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24 いじめダメ絶対ですよ!

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下町の収穫祭から生還した翌日、私はぐったりと机に突っ伏していた。
流石に疲れたけれど休んでいる暇もない。
私が居ない間に余計なフラグが立つなんてごめんだ。
ナズナには心配されて休むように言われたけれど無理を言って出席しました。
何を思ったのかウィリアム王子は貫いていた無言をやめ、少しずつではあるものの話しかけてくるようになった。

昨日と今日で一体何があったのやら……

元々席は隣同士なわけだしまるで冷戦状態よりはずっといい。
そんな訳で机に突っ伏している私の隣には王子が居るし、近くには心配そうにしているディモルも居る。
残り二人の攻略キャラは、取り巻きファンたちに追いかけられたり集まられてたりと忙しそうです、ご愁傷さま。
というかこの状況、リナリアヒロインは何処へ……?
最近はウィリアム王子と共に行動していたような気がしたけれど、彼は今何故か隣にいるし……
ふと廊下からクスクスと笑いながら数名のご令嬢が小走りに教室へやって来たのに気が付いた。
……なにやら非常に嫌な予感がしてならない。
私は彼女達がやって来た方へ行ってみようと立ち上がった。
ディモルや王子を連れて行くと目立つので適当に言い訳をして二人を撒いてくるとその方向へと向かう。
この嫌な予感だけは当たらないで欲しい。
そのフラグだけは立って欲しくないと進む足は急いだ。
その先には空き教室があり、中では俯いたリナリアが座り込んでいた。

「っ……!!どうされたのですか…!?」

これはまさか。

もしかしなくともそういう事だろう。

「…っ!?…あ……イリス様……?どうしてここに……」

直接的に関わった事はないのにリナリアは私の名前を覚えていたらしい。
流石はヒロイン、そういう所も完璧らしい。

「…一体こんな所でどうされたのですか?普段ここは使われない教室のはずですのに……」

「……そういうイリス様はどうしてここへ来られたのですか?」

「数名の女生徒が妙な行動をしていたので気になりましたの」

ほんの少し狼狽えた様子のリナリアは私に逆に聞いてきたので素直に答えた。
何もおかしな所はない理由だし、私としてはここでが立つのは防ぎたかった。
こういう時、リナリアの元に駆けつけるのは大体攻略キャラだったりするものだ。
それは先に私が駆けつけて防いでしまおう。
逆に誤解を生む可能性も否定は出来ないけれど。

「な……なんでもありませんわ……お気になさらず」

あくまで気丈に振る舞うリナリアの態度で私は確信した。
彼女へのいじめが始まったのだ……!!

「どうしたノ?」

「ウィリアム殿下……!」

いつの間にか私について来ていたのか、ウィリアム王子は廊下からひょっこりと顔を出した。
なんてタイミングの悪さなのだ、これでは変に誤解されてしまうではないか。
よりにもよって攻略対象の中でも一番の有力候補であるウィリアム王子が来てしまうとは。
やはりこうなるのは宿命なのだろうか…。
王子は状況が分からないのか、困ったように首を傾げて固まってしまっていた。

「おっと……君達そこで何してるの?」

ようやく取り巻き達を撒いて隠れ場所としてここに逃げてきたと思しきハイドまでもが来てしまった。
更にこれは内容が拗れそうで、私は下手に動けなくなっていた。

「え、ええと……なんと言いましょうか……」

せめて言い訳くらいはしてもいいのでしょうか、余計に拗れる?
とにかく……いじめダメ絶対なんです緊急事態なんです……。

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