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07 新事実過ぎるんですけれど

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前から完全に交流がなかった訳では無いのだけどウィリアム王子が来てからというもの、避けていたはずの攻略キャラ達に遭遇してしまっている率が高い。
これは王子が物珍しくてこちらに声をかけているのかしら…私を通訳者的な感じにとっているの……?

だとするならば非常に迷惑な話である。

通訳はおろか言葉も理解していないというのに……むしろ王子は言葉の理解は出来るみたいだし……。

今日は何事もなく過ごせるといいなぁ…

寮から学校へ向かいながら未だぼんやりとした頭で思うと、後ろから走っているのかやけにうるさい足音が聞こえてくる事に気付く。

───全く朝から元気なものですね。

なんて呑気に思っていたことを私は直ぐに後悔することとなる。
勢いのまま、私の目の前に回り込んで来た人影に肝を冷やした。

「っ!!」

「お嬢様!ご無事ですか!?」

予期せぬ出来事に一歩後ろを歩いていたナズナも隣に駆け寄るくらいには凄まじい勢いだった。
仮にも上品な貴族の子息子女が通う学校とは思えない…軽く土煙まで立ち上っている。

「おはようございます!イリス様!勢いがつきすぎてしまって……大丈夫でしたか?」

「ごきげんよう……朝から元気ですわね、フォセカ様」

「レディに対するマナーがよろしくないかと」

「も、申し訳ありません……イリス様…」

ナズナは私の服に付いたであろう砂埃を払うために服をポンポンと叩きながら事の元凶に棘のある言葉を投げていた。
本当に彼女は自身の身分を顧みないところは直すべきだと思うの……
そして彼がこれをする相手はヒロインだった筈だ。
ディモル・フォセカは辺境伯出身でありながらヒロインと幼馴染という関係で将来的には学園を卒業し次第、辺境伯の騎士として国防の要となる人である。
そのためか、元気がありあまる彼の位置付けはワンコ系として明るくポジティブなのがウリだ。

───実際やられるとこれ疲れるのね…

ナズナにたしなめられるとしゅんと耳としっぽさえ見えてきそうなほど落ち込んだ表情を見てナズナでさえもちょっと言い過ぎたかなと眉を下げた。

流石忠犬キャラ…あざとさは人一倍ね。

「いいえ、別に私は怒ってなくてよ。それで、朝から急いでなんの御用かしら?」

「……!ありがとうございます…!流石聖じ…ごほん、イリス様!噂通りお優しい…!」

気の所為でなければ今、聖女って言わなかった…?
まさかと思うけれどディモルはファンクラブに関係してたりするんじゃ……

「ご提案と言いますかなんと言いますか…ローズ祭でのイリス様のパートナーの立候補をしに参りました!」

ふふん、と得意げな笑顔で言い放った言葉に私は固まり、周囲はざわつき始めた。
『あのイリス様にパートナーの立候補ですって……』とか『え、でもウィリアム王子は…?』とか『クソ羨ましい……』とかそれはもう様々な感想が声を潜めて飛び交っているが、それは束となれば虚しくも聞こえるものなのである。

「王子の事はご心配なさらず!幼馴染がお誘いするらしいんで、俺がイリス様をお誘いした次第です!」

なんともまあ、根回し済みかと言いたくなるけれど『幼馴染』というワードを聞いてこの誘いを受けてもいいかと思えてきた。
ディモルの幼馴染は言わずもがなリナリアの事を指す、つまりはフラグが順調に立ちつつある証拠だ。
フラグを避けるのなら無関係とまでは行かなくとも別の人を選べばいい話、となれば答えも自ずと出るものというもの。

「そうね……そのお話、受けても構いませんわ」

「本当ですか!?いやったーーー!!」

「お嬢様!?」

「大丈夫よ、ナズナ。どうせ組む相手も居なかったんですもの、侯爵に並ぶ辺境伯家ならば両親からもお咎めはないでしょうし」

「で、ですが彼は……」

ごにょごにょと言葉をすぼめてしまったナズナに首を傾げるとそっと耳打ちをしてくる。

「彼はお嬢様のファンクラブのナンバー2なんですよ……!」

「ごふっ!?」

ナズナが何故それを知っているのかはさて置き、なんて言うことでしょう!?
攻略キャラが私のファンクラブの会員、それもナンバー2だなんてそんな新事実知りたくなかった!!!!


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