112 / 113
16-北へ
「単眼最終形態なう!」
しおりを挟む
『ヒナ先生、5分後にブリーフィングやるとかティーが抜かしてるんで、それまでに集まってください。他の2人は忙しいらしいからあなただけでも』
「はいよ」
苦労して奪い取った大規模工場施設だったが、当初求めていた役割をほぼ果たすことなく生産品の送り先を失ってしまった。現在は全生産能力を自身の防衛力強化に当てており、機銃や砲が所狭しと並べられていく。ここだけは放棄できない、との判断だ、バンカー奪還の可能性を維持するためにも。
で、それを実行する上で先に済ませなければならないであろう大大大遠征に備え武器の増備やら強化を受けていたヒナだったが、通信機から聞こえてきたシオンの指示に従い完全分解状態のセミオートスナイパーライフルから手を離す。部品が散らばったテーブルには布をかけておいて、照明を消し、部屋を出る。
「うん?」
そうしたら宿舎|(テント)のすぐ前で見知らぬ少女が壁に張り付いているのに出くわした。
肩にギリギリ届かない、ただ両側の一房ずつだけが胸あたりまであるピンク色の髪をした少女である、身長はヒナより僅かに低い程度、ワイシャツの上に赤いセーターを重ね着し、黒のネクタイを締めている。プリーツスカートは白で、足を黒タイツが覆う。張り付いているというのはまさにそのまま、体の前面を建物の壁にぺったり付けて、両手両足をわさわさ動かしているのだ。手、反対側の足、また手、最後の足と順番に動かす様は昆虫やクモのようであり、たぶん壁を登りたいのだと思われる。
「あ」
と、思わず観察していたら気付かれた、手足わさわさをやめ、体の正面をヒナへ。壁を指差し笑顔で跳ね始める。
「ヒナー! 見て見て全然登れなーい!」
「えっ、まぁ、そりゃ」
不等号みたいな目して大笑いする彼女はやはり登りたかったようだ、そのコンクリ製の工場の壁をハシゴもロープも無しに。というか面識あっただろうか、バンカーに住んでいた同年代の女性は把握していた筈だが、あいにく覚えが無い。しかし向こうはヒナを知っているようで、あはあは笑いつつ名前を連呼してくる。
「ワンチャンいけるかもって思ったんだけどねー! やっぱアンカーないと無理だなー! それか吸盤か!」
つーかテンション高いな、鈴蘭以上だ。
「ヒナはどこ行くのー?」
「指揮所までだけど……」
「じゃあボクも行くー!」
うん、やっぱりヒナは初対面だ、こんなボクっ子は見かけた事が無い。いやでもめっちゃ懐かれてるし、向こうはかなり親しい間柄と思ってるみたいだし。
「あ、いたいた」
なんて考えてたら道の先からメルが現れた、このピンク頭を探していたようで、右左と首を回して姿を見つけると手を挙げて手招き。
「クロ! 最終調整まだなんだから動かないでって! 早く戻るよ!」
「ありゃ、はいはーい! ごめんヒナまた後でー!」
で、メルに従って彼女は走り去っていく、姿が消えるまで終始大笑いしていた。向かったのは完成品検査区画だろうか、元はバトルドールやユニバーサルドールの製造ラインで、設備はそのまま残っていたはず。
メルと知り合いだったというならやはりどこかで会った事があるのだろう、本当にまったく覚えが無いのだが。商店の方で働いてたとかそんな感じかもしれない、特に食料品の区画はフェルトしか寄り付かなかったし。
「…………てか今あいつクロって言った?」
「おや、ヒナ先生、こんな所で棒立ちしてどうしたんすか」
まぁいいとにかくブリーフィングに、と思った直後、重大な事に気付いて勢いよく首をぶん戻す。ほぼ同時、同じく指揮所まで向かっていたシオンに見つかる。
「急ぎますよ、我々の明日に関する話だ」
「でも今クロって、メルがクロって女の子」
