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14-そして人は破滅に向かう
反転攻勢2
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通常、近距離戦で砲兵は歩兵に勝てない。
相性みたいなものだ、実際そんな単純じゃないのだが、歩兵は砲兵に強く、砲兵は騎兵(機甲)に強く、騎兵は歩兵に強い。ただしあくまで指標として、戦車はだいたいどこでも強いし、遮蔽物まみれの場所で歩兵を捕まえられる者はなく、十分な距離を取った砲兵の攻撃はすべてを粉砕する。
で、現状。砲兵といえど人間である、ライフルを撃つ訓練くらいは受けている。しかしそれは必要最低限、訓練時間のほとんどを砲撃に割いているので、いざ面と向かったらボッコボコにされてしまうのだ。
付け加え装備性能が離れすぎている、かたや固定式弾倉に5発入り1発ごと手動装填のボルトアクション銃、かたや着脱式弾倉に30発入り引き金を引いてる間だけ弾が出続けるオートマチック銃。照準器も全然違うし熱源感知もできる、軽量な分隊支援火器がすべての部隊についている上、中途半端な遮蔽物はグレネード弾が吹き飛ばす。それはまさしく第二次大戦兵器と現代兵器の性能比較だ、奇襲から立ち直りきった今、話になる訳が無い。
なのでこうなる。
『5門中3門を無力化、残りの2門は砲撃をやめ森林地帯へ逃走中だ、きっちり仕留めろ』
『敵の右翼が崩壊していくわ、中央もじき突破できそう』
『よし、レア中隊はそこで停止、後続と入れ替わり、補給と再編成を行いたまえ』
北連の横腹は非常に脆く、マトモに撃ち合っていたと言えるのはほんの数分、後はひたすら押し込んで押し込んで押し込むだけの戦闘だ。砲兵部隊は崩壊し、指揮官は左翼、バンカーから見て右側へ逃げ込んで、その綻びをティー中隊が刺突した。既に敵戦力の半数は戦闘能力を喪失しており、左翼はほぼ健在のまま仕切り直しを迎えたものの、形勢は完全に逆転した、もう一度のひっくり返しを許すような指揮官ではない。
北連:バンカーの戦力比はおよそ4対6、右翼を失い団子状態となりつつある敵に対し味方は左翼が突出していて、もう少し右翼を伸ばせば鶴翼陣形となる。ティーが考えた戦術としては右翼と中央は動かさず、左翼だけがスライドして敵を一掃するとのこと。左翼が跳ね返されるようなら右翼が代わりにスライドすればいいし、中央に突進してくるなら両翼をぱたりと閉じればいい。ティーによる命名は"黒板消し作戦"。
で、そんな中でサーティエイト、何をしていたかと言えば、敵指揮官の眉間を狙っていた。
既に戦闘が始まっている状況下で指揮部隊が打撃を受ければ戦闘能力は激減する、直ちに潰走を始める筈だ。きっとそれが双方共に最も死人が少ない、そう考えヒナ、アトラと共に中隊から離脱した。現在地は敵集団のほぼ背後、前方1kmにそれらしい車列があり、右側500mにアルファチームも待機している。あとなんか、アンドロイド姉妹の会話によると、サイクロプス?なるものが急速接近中だとか。
「どれだと思う?」
「3台目の近くで地図眺めてるおっさん」
「私は先頭でわめき散らしてるジジイだと思うが」
「じゃあ両方撃ちましょ」
「違いない」
住民の避難し終えた掘っ建て小屋の陰に陣取ったスナイパー両名、それだけで目標策定を終えそれぞれライフルを車列へ向けた。1km先の人物を観察する手段を鈴蘭は持っていないので、念の為の後方警戒、あちらの地獄絵図と打って変わってのどかな草原が風で揺れるのを見てクールダウンしてみたり。
「……あ」
「どった?」
「なにか稜線から出てきました」
ぽつん、と黒点が現れたのだ、微かにドスドスと歩行音も聞こえる。
距離400m、鈴蘭のスコープでもいけそうなのでライフルを持ち上げてみた。上面にやや角度が付くものの全体的に長方形で、後端からアンテナが伸びる。4本ある脚には金属板を重ねて並べたようなシールドがあり、その間、長方形の本体下部に長大な砲身を抱き抱えている。移動がかなり速く、近付くにつれ本体先端のセンサーポッド、ガトリングガンと、左右のミサイルコンテナも見えてきた。
「4本脚の」
「クロか」
