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13 類は友を呼ぶって奴ですか

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グラジオにしてやられた私はその彼に連れられて会場へやって来ていた。
パートナーとは基本的には現地で合流する人が多くでそれまでは家族と居たりする人もいるので、一緒に居るこの状況はまだ許容出来るのだけど…

────とにかくくっつきすぎ!!

腕をがっちりとホールドされて離れたくても離れられないでいるのだけどグラジオのパートナーは一体どこに……??

「そんな顔しなくてもちゃんとボクもパートナーいるから安心してよ、姉さん」

おかしそうに笑いながらグラジオはきつく抱き着いていた腕の力を緩めた。

「それまではくっついていてもいいでしょ?」

「ま…まあ……それまでよ?」

「ありがと!姉さん!」

「まぁ、聞き及んでいた通り!素敵なお姉さまですわね、グラジオ様」

前からゆったりと上品に歩いてきた薄桃色の可憐な少女がそんな珍妙な私達に声を掛けてきた。

「あ、ミルト。もう来たんだね」

「もう少し時間を稼ごうかと思ったのですけれど両親が急かすもので……お邪魔して申し訳ありませんわ…」

なんだかやり取りが明らかに彼女がへりくだってるせいで普通の同い歳の友人には見えないのだけれど……どういう関係なのかしら……。

「姉さん、紹介するね。こちらミルトニア・オーキッド伯爵令嬢だよ。ボクと話が合う友達なんだ」

「イリスお姉さま、お初のお目にかかります。ミルトでもミルでもお好きにお呼びくださいませ」

「お、お姉さま……??」

どうして唐突にお姉さま呼び!?グラジオと婚約でもするのかしら……?
困惑している私にミルトニアは可愛らしくクスリと笑う。

「わたくしよりもお姉さまなんですもの、お姉さまとお呼びするべきですわ…!」

「そ、そうなの……?かまわないけれど…」

うっとりと頬を染めながら熱く語るミルトニアに気圧されてそう言えば、彼女は更に恍惚とする。

「まぁ、まぁ……!うふふ、心の広いお姉さま最高ですわ…」

何だかこれはグラジオと話が合うだけあるご令嬢の様だ、どこか同じ匂いを感じるわ……。

「ちょっと、ボクを置いて盛り上がるなんて酷いよ姉さん」

置いてけぼりを食らっていたグラジオはぷくーっと頬を膨らませて緩めていた腕への力を戻してきた。

「うふふ…ごめんあそばせグラジオ様。ですがそろそろ、わたくしの方に来ていただきませんと……」

ちらりと後ろを苦笑い気味のミルトニアが見ると視線の先には呆れからかジト目のハイドが立っていた。

「あら、ハイド様」

「はは、今気付いたって感じだね…」

「はぁ……姉さん、あとでボクとダンス踊ってね!」

「ええ、分かったわ。またあとで」

盛大な溜め息と共にようやくグラジオが私の腕から離れてミルトニアの元へ行く。
これからダンスの時間が始まるために二人は近くには残らず、そのままホールへと向かって行った。
赤髪と桃髪なんて色合いはお似合いだ、関係はただの友人の様だけど。

「それじゃあ、行こうか?お姫様。」

「余計なお世辞は要りませんわ、お姫様なんて程美しくも可愛くもありませんもの」

「それこそ謙遜だね、今の君はいつもよりも綺麗に輝いてる」

うわあああ……そんなキザなセリフよくスラスラと…

甘すぎて赤面すら出来ずに真顔になってしまうのだけど仕方が無いわよね!?

「はは、ホント僕に興味皆無だよね」

「別に、誰にでも私はこうですわ」

「それは確かにねぇ」

流れるように差し出された腕を組みダンスホールへと足を踏み入れると優雅な音楽と、そして多くの人の視線だった。

流石はハイド、目立つわね……

ハイドへの黄色い声や羨望の視線とヒソヒソ声は貴族をやって来ていてもやはり慣れないものである。

そしてその視線の中には─────

この世界の主人公でありヒロインのリナリアがウィリアム王子と共にいた。
やはり順調にウィリアムルートへ入って来ているのだろうか、だとするのなら完全に今の構図は私が悪役令嬢の立ち位置になってしまうのだろうな。
さてどうやってこのフラグから逃げ出そうかと考えていた私には目を伏せていた王子が私を見ていた事などには気付くことは無かったのだった。


フラグ、順調に組み立て中のようです……


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