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7-荒野に悪魔の誘惑なし
切り裂き魔
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右翼に3人、かなりの間隔を空けて散開した、リッパーとの距離で言えばフェルトがやや突出気味か。ヒナは後方で狙撃姿勢、地面が気持ち盛り上がっている場所の岩の影でコートを茶色くして伏せている。レアもそのあたり、近接戦確定の現在、あんなバカ威力のグレネードを撃ち込まれてはたまらない。
『間違えるなよ、破壊しないといけないのは対空ミサイルだ、リッパーじゃない。キミたちは工作部隊がミサイルにロケット弾を叩き込む時間を稼げばいい』
メルは現在、リッパーから見て左前方400m、地面にぺたりと伏せてタブレットをいじっていた。傍らにはトランスポンダー、電波や光信号を受けると何らかの応答を返すマッチ箱サイズの機械が転がしてある。密着させ全開動作すればEMPグレネードの代わりにはなる。
通信機からはティーの声だ、小隊長であるレアが3個分隊12名しか統率しないのに対し彼女の指揮下は8個小隊104名、ケタが違う。当然仕事も膨大なものとなるのでちょっと調子乗った赤髪ツインテが痛い目見たりもしたが、まぁそれはいい。
彼女の部下のうち26名がレア小隊の背後に展開した、今は岩影に潜んでいるが、交戦が始まればなりふり構わず走ってくると思われる。ロケット弾とは言ったが別に修復不可能となれば何でもいい、グレネードでも爆薬でも。問題は離脱だ、ティーのことだから何かしら用意しているだろうが、恐らく最も低コストだろうと思ってメルは独自にハッキングツールを準備中。
「できた、センチメントハックと名付けよう」
『面倒な事になる気配しかせんが……』
タブレット収納、腰のベルトの手榴弾用フックにトランスポンダーを引っかけ重アサルトライフルを用意、近距離スコープ越しのリッパーは相変わらず棒立ちのままだ、気付いてないのか無視されてるのか。
スコープをずらしてフェルト方向へ、サブマシンガンをホルスターごと置き去りに今にも飛び出そうとしている。
『よし行け、行け行け行け!』
言われた瞬間、後方から発射された青白い残光が頭上を抜けていった。彼女は当然の如くそれを避け、空中横回転しつつ立っていた岩を離れる。どうせ当たらない事は最初からわかっていたのでヒナは猛然と連射を開始、バンバンバババババババン!とスナイパーにあるまじき速度で1弾倉撃ち切った。続けてレア小隊による射撃を開始、メルも指切り撃ちしながら立ち上がって、小走りに近付いていく。
一発も当たらない、というのは強調すべき部分ではなかろう。
『無理すんなよ!やばかったら退け!』
フェルトの接触と同時に射撃は止まった、打ち合う彼女は信じられない事に刃物と刃物で火花を散らしているしちゃんと拮抗している。ありゃ人間のやる事じゃない、実際片方人間じゃないし。
なんて思ったのも束の間、バックステップでフェルトが後退し、またヒナの狙撃から再開する。初撃よりはリッパーの体に近い位置を通った、当たってはまったくいないが。
そうやって釘付けにしながら可能な限り素早く距離を詰めていく、すぐに最初の半分となった。残り200m以下、ミサイルランチャーは射程内だ。
「よっしゃ!」
まもなくロケット弾が放たれるだろう、離脱の準備を進めるべきだ。そう思ってメルは駆け出した、途端にシオンは叫び出したが無視、フェルトと打ち合うリッパーへ接近していく。
彼女の姿は前回と同じだ、ノースリーブとプリーツスカート、腕をアームカバーが、足をニーハイソックスが覆う。両腰には鞘があり、中身の直刀は両手に握られている。動作速度は人間ではなく、フェルトをもってしても防戦以外のすべてを許されない。急ぐべきだ、メルの急接近によって味方は射撃不能となっている、フェルトもそう保つまい。
メルがリッパーに接触する、トランスポンダーを叩きつける。それで大丈夫だ、急造ウイルスの効果は不明だが少なくとも2分以上の正常動作を阻害するEMP効果はある。
「とっ!」
「ふぁっ!?」
5m、重アサルトライフルを連射しながら突っ込めばまずフェルトが素っ頓狂な声、さも当然とばかりに全弾避けたリッパーの左刀が追って反応する。咄嗟に割って入った槍が直刀を弾き落とし、片手で射撃を継続しつつトランスポンダーを掴んだ。これだけ撃っても奴は密着状態を崩さない、左刀を防御した槍の穂先がそのまま回転、反対側の柄が上がってきて右刀を弾き上げる。ほぼ同時、メルが左刀の峰を踏みつけた。
「しゃおらっ!!」
左手が彼女に到達、貼り付ける訳でも打ち込む訳でもなくそっと襟から服の中へトランスポンダーを投入した。直後にリッパーはEMP効果により行動を停止、左手を下に、右手を上に向けたまま目を見開く。その間こちらはフェルトを引っ張って離し、発射されたロケット弾が寸分違わずミサイルランチャーに命中、爆破されるのを見届ける。
「なに!? なにしたの!?」
完全停止していたのは10秒ほど、2振りの直刀がその場に落ちて、空いた手を頭に、呻き始めた。
「ふははははは! 感情を植え付けてやった!」
ウイルスとは言ったが実際やったのは姉(上位モデル)の権限を利用したシステムの上書きである。ナイトメアのシステムは隅から隅まで調査済み、感情を出力する部分も特定してある。それを追加した、ただでは済まない筈である。
