終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答

春ノ領

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5-怪盗アルセーヌと電脳の悪夢

こじれた原因現る

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 航空機格納庫、ヘリコプターをしまっておく建物である。中に入るのは2機、外には6機を停められるスペースがあり、2箇所の離着陸場ヘリパッドを備える。格納庫と言いながら実際は整備場だ、基本は野外駐機、分解の必要がある機体を中に引き込んできて修理、整備、改造を行う。
 メルが行った時はちょうどフェイの機体が定期メンテを受けている最中だった、4枚羽根のメインローターを畳んで中へ入り、消耗部品の交換や潤滑油補充、ソフトウェアチェックを行っている。

「お」

「あら」

 そこでまた5秒だけLANポートを借りて次の中継点を特定、外に出ると赤髪ツインテの高飛車女がなんか揉めていた。相手はフェイとは別のヘリコプターの持ち主、次の作戦に関して話していたらしい。
 機体左右に武器懸架腕スタブウイング着けてロケット弾ポッドを追加装備できないか、というのが彼女の要求だ、メカニックのねーちゃんコンビは目を輝かせていたが、パイロットからは拒否された。装備自体は可能だとしても大元が兵員輸送ヘリ、専門職と比べると図体がでかく動きがのろく火器管制システムを積んでいない、これで本格的な航空支援は無理があろう。「誰のか知らないけど攻撃ヘリなら1機発注がかかって今地下工廠で組み立ててまっせー」「来週には飛べるようになりまっせー」というメカニックコンビからの情報を聞いたのち、彼女は渋るのをやめパイロットに背を向けた。で、その直後メルと目が合った。

「評価が高い割に最近まったく役に立ってない308部隊の」

「褒めて欲しくてやってる訳じゃないからねぇ」

「だったら何のため?」

「お金」

「あ、そ……」

 リボン付きのワイシャツ、その上からブラウンのベスト、プリーツスカートもブラウンで、ニーハイソックスは白。かつての学校制服とやらを模しているとのこと、「なんで?」と聞いたら「いや私もよく知らないのだけれどナウなヤングにバカウケだったって聞くし……」だとか。
 そんな服装のこちらがレア中隊長代理、問題の高飛車女である。……その筈である。

「はぁ……2週間以内に大規模な戦いがあるわ、それまでには戦線復帰できるのでしょうね」

 彼女は困り果てていた、代理就任当初は「この私が来たからには心配の必要などありません! 家畜のように私に従っていればいいのです!」とかなんとか言っていたのだが、しばらく見ないうちに見る影もなくなっていた。たぶん、勝率55%の件でかなり絞られているのだろう。

「そも1人いないくらいで休まないで頂戴、あの子たち見なさいよ、1日も休まないのよ?」

「あれは仕事イコール趣味だから」

「今もあんな真剣な顔で話し込んでるし」

「えー?」

「きっと機体の性能向上について議論しているんでしょう」

 などとレアが言うメカニックねーちゃんコンビ、整備を一時中断し、こちらに体の正面を向け、確かに真剣な眼差しで何かを議論していた。普段は笑顔を絶やさない2人があんな顔をしているのだ、さぞ大事なことに違いない。
 どれそこまで言うなら、とメルは右手でヘッドギア右耳部のボタンを操作、左手で口元のマイクを捻って向けてみた。