「予定より早いな」
「すごく立派な大砲ですね、ミサイルも大きい」
「狙って言ってるのか天然なのか……ミサイル…?」
昆虫みたいな脚の動かし方だ、80km/hは出ていると思われる。あれがさっき聞いたサイクロプスかと眺め続けていると、狙撃寸前だった2人が急にそれを中断、回れ右して銃口を反対へ。間も無く無線通信もざわつき始め、ティーが原因を問い始める。
『おいおいおいおいまずいぞ! 今度こそサイクロプス2だ!』
サイクロプス2
様子を見る限り味方なのはサイクロプス1の方らしい、あれは敵の、AI兵器。
シオンが叫ぶや否やヒナとアトラは発砲した、事態を察して鈴蘭もかけていたセイフティを解除、弾倉の半分程度を一連射で消費してしまう。慌てすぎたためか誘導は起こらなかった、装甲をカンカン鳴らすだけで終わる。ヒナの魔力貫通弾はセンサーポッドを掠めて僅かなりとも損傷を与え、続くアトラの榴弾が四角くて2連装のミサイルコンテナを直撃、表面を焦がせばその敵は停止する。続けて滅多撃ちを叩き込もうとしたものの、それより早く敵のガトリングガンが高速回転を始めた。
『全軍に告ぐ! 所属問わず全軍に告ぐ! 北西方向よりAIの大部隊が接近中! 攻撃に備え……』
「伏せろぉ!!」
曳光効果を伴う焼夷弾混じりの射撃だ、光が重なってレーザーのようにも見える。初弾は鈴蘭から見て左に着弾、地面を耕す、というか爆発させながら薙ぎ撃ちにしてきて、掘っ建て小屋が吹っ飛ぶか否かというタイミングでアトラに肩を掴まれた。
だが心配はいらない、どうすればいいかはもう知っている。
「つぁっ!」
3人への命中コースを取った弾丸が赤光に捉えられ、急速に軌道を捻じ曲げる。掘っ建て小屋が粉微塵になって炎上する中、誰にも怪我は無し、後ろに飛び抜けた残光が消えていく。その間にアルファチームが射撃を始め、魔力貫通弾の青い光を嫌がってそちらに注意を向けた。さらに複数の別部隊が炸裂弾やらロケット弾を一斉に撃ち込めば接近を諦め、一時稜線の向こうへ退避していく。
「今です! 逃げましょう!」
「おっ……おけおけ! 逃げるわよ!」
「よし先導するからつつ付いてこい!」
相性みたいなものだ、実際そんな単純じゃないのだが、歩兵は砲兵に強く、砲兵は騎兵(機甲)に強く、騎兵は歩兵に強い。ただしあくまで指標として、戦車はだいたいどこでも強いし、遮蔽物まみれの場所で歩兵を捕まえられる者はなく、十分な距離を取った砲兵の攻撃はすべてを粉砕する。
で、現状。砲兵といえど人間である、ライフルを撃つ訓練くらいは受けている。しかしそれは必要最低限、訓練時間のほとんどを砲撃に割いているので、いざ面と向かったらボッコボコにされてしまうのだ。
付け加え装備性能が離れすぎている、かたや固定式弾倉に5発入り1発ごと手動装填のボルトアクション銃、かたや着脱式弾倉に30発入り引き金を引いてる間だけ弾が出続けるオートマチック銃。照準器も全然違うし熱源感知もできる、軽量な分隊支援火器がすべての部隊についている上、中途半端な遮蔽物はグレネード弾が吹き飛ばす。それはまさしく第二次大戦兵器と現代兵器の性能比較だ、奇襲から立ち直りきった今、話になる訳が無い。
なのでこうなる。
『5門中3門を無力化、残りの2門は砲撃をやめ森林地帯へ逃走中だ、きっちり仕留めろ』
『敵の右翼が崩壊していくわ、中央もじき突破できそう』
『よし、レア中隊はそこで停止、後続と入れ替わり、補給と再編成を行いたまえ』
北連の横腹は非常に脆く、マトモに撃ち合っていたと言えるのはほんの数分、後はひたすら押し込んで押し込んで押し込むだけの戦闘だ。砲兵部隊は崩壊し、指揮官は左翼、バンカーから見て右側へ逃げ込んで、その綻びをティー中隊が刺突した。既に敵戦力の半数は戦闘能力を喪失しており、左翼はほぼ健在のまま仕切り直しを迎えたものの、形勢は完全に逆転した、もう一度のひっくり返しを許すような指揮官ではない。
北連:バンカーの戦力比はおよそ4対6、右翼を失い団子状態となりつつある敵に対し味方は左翼が突出していて、もう少し右翼を伸ばせば鶴翼陣形となる。ティーが考えた戦術としては右翼と中央は動かさず、左翼だけがスライドして敵を一掃するとのこと。左翼が跳ね返されるようなら右翼が代わりにスライドすればいいし、中央に突進してくるなら両翼をぱたりと閉じればいい。ティーによる命名は"黒板消し作戦"。
