無い、ボロボロの自動車道がまっすぐ伸びるだけの草原をひたすら徒歩。
敵味方共に戦力が集中している地域を完全に離れた、ここにまとまった部隊は無い、適当な雑兵がたまーーに巡回している程度。戦う力を持たない村、集落にとってはそれらに見つかるだけで全滅沙汰だが。
「なーんか気味の悪い、でも真実なら戦いに役立ちそうな噂があるから探ってこい」という漠然とした命令を受けて3人はここまでやってきた。ヒナとメル、それからフェルトで3人。シオンは病院だ、内臓損傷で全治1ヶ月の宣告である。最後に見た時はなんか、「時間かかっていいから普通の治療ォォォォーーッ!!」とかやってた。
「ティーは?」
「シオン姐さんが退院するよりは早く謹慎解けるんじゃない?」
「あぁ、結局バレたの命令無視」
「そりゃ生存者連れ帰っちゃったし」
目的地まではまだかなりある、この草原のど真ん中で既に一度野宿しており、到着予定は今日の夜。事前情報によれば廃都市をそのまま使った居住区らしい、敵が少ないからできる事だ、拠点の近くで同じ事をやったら半日はもつまい。
「……え、じゃあ私らって今、脳みそ不在?」
「あぁー……出発から36時間経ってようやく気付くんだこのおバカさんはぁ……」
背負った大きなリュックサックにそれぞれライフルをくくりつけ、気だるげに話しながらとぼとぼ歩くヒナとメル。最初はもうちょっと元気だったのだが、いかんせん接敵も無く、だだっ広ーい草原をひたすら歩き続けるだけなので心も平坦になってしまうというか。
フェルトも、考えてみたらしばらく口を開けていない。
「……平和だ……」
「平和だね…………」
ふと顔を上げる、何かがぽつんと建っていた。
柱を4本打って、簡単な屋根と壁を貼っただけの小屋。腰まで高さのある草に埋もれ、壁の一面が元から無く、他も大部分が剥がれてしまっているものの、長椅子があり、雨宿りくらいはできるように見える。傍には看板があり、錆びきってしまって文字は読めず。だが何かはわかる、公共交通機関の停留所だ。AIの反乱以前は運賃を払って乗り合うタイプの輸送網が地上、海上問わず張り巡らされ、世界は今よりずっと狭い、地球の反対側に手を伸ばそうと思えば容易に届くものだったという。もしこれが生きていたら30kmも40kmも歩く必要はなかったろうに、いやせめて車輪を使う類の乗り物が満足に走れないほど荒れ果てていなければ
「フェルト」
「へぁっ…?」
などと、ぼんやり考えていたらいつの間にか、眼前にヒナの顔があった、少しばかり驚いて声が出る。心配げな表情だ、こちらが笑顔を作っても変わらず、足を止めて体ごとフェルトを向く。
「具合悪い?」
「え……ううん、大丈夫。ずっと同じ景色だから、ぼぉーっとしちゃっただけ」
「ブリーフィング終わった頃にはもうそんなだった気もするけど……」
嘘、そう、今のは嘘だ。眺めが変わり映えしないから頭が飽きているのでは、いや実際問題それも多分にあるが、根底の理由は別にある。
あまり良い思い出が無い、この先にあるのは生まれ故郷だ。今回3人が調査すべき"噂"とやらも知っている、かなり深く。
異形の怪物がAI兵器を壊して回っていて、しかもそれは人間に従っている。ごく最近、外縁部集落に住み着いた流れ者の証言である。それだけなら単なる与太話と一蹴したのだが、複数人数で話が一致し、その後も噂を知っている旅人が少なくない数いたものだから、とりあえず1部隊を偵察に派遣してみよう、と偉いさんが言い出して、丁度よくシオンの入院によりフルスペックでの戦闘行動ができなくなっていたサーティエイトが請け負う事となったのだ。戦闘を伴わない、予定のこの内容なら1人くらいいなくてもなんとかなるやろ、と、常に稼ぎ続けなければならない3人は思った訳だ。
それがまさかこの場所とは。
「大丈夫」
「…………休憩するわよ」
できるだけいつも通り笑えば、納得はしてなさそうだったがヒナはフェルトから目を離した。一足先に例の停留所へ荷物を降ろしていたメルを追い、屋根の下にリュックサック3つを並べる。ひとまず双眼鏡で辺りを見回すメル、水筒を取り出すヒナと順に眺め、椅子に着席、息を吐いた。
想像以上の気の落ちようだ、まずいかもしれない。今、切り裂き魔の如しでも現れたら。
「ヒナちゃん、グリムリーパー」
「うぇっ?」
「の残骸」
一瞬だけ緊張が走ったが、すぐ肩を落としてヒナがメルの横へ。座ったばかりのイスから離れそっちを見てみる、草むらの中に何かあった。
「ちょっとおかしな壊れ方してる、上から潰されたみたいな」
4本脚の鏡餅、サイクロプスの子分みたいなやつだ、道から少し離れた所に転がっていた。何にやられたのだろうか、砲塔がぺしゃんこになっている、飽きられた粘土細工が如く真上から何度も何度も叩かれたような潰れ方。問題はあれが油粘土ではなく縦横5mオーバーの金属の塊という点だ、ゴリラ程度では足りない、今の世の中には"ビースト"と総称されるアホみたいに巨大化したクマとかコイとかいるが、今のところ、そのような大型クリーチャーの痕跡は見つかっていない。
「足跡は?」
「あるよ、でもちょっと小さくて浅い、贔屓目に見ても3メートルかな、グリムリーパーをぺしゃんこにするにはねぇ」
筋力だけでは足りない筈、何か別のエネルギー源がなければ、例えば魔力とか。だがそれを使えるのは人間だけ、それならぺしゃんこなんて無駄な事はしない、撃つか、斬る。
「じゃあ、噂の奴?」
「かもね、写真撮ってくる、休んでて」
大体わかった、観察は十分だろう、フェルトはイスに戻った。
まだ終わっていない、やめていない。理想などとうに失っているだろうに、ただ好奇心だけで続けているのか。
「フェルト」
「ん…?」
「……いや、いいわ、今は」
やはり、駄目だ、ヒナにさえこんな事を言わせるなら今の自分はきっと酷い顔をしている。今日の夜か、明日か、その時が来たら、
きっと、止まらない。
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