『それには大いに同意するけどところでクーさん』

『なんだいマオさん』

『サーティエイトっているじゃん?』

『いますが?』

『時々思うんだ妹にしたいなって』

『ほう』

『でも誰にしたらいいかわかんない』

『要するにシオン氏から"アニキー!"って呼ばれてもいいし(彼女は自分が男性という妄想をしています)』

『普段ぶっきらぼうなヒナ氏に何かの拍子で赤面されてもいいし(彼女は自分が男性t(ry』

『メル氏から事あるごとにからかわれてもいいし(彼女は自分g(ry』

『フェルト氏に甘やかされてもいい(彼j(ry』

『つまりみんな違ってみんないい』

『真理ですな』

『決められないのは仕方のない事です』

『そう』

『でもよく考えた方がいいですぞ』

『どのような?』

『貴女の事だから勢いに任せて押し倒そうとするでしょう』

『それはもう』

『押し倒せるとお思いか?』

『あっ』

『力業で勝てる訳がない、なおかつ笑えない事をすると本当に笑えなくなる『特にフェルト氏は』』

『いや、いやしかし無問題、私はそういうのもやぶさかでは』



「…………本当にそう思う?」

「もちろん」

 耳ちゃんと付いてるんだろうか、メルとしては渾身のジト目を禁じ得ない。まぁ言わぬが花だ、とにかく今のは聞かなかった事にしたい。ヘッドギアの設定を戻し、レアに向き直る。高飛車女というより説教女みたいな顔だった、おそらくこれが素なのだろう、普段のは、まぁ。

「しゃっきりしなさいよ、私はもうじき元の職に戻るけれど戦いが終わる訳ではないのだから」

「えっ」

「確か今日謹慎明けのはず」

「ティーは営倉入りしたよ?」

「えっ」

「このままだと続投だよ?」

「えっっ」

 と、
 レアは目下のところ犯人最有力候補だった、中隊長代理ではなく真に中隊長となりたいから一計案じたのではないかと。
 実際はこうだ、みるみるうちに顔から血の気が引いていく。2週間以内に迫るという大規模作戦が始まった時、自分の指揮下に100名の命がある。とてつもないプレッシャーであろう、すべてうまくいっても死者ゼロなどあり得ないのだから。作戦中の犠牲はすべて自分の責任、権利は大きいが背負うものも大きく、場合によっては、部下に死んでこいと命令しなくてはならない。

「どっ…どどどどどどどどどど何をしたのあの天然アイドル!!」

「就任時の調子はどうした……」

「だってみんな褒めそやしてくるからぁ…!」

 なるほどやはりそういう事か、根っからの高飛車女ではないのだ。褒められる→ちょっと調子に乗る→もっと褒められる→さらに調子に乗る、のスパイラルか、貶められる→ムキになる→自分でハシゴ外す、の墓穴スタイルのどちらかだろう。ティーの家に訪問した時もたぶん、最初は助言が欲しかっただけとか。
 ともかくイメージとかなり違う、心がぽっきりいって泣きそうな、いやもう泣く、泣いてる未来の中隊長殿が赤髪ツインテールを振り回してメルの両肩をぶんぶんし出した。なんかもう不憫である、仕方ない、押し返してやめさせて、ひとつ助け船を出してみよう。

「中隊長代理はこのくらいもできないんですかーー?」

「うぇ……」

「ちょっと嫌になったくらいで諦めちゃうなんて軟弱ですねーー?」

「な……この……!」

「うちの姐さん出した方がまだマシですよぉーーーー??」

 煽る煽る、本当にシオンが同じ位置に立ったら大惨事待った無しだろうが。見る見るレアの目に光が戻る、腕を震わせメルを睨む。

「そんなことある訳だいだない! 何よ100人操るくらい私には造作じょーさもないわよ! そちらのリーダーとか営倉入りした前任者とかは知らないけれど!」

「おー噛む噛む」

「あなた如きと話してる時間はないわ! 私は忙しいのでね! ではご機嫌よう! おーほほほほほ! あだっ……」

 煽られてすぐ彼女はそんな感じになった、なんか冷や汗かいてたし、翻った時自分の足につまづいてたが、高笑いしながら駐機場を去っていく。姿が見えなくなってから溜息ひとつ、腰に手を当て、捻っていたマイクを元に戻した。

「どう思う?」

『嘘をついている兆候は無かった、ただの無能だろう』

「ただの無能はやめたげようよ……」

 予期せず彼女は犯人候補から外れた、ティーの解任はむしろレアにとっては不幸である。となると犯人の何者かは彼女をスケープゴートにしたかったか、もしくは要らぬお節介。

「とりあえず、次に行こう」

 今はスパイウェアの追跡だ、
 終わらせればいずれわかる。
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