終末世界に少女とAIの見つけた生きるというすべてへの解答

春ノ領

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6-"G"線城のアリア

亡霊騒ぎ 真

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 広い、とてつもなく広い。
 だが時間が止まったようだ。

「姐さん、報告、このお城に入ってからなんだけど、とんでもない勢いでバッテリーが充電されてく」

「どのくらいだ?」

「ティーに本気で充電してもらった時の5倍以上」

 館内に電気は一切使われていない、照明の燃料はローソクと油、調度品も中世ヨーロッパ然としている。トンネル前で待機する小隊、及び中隊長に現状を報告したのち、小さな灯火で薄暗く照らされる2人用客室のひとつでベッドに倒れていたシオンだったが、隣のベッド上でメルがそう言うと上体を起こした。
 持っていたのは黒い巨大乾電池だ、簡単な液晶モニターが貼り付けてある。電力-魔力変換器付きバッテリー、エネルギーを電気として貯蓄し、必要に応じて電力としても魔力としても出力でき、肌身離さず持ち歩いていれば人体から発散される魔力を吸収して僅かずつ充電されていく。急速充電したいなら普通にコンセントに繋いでもいいが、魔力の扱いに長けた者に「ふんっ!」ってやってもらってもいい。貯蔵器も変換器も放出器も無しに魔力を取り扱えるのは知り合いの中ではティーのみなので、出発前にやらせてみたのだ、おかげで電気代が2日は浮いた。

「かなり濃い魔力が滞留してるってことになるよこの場所、こっちとしては助かるけど、明らかに異常」

「ふむ……トンネルを通りたいだけ、されど見て見ぬ振りできる範疇でなし」

 少しばかり悩んで、シオンはベッドから腰を上げる。1階でレアと話し込んでいる筈だ、あの紳士は。

「鍵も探さなきゃならん、行ってみましょ……」


 そうしたら、
 いきなり、
 壁にかかっていた絵画が落ちた。


「う……」

 カン!と床に落着、その音で2人ともそちらへ目をやる。5秒ほどそのまま固まり、次にメルと顔を見合わせ、また5秒。

 いそいそとライフルのスリングベルトを肩にかけ、マガジンを装着、初弾を装填する。マガジンポーチとナイフの着くベルトも腰に戻し、フラッシュライトを点け、ローソクより遥かに明るく室内を照らす。その間にメルも自分のにドラムマガジンを取っつけ、ヘッドギアを頭に乗せた。

「ふふ」

「ひひひ……」

 突入戦でも仕掛けんのかって感じにドアの左右に張り付く、右手と肩でライフルを保持しつつ左手でドアノブを回し、すぐ撃てる状態で廊下へ出た。出たらシオンは右へ、メルは左へ、何も異常が無い事を確認すれば共に「クリア」と宣言した。その後、「何やってんだ…?」と呟く。
 城は石材の他に鉄筋コンクリートやモルタルを材料にしている、世界遺産級と比べればかなり現代的な内装だが、それでも明かりの無い廊下は不気味かつ不気味、そして不気味である。緑色のカーペットが消えていく先をライトで照らせば暗闇は払いのけられ、突き当たりの階段が目に入る。

「フェルト、ヒナ先生、入りますよ」

 1階へ降りる前に隣部屋のドアをノック、中を覗く。
 こちらの絵が落ちたのと同じタイミングと思われる、一輪挿しの小さな花瓶が床で粉々になっていた、そしてベッドの上では2人重なって倒れていた。下側のヒナはフェルトの背中に手を回しつつも困り果てた表情、上側のフェルトは顔をヒナの胸に押し付けて動かない。

「「あら^~」」

「ふざけてないで助けて欲しいんだけど……」

「ちょっと城内探索してきますからね、通信に出れるようにしといてくださいね」

「助けてくれないんかい……」

 ぱたりとドアを閉め、改めて階段へ。やたらめったら音の響く階段を降りた先がエントランスの2階だ、カーペットは赤くなり、玄関へ向けて階段が伸びて、そのふもとにレアとシズがいる。豪勢なシャンデリアを見上げながらさらに階段を降り2人のもとへ。
 レアはグレネードランチャーから手を離し、腰後方にグリップ上向きで装備したホルスターからハンドガンを抜いていた。何かあったのは明白だが、少なくともシズにセクハラされた訳では無いようだ、視線は定まらず辺りを見回している。
 しかしシオンとメルの注意はまず彼女の胸部に向いた、重たいランチャーを肩にかけたスリングのみで支えているので、ベルトが胸に食い込んで膨らみが強調されており、シャンデリアの次にそこを凝視、横に回って高さを確かめ、2人同時にやれやれポーズ。

「これじゃティーには勝てんな」

「んだ」

「何の話をしているの? ……いや何の話をしているの!?」

 何の話だろう。

「はぁ……今揺れなかった?」

「あ、揺れましたねたぶん」

 なるほどあれは揺れのせいだったか、フル装備してきたのが恥ずかしくなる。ハンドガンを戻し、グレネードランチャーを掴んで、体ごと彼女はシズに向き直った。

「改めて確認させて頂戴。ここの持ち主、貴方の主人は今いない」

「はい」

「私達が必要としている鍵の在り処に心当たりはあるけれど現状その場所には辿り着けない、なぜなら扉が開かないから」

「はい」

「できるというなら私達がそこに侵入して鍵を持っていってもいい」

「間違いなく、とても優しい方なので」

 そんな訳だ、とレアの目がこちらに向いた。これから開かずの扉まで案内してもらう、それをどうにかして開ける、鍵を手に入れる、任務に戻る。手早く済むなら一泊もありだ、フェルトは泣くだろうが。

「聞いたわね、何か手を探して、私が40ミリを1発消費する以外で」

「メル子、ハッキングが駄目でもピッキングならどうだ」

「…………トンネルの鍵みたいな複雑なものじゃない、かつ錆びていない。このふたつを満たしてるなら」

 シオンの問いに対しメルはそう答える、ただし返答までにかなり間があって、ヘッドギアからの声に耳を傾けていた、ように見えた。

「じゃあさっそく……っと…」

 案内して、と言おうとしたレアが止まり、
 直後、エントランスがギシリと軋み揺れた。
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