去っていった方向を指差し割と慌てて言うも、問答無用に指揮所まで手を引かれていく。宿舎と同じくテント張り、野外イベントや運動会で設営される屋根だけのキャンバス製テントをデザートカラーに染めたタイプで、テーブルに広げられた地図と通信機、モニター数台などがある。数人の兵士からテーブルを挟んで報告を受けるのはティーとレア、地図上の一点を見つめて、何かを書き込んだりしている。
「トンネルですか?」
「そう、捕虜の証言通りの場所だ、可能なら24時間以内に出発するけど……ちょっと待って。レア、全隊に準備をさせてくれたまえ」
「取り決め通りでいいのかしら?」
「さっきの部隊はキミの指揮下でいいべな」
「あら。じゃあ偵察にはそれを出すわね」
報告を終えた兵士と一緒にレアはテントを離れ、ティーとシオン、ヒナだけが残る。ティーは地図への書き込みを継続、部隊の北上を阻む山脈を貫通するトンネルを記しているようだ。
「……ねえピンクの髪の子見なかった?」
その間、改めてさっきの件をシオンに聞いてみる。メルがクロと呼んでいたあの子だ、名前を聞くまではどうでも良かったのだが、どうにも覚えがあるというか。
「私よりちょっと低いくらいで鈴蘭超えのテンションな」
「いやそんな珍生物は……」
「メルについてったんだけど」
「……それってシオンとヒナとメルとフェルトを足して4で割ったような子?」
「何それ聞き捨てならない」
シオンは知らなかったがティーが知っていた、ペンを置いて頭を上げ、左右の長さ違いな髪を示すジェスチャー。
「クロって名前だっけ? さっき鈴蘭とアルプス一万尺してるの見たよ」
「うわあ地獄絵図」
「何が気になるの? 変わった子だったけど正直キミらの周り変わった子まみれだし」
ティーは気付いていないようだ、いや気付く訳が無いか、可能性があるのはメルの他にはフェルトだけだろう。
要するに聞きまくった名前なのだ、というか呼びまくった名前なのだ。ティーにとってはあまり馴染みの薄い、サーティエイトにとっては馴染みすぎて違和感を感じられない、死ぬほど(死ななかったけども)戦ったあの存在。わからないティーと気付かないシオンの為に言い放つ。
「だってクロってサイクロプスのクロでしょ?」
時間が止まった、いや実際止まってないのだが、僅かに吹く風の音しか聞こえなくなるくらいにテントの下は色々止まった。ティーは不自然に口を曲げたまま、シオンは限界まで目線を斜め上に向けたまま停止。しばらく無音でそのまま過ごし、遠くで砲台の設置作業と思われるハンマーを連打するような音がし始めた頃、ゆーーっくりとティーの手がドリンクボトルに伸びていく。持ち上げ、中身を一口飲んで、元に戻し、深呼吸ひとつ。
「2部隊、ヘリで先行させて偵察を行う、片方をサーティエイトで予定してるんだ」
「ちょっと聞かなかったことにしないで」
「トンネル内部を探索するかは未定、余裕があれば中も見て欲しいけどクレムリンがトラップ仕掛けてるかもしれないから判断は慎重に」
「あぁもう……」
息を吐き終えた後、当然とばかりにブリーフィングは始まった。その議論をこれ以上する気は無いという態度に、シオンを追ってヒナも地図を取り囲む。
目下の問題だった山脈の攻略手段に関する話である、反対側へ抜ける方法を探していたのだが、クレムリンの捕虜を尋問したところトンネルの存在を漏らしたので、今まで真偽を確認していたのだ。話によるとヒナとフェルトが近付いた事がある原子力発電所から西に50kmほど先、高度3000mに反対側まで抜けるトンネルの入口があるとのこと。現在は飛行するヘリの機上から目視したのみで、しかも燃料がギリギリだったため詳細は不明、だから歩兵を派遣する必要がある。
