81 / 113
12-バンカー総合能力テスト
フィールド調査1
しおりを挟む
「では鈴蘭、ここからは敵が潜入したと仮定して行動しますが、なぜその敵はコソコソと忍び込んだのでしょうか?」
「えぇと……見つかったら倒されるから?」
「概ね正解です、正面衝突ができない戦力で最大限の戦果を上げるには内部で守られた重要目標を直接叩く必要がある。状況によっては弾丸1発で部隊まるごと退ける事も不可能ではありません、例えば指揮官とか、どんなに強力な部隊でも脳みそがなければ動きませんからね。ですから潜入が判明した時、真っ先に安否を確認するべきはコレ」
「コレとは何かね……」
司令部、本部等と呼称される建物である、背後に核シェルターの扉を背負い、データセンターが隣接する。建屋自体はそう大きなものではなく、外周部の家屋2件分、20畳程度でしかない。施設の大部分があるのは地下だ、シェルターを避けるため曲がり曲がった蛇行の極みみたいな形状のトンネルが収まっており、最深部に司令室と作戦会議室を持つ。
その地下への入り口部分、壁にもたれかかってやはりレポート作成をしていたティーを指差しつつシオンは言った。途端に彼女は苦笑いを始め、ペンを走らせる手を止める。
「戦闘隊において中隊長は中間管理職に相当します、配下にある小隊の能力を把握し、大隊長の性格を考慮した指示を下す。大隊長は小隊ごとの特徴なんて知ったこっちゃないので、ティーがいなくなれば我々に的確かつ具体的な指示が飛んでくる事はありません」
「大隊長も小隊長も同じでしょうよ、規模がちょい上下するだけだ」
「作戦時は100人ごとの扱いが一番多い」
「それはまぁ」
続けてそんな会話をしながらシオンは上を見る、建屋の屋根にはレアが乗っていた。腕を吊る三角巾は外れたものの左肩は未だギプスで盛り上がったまま、右手で双眼鏡を目に当て周囲を観察中。
主目的に移ろう、玄関ドアの前に立つ。見張りは1人、その場を動かない定点型で、今もすぐ近くに突っ立っているが、彼の注意はサーティエイトやティーの方へ露骨に向いている、石でも投げられたらすぐ目を逸らすだろう。右、左と視線を回して玄関口から死角になっている場所を捜索、手頃な物陰をいくつか見繕ったら巻尺の端を持ち、そこまでメルを走らせる。一番近い所で10m弱、目を逸らした一瞬を突いて、というのは不可能に近い。
「やっぱよく考えてんな……フェルト、裏見てきてください。ドアの幅はどうだ?」
「フルサイズのライフルだと構えたままは無理そう、サブマシンガンか、姐さんのCQBでギリ。ドアから階段まで5.5メートルで……」
「……細かすぎない?」
「「え、そーぉ??」」
フェルトは建物の背後を確認、ヒナは窓枠の僅かな突起を使って屋根に登り、手を伸ばして鈴蘭を引き上げる。シオンとメルはあっちこっちを計測しまくっていたが、ティーに怪訝な目をされたので2人一緒に首を傾げ、彼女の胸に巻尺巻き付けた。「やめたまえ!」なんて言われてから巻尺はしまい、ティーのレポートを覗いてみる。
北側に大隊規模の敵部隊が展開、北門は既に制圧されている。バンカー内には3個小隊しか残っておらず、全隊が集結するまで48時間必要。という問題だ、要するに39人で48時間耐えろという事。
「北門まで押し戻さないと勝ち目ないでしょう」
「問題はそれをどうやってやるかだ、無理にやったら半分死ぬ。北門以外の3方向も防御しなきゃならんし、序盤でそんなに減ったら耐えきれない」
「ロケットランチャー大乱舞で」
「遮蔽物に傷入れたくないな……」
サーティエイトより明らかにハードな問題だった、どうすりゃいいのか検討もつかない。レアも同じ内容だろうか、複数人で1問だからきっとそうだろう。
「小隊長の見解はー?」
「門の上の防護壁、爆破したら綺麗に落ちてくると思わない?」
「すげえ豪快な事言ってる」
「ひと通り教え込んだらあんな感じに」
そういえば特訓してるとか言っていたな、ポンコツ隊長は卒業したのだろうか。工場の時は小隊長とは名ばかりに引っ付いてくるだけだったし、もっと切羽詰まった場面であんな感じだったらさすがに困る。
まぁすぐにわかる、お手並み拝見は後でいい。
「よし、ここは十分だ、次に行きますよ」
「えぇと……見つかったら倒されるから?」
「概ね正解です、正面衝突ができない戦力で最大限の戦果を上げるには内部で守られた重要目標を直接叩く必要がある。状況によっては弾丸1発で部隊まるごと退ける事も不可能ではありません、例えば指揮官とか、どんなに強力な部隊でも脳みそがなければ動きませんからね。ですから潜入が判明した時、真っ先に安否を確認するべきはコレ」
