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8-Fake Fate Fay

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 工場中央 やや東寄り
 308部隊"サーティエイト"
 シオン



「……」

「…………」

 階段じゃ絶対間に合わないので資材運搬用のエレベーターを使って一気に地上への帰還を目論んだ、それは成功したのだが、乗ってる最中に下方で謎の爆発が起き、制御を失ったエレベーターゴンドラは暴走、一行を空へと打ち出した。「ぎゃっ!」「ぐえっ!」などと言いつつ地上まで戻ってきて、そしてふと顔を上げてみれば眼前にサイクロプスのセンサーポッド。

「よぅし決めたぞ、あんなわけわからんのに殺されるくらいならお前に殺される」

 とか、言ってみたらサイクロプスは停止したまま、レールガンも重機関銃も発砲せず、ただ右側の前後脚を曲げる事で機体全体を傾け、さらにセンサーポッドも少し右に回転させた。

 たぶん、首を傾げているのだと思う。

「とか言ってる場合じゃねーな散れぇぇ!!」

 それも束の間、5人全員が一斉に走り出せば重機関銃の射撃が始まった。シオンは単独で東方向へ、背後でグレネードランチャーの爆発音が1発だけしたがサイクロプスの走行音は収まらず、さらにレアの悲鳴が続く。

「ティー! レーザーは使えなくしたぞ! 状況は!?」

『おーぅ、丁度いい場所に丁度いいタイミングで出てきなすった。給水塔の近くでロケラン部隊がアンブッシュしてる、囮やって』

「それはつまり死ねという事だな!?」

『あ……ちょっとあの! 地下に別の敵が!』

『後で聞く、今はサイクロプスに退場願え、いい加減にね』

 今聞いといた方がいいと思うのだが、現状サイクロプスの方が優先度が高いのも事実、ひとまずティーの指示に従おう。まず給水塔の位置を確認、少し戻って奴を一瞬だけ視界に戻し、数発発砲、待ち伏せ地点への直行ルートへ入る。途端に4脚走行音はシオンに向け高速接近を始め、どう考えても追いつかれるので左へ、曲がった先ではレアがおろおろしていた。今どうすればいいかわからないのではなく地下に残してきたものが気になるようで、シオンが現れたのを認めるやすぐグレネードランチャーを持ち上げる。
 すれ違いざまに3発連射、炸薬と魔力の炸裂音が背後で上がった。1発は直撃するも装甲をへこませ後退を促すに留まり、8.6mm魔力貫通弾の閃光が襲来すれば一時離脱していく。

「ナイトメア!? 何してるか知らないけれどそっちの様子は!?」

『まったく問題無い、無いがしかし、ちょっと混乱してるな。何故こんなものをわざわざ作った?』

「何!?」

『気にするな、ただできれば"操縦桿を握った事のある人間"を1人見繕っといてくれ』

 操縦桿、という時点で1人しか該当しない、給水塔へ走りながらレアは視線を上、機関砲射撃を続けつつミサイルも撃ち出す攻撃ヘリを見て、ヘッドギアを指で触れる。

「今話しかけない方がいい」

「どうして」

「下手すりゃブチギレてる」

 左のガンポッドを失っているし、予定に無い抵抗を受けた筈だ。フェイという人物は普段は静かなお姉さん、しかして実態は攻撃力を持つ乗り物に乗った途端豹変する狂戦士である。いやまぁ、フェルトほどではないのだが。レアの肩を掴んで通信をやめさせ、ヘリは一度視界から外す。
 サイクロプスが追跡再開したらしき音を聞きつつ2人は給水塔まで到達、物陰でロケットランチャーの伏射姿勢を取る兵士の姿を確認する。メルとフェルトは彼の奥で手を振っており、すぐ近くの建物屋上ではヒナが断続的に発砲している。

「奴の位置は!?」

「もう来る…来た!」

 そのヒナが発砲を中止、屋上から一思いに飛び降りるやサイクロプスは現れ、レールガンを1発、紙一重で誰もいなくなった屋上へ撃ち込んだ。続けて重機関銃の射撃を開始、シオンとレアを物陰へ追いやる。さらに彼はロケットランチャーの存在にも気付き銃口をそちらへ向けたが、それより早くロケット弾は発射される。
 命中したのは三角錐の天頂部、レーダーユニットが収まっていると思われる部分だ。甲高い金属音を伴う爆発はサイクロプスを大きく仰け反らせ、一時的にバランスを失う。のんだくれた親父のような動きで足踏みし、まったくあさっての方向へレールガンを発射、それによって生まれた瓦礫の飛散を自分で受けた。

「トドメだ! もう1発…!」

『全隊戦闘中止! 今すぐ撤退しろ!』

「は……?」

 が、シオンに言われずとも次弾装填を進めていた味方兵士を含め、いきなり聞こえてきた総隊長の声に全員が唖然とし、そのまま数秒、まずレアが我に帰る。

「あ……」

 報告を後回しにするべきではなかったか、
 いつの間にか背後に巨人が立っていた。

『退がれ! それを倒す火力は無い! 逃げろぉ!』
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