「侵入する場合、トンネルは長さ20キロ以上ある、端から端まで徒歩で調べるのは不可能だ。そこでちょっと回りくどいんだけど、原発近くの平原にドロップポイントを置く。ヘリで車両を吊り下げていって、キミたちはそれに乗ってトンネルへ。ヘリは燃料が不足するだろうから本隊到着まで平原で待機、よって必然的にこの平原へ仮拠点を置く事になる。現地行ったことあるんだよね? どこかいい場所は無かった?」
「ゴーストタウンがある、リフォーム済みの建物がいくつかと、発電所とのケーブルも敷いてあったはず」
「ああ、例のAIか。確か谷の中に集落があるんだっけね、そっちはどう?」
「リーダー格はフェルトが反省させてた」
「反省(物理)」
「うんオーケー、お近付きにならない方が良さそうさね。ではゴーストタウンとやらを第1中継点としよう、ここを拠点に山脈の反対側を探索していく。じゃあ出発は明日の日の出前、それまでにもう1部隊と打ち合わせを」
「どこの誰すか?」
「レア中隊からの派遣だ、数時間前に新設の分隊でね、まぁこの管理部喪失状態で新設も何もないんだけど。えーっとここにメンバーリストが…………ふふふふふ……」
と、そこまで一気に話した後、ティーは地図をめくって下敷きにしていた紙っぺらを引き出して、一目見た瞬間膝から崩れ落ちた。「どうしましたよ?」とシオンが寄っていくとテーブルにしがみついて復活、持ってる紙をシオンへ渡し、そしてシオンを同じ目に遭わせる。部隊番号と隊員名が手書きしてあるだけのもので、名前は4人分、番号は777を要求している。シオンの後ろに回ってヒナも見てみると、「よろ♡」という付け足しと共にこう書いてあった。
隊長、アトラ
副隊長、ティオ
参謀長、鈴蘭
兵器部長、クロ
うん
まぁ、知ってた。
「はいどーもーー!!」
あと本人来た。
「おうおう……」
「挨拶に来た! 直に合うのはダム以来? いやーあのとき痛かったなー!」
「うぉ…痛覚あったの…?」
「ないよ!」
「うわぁぁぁぁん苦手ぇぇぇぇ!!」
いきなり乱入してきたクロこと新造バトルドールScMW-2、すなわち元サイクロプスは数秒でティーをノックアウト、持ってきたなんかの包みをテーブルに置いた。"袖の下"とか書いてある。その間にメルも現れた、惨状を見て流石に引き笑い、ヒナの隣まで寄ってくる。
「いつの間にデータ抜いたの」
「バックアップだから、前回の戦闘は覚えてないよ」
なるほど、撤退の合間を縫って回収した訳ではないのか。なら、彼女…?の残骸はバンカーに放置されたまま。
「えーっと? シオンとは話すの初めてだよね?」
「まぁ…いやちょっと待て、お前┌(┌^o^)┐なの?」
「うん、ボクこないだまで┌(┌^o^)┐だったよ」
「姐さんその顔文字は駄目だ、意味が変わる」
とにかく、喋れるようになったと思ったらこの有様だ。外観はメルかアトラの趣味だろうが、まさかのハイテンション、まさかのボクっ子。いやそのへんも設定いじればどうにでもなるのだろうが。
「あの……この包みは何…?」
「ティーセット!」
「うわぁぁぁぁんいつか言われると思ってたけど今言われたぁぁぁぁ!!」
そしてティー再びのノックダウン。
「収拾ついてないんだけど……」
「だね」
「だねじゃなくて……あぁもう一回静かにしなさいアンタは!!」
これは放っておいたらいけないやつだ。
カオスすぎる現状に対して、仕方なくヒナが元凶を押さえにかかる。
「はいよ」
苦労して奪い取った大規模工場施設だったが、当初求めていた役割をほぼ果たすことなく生産品の送り先を失ってしまった。現在は全生産能力を自身の防衛力強化に当てており、機銃や砲が所狭しと並べられていく。ここだけは放棄できない、との判断だ、バンカー奪還の可能性を維持するためにも。
で、それを実行する上で先に済ませなければならないであろう大大大遠征に備え武器の増備やら強化を受けていたヒナだったが、通信機から聞こえてきたシオンの指示に従い完全分解状態のセミオートスナイパーライフルから手を離す。部品が散らばったテーブルには布をかけておいて、照明を消し、部屋を出る。
「うん?」
そうしたら宿舎|(テント)のすぐ前で見知らぬ少女が壁に張り付いているのに出くわした。
肩にギリギリ届かない、ただ両側の一房ずつだけが胸あたりまであるピンク色の髪をした少女である、身長はヒナより僅かに低い程度、ワイシャツの上に赤いセーターを重ね着し、黒のネクタイを締めている。プリーツスカートは白で、足を黒タイツが覆う。張り付いているというのはまさにそのまま、体の前面を建物の壁にぺったり付けて、両手両足をわさわさ動かしているのだ。手、反対側の足、また手、最後の足と順番に動かす様は昆虫やクモのようであり、たぶん壁を登りたいのだと思われる。
「あ」
と、思わず観察していたら気付かれた、手足わさわさをやめ、体の正面をヒナへ。壁を指差し笑顔で跳ね始める。
「ヒナー! 見て見て全然登れなーい!」
「えっ、まぁ、そりゃ」
不等号みたいな目して大笑いする彼女はやはり登りたかったようだ、そのコンクリ製の工場の壁をハシゴもロープも無しに。というか面識あっただろうか、バンカーに住んでいた同年代の女性は把握していた筈だが、あいにく覚えが無い。しかし向こうはヒナを知っているようで、あはあは笑いつつ名前を連呼してくる。
「ワンチャンいけるかもって思ったんだけどねー! やっぱアンカーないと無理だなー! それか吸盤か!」
つーかテンション高いな、鈴蘭以上だ。
「ヒナはどこ行くのー?」
「指揮所までだけど……」
「じゃあボクも行くー!」
うん、やっぱりヒナは初対面だ、こんなボクっ子は見かけた事が無い。いやでもめっちゃ懐かれてるし、向こうはかなり親しい間柄と思ってるみたいだし。
「あ、いたいた」
なんて考えてたら道の先からメルが現れた、このピンク頭を探していたようで、右左と首を回して姿を見つけると手を挙げて手招き。
「クロ! 最終調整まだなんだから動かないでって! 早く戻るよ!」
「ありゃ、はいはーい! ごめんヒナまた後でー!」
で、メルに従って彼女は走り去っていく、姿が消えるまで終始大笑いしていた。向かったのは完成品検査区画だろうか、元はバトルドールやユニバーサルドールの製造ラインで、設備はそのまま残っていたはず。
メルと知り合いだったというならやはりどこかで会った事があるのだろう、本当にまったく覚えが無いのだが。商店の方で働いてたとかそんな感じかもしれない、特に食料品の区画はフェルトしか寄り付かなかったし。
「…………てか今あいつクロって言った?」
「おや、ヒナ先生、こんな所で棒立ちしてどうしたんすか」
まぁいいとにかくブリーフィングに、と思った直後、重大な事に気付いて勢いよく首をぶん戻す。ほぼ同時、同じく指揮所まで向かっていたシオンに見つかる。
「急ぎますよ、我々の明日に関する話だ」
「でも今クロって、メルがクロって女の子」
去っていった方向を指差し割と慌てて言うも、問答無用に指揮所まで手を引かれていく。宿舎と同じくテント張り、野外イベントや運動会で設営される屋根だけのキャンバス製テントをデザートカラーに染めたタイプで、テーブルに広げられた地図と通信機、モニター数台などがある。数人の兵士からテーブルを挟んで報告を受けるのはティーとレア、地図上の一点を見つめて、何かを書き込んだりしている。
「トンネルですか?」
「そう、捕虜の証言通りの場所だ、可能なら24時間以内に出発するけど……ちょっと待って。レア、全隊に準備をさせてくれたまえ」
「取り決め通りでいいのかしら?」
「さっきの部隊はキミの指揮下でいいべな」
「あら。じゃあ偵察にはそれを出すわね」