「コレとは何かね……」
司令部、本部等と呼称される建物である、背後に核シェルターの扉を背負い、データセンターが隣接する。建屋自体はそう大きなものではなく、外周部の家屋2件分、20畳程度でしかない。施設の大部分があるのは地下だ、シェルターを避けるため曲がり曲がった蛇行の極みみたいな形状のトンネルが収まっており、最深部に司令室と作戦会議室を持つ。
その地下への入り口部分、壁にもたれかかってやはりレポート作成をしていたティーを指差しつつシオンは言った。途端に彼女は苦笑いを始め、ペンを走らせる手を止める。
「戦闘隊において中隊長は中間管理職に相当します、配下にある小隊の能力を把握し、大隊長の性格を考慮した指示を下す。大隊長は小隊ごとの特徴なんて知ったこっちゃないので、ティーがいなくなれば我々に的確かつ具体的な指示が飛んでくる事はありません」
「大隊長も小隊長も同じでしょうよ、規模がちょい上下するだけだ」
「作戦時は100人ごとの扱いが一番多い」
「それはまぁ」
続けてそんな会話をしながらシオンは上を見る、建屋の屋根にはレアが乗っていた。腕を吊る三角巾は外れたものの左肩は未だギプスで盛り上がったまま、右手で双眼鏡を目に当て周囲を観察中。
主目的に移ろう、玄関ドアの前に立つ。見張りは1人、その場を動かない定点型で、今もすぐ近くに突っ立っているが、彼の注意はサーティエイトやティーの方へ露骨に向いている、石でも投げられたらすぐ目を逸らすだろう。右、左と視線を回して玄関口から死角になっている場所を捜索、手頃な物陰をいくつか見繕ったら巻尺の端を持ち、そこまでメルを走らせる。一番近い所で10m弱、目を逸らした一瞬を突いて、というのは不可能に近い。
「やっぱよく考えてんな……フェルト、裏見てきてください。ドアの幅はどうだ?」
「フルサイズのライフルだと構えたままは無理そう、サブマシンガンか、姐さんのCQBでギリ。ドアから階段まで5.5メートルで……」
「……細かすぎない?」
「「え、そーぉ??」」
フェルトは建物の背後を確認、ヒナは窓枠の僅かな突起を使って屋根に登り、手を伸ばして鈴蘭を引き上げる。シオンとメルはあっちこっちを計測しまくっていたが、ティーに怪訝な目をされたので2人一緒に首を傾げ、彼女の胸に巻尺巻き付けた。「やめたまえ!」なんて言われてから巻尺はしまい、ティーのレポートを覗いてみる。
北側に大隊規模の敵部隊が展開、北門は既に制圧されている。バンカー内には3個小隊しか残っておらず、全隊が集結するまで48時間必要。という問題だ、要するに39人で48時間耐えろという事。
「北門まで押し戻さないと勝ち目ないでしょう」
「問題はそれをどうやってやるかだ、無理にやったら半分死ぬ。北門以外の3方向も防御しなきゃならんし、序盤でそんなに減ったら耐えきれない」
「ロケットランチャー大乱舞で」
「遮蔽物に傷入れたくないな……」
サーティエイトより明らかにハードな問題だった、どうすりゃいいのか検討もつかない。レアも同じ内容だろうか、複数人で1問だからきっとそうだろう。
「小隊長の見解はー?」
「門の上の防護壁、爆破したら綺麗に落ちてくると思わない?」
「すげえ豪快な事言ってる」
「ひと通り教え込んだらあんな感じに」
そういえば特訓してるとか言っていたな、ポンコツ隊長は卒業したのだろうか。工場の時は小隊長とは名ばかりに引っ付いてくるだけだったし、もっと切羽詰まった場面であんな感じだったらさすがに困る。
まぁすぐにわかる、お手並み拝見は後でいい。
「よし、ここは十分だ、次に行きますよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で身も心もすり減らした相馬蓮司(42歳)。
過労死の果てに辿り着いたのは、剣と魔法の異世界だった。
神様から「万能スキル」を押し付けられたものの、蓮司が選んだのは──戦いでも冒険でもない。
静かな辺境の村外れで、珈琲と煙草の店を開く。
作り出す珈琲は、病も呪いも吹き飛ばし、煙草は吸っただけで魔力上限を突破。
伝説級アイテム扱いされ、貴族も英雄も列をなすが──本人は、そんな騒ぎに興味なし。
「……うまい珈琲と煙草があれば、それでいい」
誰かと群れる気も、誰かに媚びる気もない。
ただ、自分のためだけに、今日も一杯と一服を楽しむ。
誰にも縛られず、誰にも迎合しない孤高のおっさんによる、異世界マイペースライフ、ここに開店!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる