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40 観察、それから
しおりを挟む生徒会長こと、ブランシュ王子の情報から家柄と家族関係を聞き出した私は絶賛彼を遠巻きに観察しています。
ルートを知らないなら予想してみよう作戦である。
次期教皇と言うだけあって闇の深そうなキャラではあるものの、ヒロインと接する彼の姿は特に問題があるようには見受けられない。
冷えた家庭の割に実は父親寄りの感じなのかしら……?
男の子って母親寄りになる傾向があるって前世の知識ではあった気がしたんだけど…。
遠巻きとはいえ、流石に見つめすぎたのかクリビアの視線がこちらを捉えた気がした。
すぐに視線は外されたが、その瞳はふっと細められた。
……笑っ……た?気付かれたのかしら?
笑ったかと思えばクリビアはリナリアを連れて私から見えないところへ行ってしまう。
な、なによ……今絶対あからさまに視線から逃げたわよね……!?
ガタリと立ち上がった私だったが周りにいたディモルやハイドがキョトンと驚く。
「ノタイ モデト ヒルナニ キカレダ」
「あ……ウィリアム殿下……いえ、なんでもありませんの」
何を言っているかは未だわからないけれど、現状の雰囲気から恐らくはどうかしたのかと言うニュアンスだったのでそう答えた。
過敏に反応している自覚はあるけれど、この国に関わるということは攻略キャラたちや私にも影響を及ぼすということ、そうなるのは不本意だしわかっているのなら防ぎたいと思ってしまう。
──たとえそれが運命に反していたとしても。
「少し席を外しますわ」
声を掛けられていた手前、何も言わずに移動するのはどうかと思った私はそう言うと彼らの姿を追った。
わざと移動したようにしか見えなかったけど何かのイベントが起きているのかもしれない、目を離して目に見える訳でもないけれどみすみす好感度の変化を見逃すのは嫌だ。
それは元プレイヤーとしてのシナリオへの好奇心なのか、イリスとしての危機感なのか…もはや分かりもしない。
「どこへ行くんだ?イリス嬢」
「……っ!」
廊下で私を呼び止めたのはムーランだった。
なんて言うタイミングだろう、まるで私を彼らに近付かせないために用意されたかのようだ。
「少し…所用がありまして」
「こんなに人気のない所へか?」
「っ…え、ええ……」
そうは言ったって人気のない所へ二人が行くものだから……!
だなんて言える訳もなく、曖昧に苦笑するしかない。
「ついこの間騒ぎが起きたばかりだろう、一人で人気のない所へ行くのは好ましくない」
今についてくると言いたげなムーランにどうしたものかと困っていると、教室から外へ出たことに気付いたナズナが私の後ろにつく。
ナイスタイミングだわ、ナズナ……!
「一人ではありませんわ、私の使用人もおりますもの」
社交用の薄い微笑みを浮かべ、ムーランの言葉をかわす。
ナズナも私の言葉に合わせてぺこりと礼をすると、私達はムーランの横を通り抜けた。
本当にいいタイミングで来てくれるのだからナズナは凄いわね、流石は私専属のメイドだわ。
「なら一つ忠告をしておく、藪をつついて蛇を出す…だあまり嗅ぎ回ってもいい事は無いぞ」
「……肝に銘じておきますわ」
何故彼がそんなことを言うのかは知らないけれど、分かっている。
引っ掻き回してのちのち痛い目を見るのはきっと私だ。
だけど諦められることでもないのだ。
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