報告を終えた兵士と一緒にレアはテントを離れ、ティーとシオン、ヒナだけが残る。ティーは地図への書き込みを継続、部隊の北上を阻む山脈を貫通するトンネルを記しているようだ。
「……ねえピンクの髪の子見なかった?」
その間、改めてさっきの件をシオンに聞いてみる。メルがクロと呼んでいたあの子だ、名前を聞くまではどうでも良かったのだが、どうにも覚えがあるというか。
「私よりちょっと低いくらいで鈴蘭超えのテンションな」
「いやそんな珍生物は……」
「メルについてったんだけど」
「……それってシオンとヒナとメルとフェルトを足して4で割ったような子?」
「何それ聞き捨てならない」
シオンは知らなかったがティーが知っていた、ペンを置いて頭を上げ、左右の長さ違いな髪を示すジェスチャー。
「クロって名前だっけ? さっき鈴蘭とアルプス一万尺してるの見たよ」
「うわあ地獄絵図」
「何が気になるの? 変わった子だったけど正直キミらの周り変わった子まみれだし」
ティーは気付いていないようだ、いや気付く訳が無いか、可能性があるのはメルの他にはフェルトだけだろう。
要するに聞きまくった名前なのだ、というか呼びまくった名前なのだ。ティーにとってはあまり馴染みの薄い、サーティエイトにとっては馴染みすぎて違和感を感じられない、死ぬほど(死ななかったけども)戦ったあの存在。わからないティーと気付かないシオンの為に言い放つ。
「だってクロってサイクロプスのクロでしょ?」
時間が止まった、いや実際止まってないのだが、僅かに吹く風の音しか聞こえなくなるくらいにテントの下は色々止まった。ティーは不自然に口を曲げたまま、シオンは限界まで目線を斜め上に向けたまま停止。しばらく無音でそのまま過ごし、遠くで砲台の設置作業と思われるハンマーを連打するような音がし始めた頃、ゆーーっくりとティーの手がドリンクボトルに伸びていく。持ち上げ、中身を一口飲んで、元に戻し、深呼吸ひとつ。
「2部隊、ヘリで先行させて偵察を行う、片方をサーティエイトで予定してるんだ」
「ちょっと聞かなかったことにしないで」
「トンネル内部を探索するかは未定、余裕があれば中も見て欲しいけどクレムリンがトラップ仕掛けてるかもしれないから判断は慎重に」
「あぁもう……」
息を吐き終えた後、当然とばかりにブリーフィングは始まった。その議論をこれ以上する気は無いという態度に、シオンを追ってヒナも地図を取り囲む。
目下の問題だった山脈の攻略手段に関する話である、反対側へ抜ける方法を探していたのだが、クレムリンの捕虜を尋問したところトンネルの存在を漏らしたので、今まで真偽を確認していたのだ。話によるとヒナとフェルトが近付いた事がある原子力発電所から西に50kmほど先、高度3000mに反対側まで抜けるトンネルの入口があるとのこと。現在は飛行するヘリの機上から目視したのみで、しかも燃料がギリギリだったため詳細は不明、だから歩兵を派遣する必要がある。
「侵入する場合、トンネルは長さ20キロ以上ある、端から端まで徒歩で調べるのは不可能だ。そこでちょっと回りくどいんだけど、原発近くの平原にドロップポイントを置く。ヘリで車両を吊り下げていって、キミたちはそれに乗ってトンネルへ。ヘリは燃料が不足するだろうから本隊到着まで平原で待機、よって必然的にこの平原へ仮拠点を置く事になる。現地行ったことあるんだよね? どこかいい場所は無かった?」
「ゴーストタウンがある、リフォーム済みの建物がいくつかと、発電所とのケーブルも敷いてあったはず」
「ああ、例のAIか。確か谷の中に集落があるんだっけね、そっちはどう?」
「リーダー格はフェルトが反省させてた」
「反省(物理)」
「うんオーケー、お近付きにならない方が良さそうさね。ではゴーストタウンとやらを第1中継点としよう、ここを拠点に山脈の反対側を探索していく。じゃあ出発は明日の日の出前、それまでにもう1部隊と打ち合わせを」