「ぁ…! 何…!? 何これ…!? あ……姉様…?」
で、結果、ナイトメアの痕跡なんぞ一片たりとも残していないのにそんな事を言い出して
「姉様ぁぁぁぁぁぁっ!!」
叫びながら走り去った。
「よしっ!」
『よしっ! じゃねぇーよどうしてくれんだ絶対面倒な事になるだろうが!!』
『間違えるなよ、破壊しないといけないのは対空ミサイルだ、リッパーじゃない。キミたちは工作部隊がミサイルにロケット弾を叩き込む時間を稼げばいい』
メルは現在、リッパーから見て左前方400m、地面にぺたりと伏せてタブレットをいじっていた。傍らにはトランスポンダー、電波や光信号を受けると何らかの応答を返すマッチ箱サイズの機械が転がしてある。密着させ全開動作すればEMPグレネードの代わりにはなる。
通信機からはティーの声だ、小隊長であるレアが3個分隊12名しか統率しないのに対し彼女の指揮下は8個小隊104名、ケタが違う。当然仕事も膨大なものとなるのでちょっと調子乗った赤髪ツインテが痛い目見たりもしたが、まぁそれはいい。
彼女の部下のうち26名がレア小隊の背後に展開した、今は岩影に潜んでいるが、交戦が始まればなりふり構わず走ってくると思われる。ロケット弾とは言ったが別に修復不可能となれば何でもいい、グレネードでも爆薬でも。問題は離脱だ、ティーのことだから何かしら用意しているだろうが、恐らく最も低コストだろうと思ってメルは独自にハッキングツールを準備中。
「できた、センチメントハックと名付けよう」
『面倒な事になる気配しかせんが……』
タブレット収納、腰のベルトの手榴弾用フックにトランスポンダーを引っかけ重アサルトライフルを用意、近距離スコープ越しのリッパーは相変わらず棒立ちのままだ、気付いてないのか無視されてるのか。
スコープをずらしてフェルト方向へ、サブマシンガンをホルスターごと置き去りに今にも飛び出そうとしている。
『よし行け、行け行け行け!』
言われた瞬間、後方から発射された青白い残光が頭上を抜けていった。彼女は当然の如くそれを避け、空中横回転しつつ立っていた岩を離れる。どうせ当たらない事は最初からわかっていたのでヒナは猛然と連射を開始、バンバンバババババババン!とスナイパーにあるまじき速度で1弾倉撃ち切った。続けてレア小隊による射撃を開始、メルも指切り撃ちしながら立ち上がって、小走りに近付いていく。
一発も当たらない、というのは強調すべき部分ではなかろう。
『無理すんなよ!やばかったら退け!』
フェルトの接触と同時に射撃は止まった、打ち合う彼女は信じられない事に刃物と刃物で火花を散らしているしちゃんと拮抗している。ありゃ人間のやる事じゃない、実際片方人間じゃないし。
なんて思ったのも束の間、バックステップでフェルトが後退し、またヒナの狙撃から再開する。初撃よりはリッパーの体に近い位置を通った、当たってはまったくいないが。
そうやって釘付けにしながら可能な限り素早く距離を詰めていく、すぐに最初の半分となった。残り200m以下、ミサイルランチャーは射程内だ。
「よっしゃ!」
まもなくロケット弾が放たれるだろう、離脱の準備を進めるべきだ。そう思ってメルは駆け出した、途端にシオンは叫び出したが無視、フェルトと打ち合うリッパーへ接近していく。
彼女の姿は前回と同じだ、ノースリーブとプリーツスカート、腕をアームカバーが、足をニーハイソックスが覆う。両腰には鞘があり、中身の直刀は両手に握られている。動作速度は人間ではなく、フェルトをもってしても防戦以外のすべてを許されない。急ぐべきだ、メルの急接近によって味方は射撃不能となっている、フェルトもそう保つまい。
メルがリッパーに接触する、トランスポンダーを叩きつける。それで大丈夫だ、急造ウイルスの効果は不明だが少なくとも2分以上の正常動作を阻害するEMP効果はある。
「とっ!」
「ふぁっ!?」
5m、重アサルトライフルを連射しながら突っ込めばまずフェルトが素っ頓狂な声、さも当然とばかりに全弾避けたリッパーの左刀が追って反応する。咄嗟に割って入った槍が直刀を弾き落とし、片手で射撃を継続しつつトランスポンダーを掴んだ。これだけ撃っても奴は密着状態を崩さない、左刀を防御した槍の穂先がそのまま回転、反対側の柄が上がってきて右刀を弾き上げる。ほぼ同時、メルが左刀の峰を踏みつけた。
「しゃおらっ!!」
左手が彼女に到達、貼り付ける訳でも打ち込む訳でもなくそっと襟から服の中へトランスポンダーを投入した。直後にリッパーはEMP効果により行動を停止、左手を下に、右手を上に向けたまま目を見開く。その間こちらはフェルトを引っ張って離し、発射されたロケット弾が寸分違わずミサイルランチャーに命中、爆破されるのを見届ける。
「なに!? なにしたの!?」
完全停止していたのは10秒ほど、2振りの直刀がその場に落ちて、空いた手を頭に、呻き始めた。
「ふははははは! 感情を植え付けてやった!」
ウイルスとは言ったが実際やったのは姉(上位モデル)の権限を利用したシステムの上書きである。ナイトメアのシステムは隅から隅まで調査済み、感情を出力する部分も特定してある。それを追加した、ただでは済まない筈である。
「ぁ…! 何…!? 何これ…!? あ……姉様…?」
で、結果、ナイトメアの痕跡なんぞ一片たりとも残していないのにそんな事を言い出して
「姉様ぁぁぁぁぁぁっ!!」
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