で、そんな中でサーティエイト、何をしていたかと言えば、敵指揮官の眉間を狙っていた。
既に戦闘が始まっている状況下で指揮部隊が打撃を受ければ戦闘能力は激減する、直ちに潰走を始める筈だ。きっとそれが双方共に最も死人が少ない、そう考えヒナ、アトラと共に中隊から離脱した。現在地は敵集団のほぼ背後、前方1kmにそれらしい車列があり、右側500mにアルファチームも待機している。あとなんか、アンドロイド姉妹の会話によると、サイクロプス?なるものが急速接近中だとか。
「どれだと思う?」
「3台目の近くで地図眺めてるおっさん」
「私は先頭でわめき散らしてるジジイだと思うが」
「じゃあ両方撃ちましょ」
「違いない」
住民の避難し終えた掘っ建て小屋の陰に陣取ったスナイパー両名、それだけで目標策定を終えそれぞれライフルを車列へ向けた。1km先の人物を観察する手段を鈴蘭は持っていないので、念の為の後方警戒、あちらの地獄絵図と打って変わってのどかな草原が風で揺れるのを見てクールダウンしてみたり。
「……あ」
「どった?」
「なにか稜線から出てきました」
ぽつん、と黒点が現れたのだ、微かにドスドスと歩行音も聞こえる。
距離400m、鈴蘭のスコープでもいけそうなのでライフルを持ち上げてみた。上面にやや角度が付くものの全体的に長方形で、後端からアンテナが伸びる。4本ある脚には金属板を重ねて並べたようなシールドがあり、その間、長方形の本体下部に長大な砲身を抱き抱えている。移動がかなり速く、近付くにつれ本体先端のセンサーポッド、ガトリングガンと、左右のミサイルコンテナも見えてきた。
「4本脚の」
「クロか」
「予定より早いな」
「すごく立派な大砲ですね、ミサイルも大きい」
「狙って言ってるのか天然なのか……ミサイル…?」
昆虫みたいな脚の動かし方だ、80km/hは出ていると思われる。あれがさっき聞いたサイクロプスかと眺め続けていると、狙撃寸前だった2人が急にそれを中断、回れ右して銃口を反対へ。間も無く無線通信もざわつき始め、ティーが原因を問い始める。
『おいおいおいおいまずいぞ! 今度こそサイクロプス2だ!』
サイクロプス2
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シオンが叫ぶや否やヒナとアトラは発砲した、事態を察して鈴蘭もかけていたセイフティを解除、弾倉の半分程度を一連射で消費してしまう。慌てすぎたためか誘導は起こらなかった、装甲をカンカン鳴らすだけで終わる。ヒナの魔力貫通弾はセンサーポッドを掠めて僅かなりとも損傷を与え、続くアトラの榴弾が四角くて2連装のミサイルコンテナを直撃、表面を焦がせばその敵は停止する。続けて滅多撃ちを叩き込もうとしたものの、それより早く敵のガトリングガンが高速回転を始めた。
『全軍に告ぐ! 所属問わず全軍に告ぐ! 北西方向よりAIの大部隊が接近中! 攻撃に備え……』
「伏せろぉ!!」
曳光効果を伴う焼夷弾混じりの射撃だ、光が重なってレーザーのようにも見える。初弾は鈴蘭から見て左に着弾、地面を耕す、というか爆発させながら薙ぎ撃ちにしてきて、掘っ建て小屋が吹っ飛ぶか否かというタイミングでアトラに肩を掴まれた。
だが心配はいらない、どうすればいいかはもう知っている。
「つぁっ!」
3人への命中コースを取った弾丸が赤光に捉えられ、急速に軌道を捻じ曲げる。掘っ建て小屋が粉微塵になって炎上する中、誰にも怪我は無し、後ろに飛び抜けた残光が消えていく。その間にアルファチームが射撃を始め、魔力貫通弾の青い光を嫌がってそちらに注意を向けた。さらに複数の別部隊が炸裂弾やらロケット弾を一斉に撃ち込めば接近を諦め、一時稜線の向こうへ退避していく。
「今です! 逃げましょう!」
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「よし先導するからつつ付いてこい!」
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