「どこの誰すか?」
「レア中隊からの派遣だ、数時間前に新設の分隊でね、まぁこの管理部喪失状態で新設も何もないんだけど。えーっとここにメンバーリストが…………ふふふふふ……」
と、そこまで一気に話した後、ティーは地図をめくって下敷きにしていた紙っぺらを引き出して、一目見た瞬間膝から崩れ落ちた。「どうしましたよ?」とシオンが寄っていくとテーブルにしがみついて復活、持ってる紙をシオンへ渡し、そしてシオンを同じ目に遭わせる。部隊番号と隊員名が手書きしてあるだけのもので、名前は4人分、番号は777を要求している。シオンの後ろに回ってヒナも見てみると、「よろ♡」という付け足しと共にこう書いてあった。
隊長、アトラ
副隊長、ティオ
参謀長、鈴蘭
兵器部長、クロ
うん
まぁ、知ってた。
「はいどーもーー!!」
あと本人来た。
「おうおう……」
「挨拶に来た! 直に合うのはダム以来? いやーあのとき痛かったなー!」
「うぉ…痛覚あったの…?」
「ないよ!」
「うわぁぁぁぁん苦手ぇぇぇぇ!!」
いきなり乱入してきたクロこと新造バトルドールScMW-2、すなわち元サイクロプスは数秒でティーをノックアウト、持ってきたなんかの包みをテーブルに置いた。"袖の下"とか書いてある。その間にメルも現れた、惨状を見て流石に引き笑い、ヒナの隣まで寄ってくる。
「いつの間にデータ抜いたの」
「バックアップだから、前回の戦闘は覚えてないよ」
なるほど、撤退の合間を縫って回収した訳ではないのか。なら、彼女…?の残骸はバンカーに放置されたまま。
「えーっと? シオンとは話すの初めてだよね?」
「まぁ…いやちょっと待て、お前┌(┌^o^)┐なの?」
「うん、ボクこないだまで┌(┌^o^)┐だったよ」
「姐さんその顔文字は駄目だ、意味が変わる」
とにかく、喋れるようになったと思ったらこの有様だ。外観はメルかアトラの趣味だろうが、まさかのハイテンション、まさかのボクっ子。いやそのへんも設定いじればどうにでもなるのだろうが。
「あの……この包みは何…?」
「ティーセット!」
「うわぁぁぁぁんいつか言われると思ってたけど今言われたぁぁぁぁ!!」
そしてティー再びのノックダウン。
「収拾ついてないんだけど……」
「だね」
「だねじゃなくて……あぁもう一回静かにしなさいアンタは!!」
これは放っておいたらいけないやつだ。
カオスすぎる現状に対して、仕方なくヒナが元凶を押さえにかかる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
独身おじさんの異世界おひとりさまライフ〜金や評価は要りません。コーヒーとタバコ、そして本があれば最高です〜
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
ブラック企業で身も心もすり減らした相馬蓮司(42歳)。
過労死の果てに辿り着いたのは、剣と魔法の異世界だった。
神様から「万能スキル」を押し付けられたものの、蓮司が選んだのは──戦いでも冒険でもない。
静かな辺境の村外れで、珈琲と煙草の店を開く。
作り出す珈琲は、病も呪いも吹き飛ばし、煙草は吸っただけで魔力上限を突破。
伝説級アイテム扱いされ、貴族も英雄も列をなすが──本人は、そんな騒ぎに興味なし。
「……うまい珈琲と煙草があれば、それでいい」
誰かと群れる気も、誰かに媚びる気もない。
ただ、自分のためだけに、今日も一杯と一服を楽しむ。
誰にも縛られず、誰にも迎合しない孤高のおっさんによる、異世界マイペースライフ、ここに開店!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる