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第51話 街の彩りと王女の庭
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朝露が牧草に輝く早朝、白石牧場の門前には二人の女性の姿があった。リーフィアの銀色の髪が朝日に輝き、ミリアムはバスケットを手に楽しそうに笑っている。
「行ってきますね、悠真さん!」
「気をつけて。買い物リストは見たか?」
悠真は柵に寄りかかりながら、二人を見送る。彼の黒髪が朝の風に揺れていた。
「はい!ばっちりです!」
ミリアムが元気よく手を振る。リーフィアも優しく微笑み、静かに頭を下げた。
「では、行ってまいります。お留守番、よろしくお願いします」
「任せとけ。アースもウィンドも元気にしてるよ」
悠真の言葉に応えるように、新しい仲間のアースが地面から顔を出し、首を振った。
――――――
アスターリーズへの道は、春の息吹で溢れていた。道端には色とりどりの野花が咲き、甘い香りが漂う。ミリアムはリーフィアの腕を取り、はしゃぐように歩く。
「リーフィアさん、アスターリーズは初めてですよね?私がいいところ、全部案内しますね!」
「ありがとうございます、ミリアムさん。楽しみにしています」
リーフィアの碧色の瞳が、期待に輝いていた。月影村の記憶が戻ってからというもの、彼女の表情はより豊かになっていた。
「まずは中央広場に行きましょう。今日は市場の日だから、色んなお店が出ているはずです!」
ミリアムの予想通り、広場は活気に満ちていた。露店が所狭しと並び、行き交う人々の笑い声や商人の呼び込みが響く。
「わぁ……」
リーフィアは思わず足を止めた。故郷の月影村は山奥にあったため、このような街の様子や人の往来の多さはリーフィアには新鮮だった。
「あそこの果物屋さんのフルーツは特に美味しいんですよ!」
ミリアムに導かれるまま、リーフィアは市場の雑踏に身を委ねた。果物屋では甘い香りのリンゴを、織物屋では柔らかな肌触りの布を、そして香辛料の店では心地よい刺激の香りを楽しんだ。
「次はどこへ行きましょうか?」
リーフィアが尋ねると、ミリアムはキラキラした目で空を指さした。
「あの塔が見えますか?あそこには時計台があって、とても素敵な眺めなんですよ!」
二人は石畳の坂道を上り、時計台へと向かった。階段を登りきると、そこには街全体を見渡せる展望台があった。
「すごい……」
リーフィアの声に感嘆の色が混じる。眼下には赤茶色の屋根が整然と並び、その向こうには緑の丘陵地帯が広がっていた。
「あそこに見えるのが王宮です。きらきらしてて素敵でしょう?」
ミリアムが指さす方向には、白亜の壁と青い屋根を持つ優美な建物があった。
「王宮……あそこが……」
リーフィアは一瞬、物思いにふけるような表情を見せた。
「あ、そうだ!王宮の前にはお花屋さんがあるんですよ。リーフィアさんはお花が好きでしょう?行ってみませんか?」
――――――
王宮前の大通りには、確かに素晴らしい花屋があった。様々な色の花々が並び、その香りに包まれて二人は時間を忘れて見入った。
「この青い花は、月光草に似ていますね」
リーフィアが手に取ったのは、淡い青色の花だった。
「これはスターブルームというんですよ。夜になると星のように光るんです」
花屋の主人が優しく説明してくれる。リーフィアは懐かしそうに微笑んだ。
「私の村にも似たような花がありました」
話に夢中になっていると、突然、近くから優雅な声が聞こえてきた。
「あら、ミリアムさんとリーフィアさん?」
振り向くと、そこには淡い金色の髪を持つ凛とした女性が立っていた。柔らかな青のドレスに身を包み、穏やかな笑みを浮かべている。
「アリシア様!」
ミリアムが驚いて小さく会釈をする。バストリア王国の第一王女、アリシア・バストリアだった。
「偶然ですね。お二人とも元気そうで何よりです」
「はい!今日はリーフィアさんに街を案内しているんです」
アリシアは二人に親しげな視線を向けた。
「そうでしたか。よろしければ、少し王宮の庭でお茶をしていきませんか?ちょうど素敵なハーブティーが届いたところなんです」
「え、いいんですか!?」
ミリアムの驚きの声に、アリシアは優しく微笑んだ。
「ええ、もちろんです。私も少し息抜きがしたかったところでしたから」
――――――
王宮の庭は、まるで絵画のように美しかった。整然と植えられた花々、清らかな水が流れる小川、そして緑の芝生が広がる。
アリシアに案内された場所は、石造りのあずまやだった。そこには既にお茶の用意がされている。
「どうぞ、お掛けください」
三人が席に着くと、侍女たちが紅茶とケーキを運んできた。薫り高い紅茶に、色とりどりのミニケーキ。ミリアムの目が輝いた。
「わぁ、素敵です!本当にいいんですか?」
「どうぞ遠慮なく。このケーキ、実は白石牧場の羊乳を使っているんですよ」
アリシアの言葉に、リーフィアは驚きの表情を見せた。
「サクラの乳を?」
「ええ、治癒の力を持つあの子の乳は、体に優しいと評判なんです。今、宮廷料理人たちの間で密かな流行になっているんですよ」
三人は和やかに会話を弾ませながら、紅茶とケーキを楽しんだ。春の陽射しが彼女たちを優しく包み込む。
「最近の牧場の様子はどうですか?」
アリシアの問いに、ミリアムが嬉しそうに頷いた。
「大きな岩亀と、白蛇の子が増えましたよ。それぞれストーンとアースって名付けたんです。特にアースは地面に潜ることができて、すごく不思議な子なんです」
「まあ、興味深いわ。またいずれ、私もお邪魔しに行きますね。ステラやルミちゃんにも会いたいですし」
会話が弾む中、リーフィアはふと思い出したように、小さな封筒を取り出した。
「あの……アリシア様、お願いがあります」
「なんでしょう、リーフィアさん」
「これを、もしよろしければ……」
リーフィアは丁寧に封筒をアリシアに差し出した。上品な紙に、美しい筆跡で何かが書かれている。
「この手紙は?」
「異世界から召喚された勇者の方々へ、月影村を救ってくださったことへのお礼の手紙です。お届けいただけると幸いです」
アリシアは静かに頷き、封筒を受け取った。
「わかりました。必ずお届けします。彼らのおかげで、多くの村や町が救われているんです。この手紙をみたら、彼らもきっと喜ばれると思います」
「ありがとうございます」
リーフィアの表情に、安堵の色が浮かんだ。胸に秘めていた感謝の気持ちを伝えられる安心感から、彼女の瞳が潤んだ。
「さて、では続きをお聞かせください。白石さんの牧場の様子や、皆さんのことなど」
アリシアの言葉に、ミリアムが元気よく話し始めた。
「そうそう!アースくんが来た日にお花見をしたんですよ。そしたらいつの間にかアースくんが紛れていて……」
「まあ、そんなことが」
「リーフィアさんが作った料理がすごく美味しくて、みんな喜んでました。アズールちゃんとシャドウちゃんもケーキを取り合いしてて、もう大変でした!」
ミリアムの楽しげな話に、アリシアもリーフィアも笑みを浮かべる。春の陽気の中、王宮の庭での女子会は続いた。
「それでは私からも少し。実は先日、エイド研究員から白石牧場の報告書を拝見したんです」
アリシアはティーカップを置き、二人に微笑みかけた。
「皆さんのおかげで、希少生物の保護に関する新たな知見が得られたそうです。王国としても、白石牧場の活動を今後も支援していきたいと考えているんですよ」
「本当ですか?悠真さん、きっと喜びます!」
ミリアムが嬉しそうに声を上げる。リーフィアも穏やかに微笑んだ。
「アリシア様のご厚意に、心より感謝申し上げます」
そうして三人の会話は尽きることなく続き、気がつけば陽はすっかり西に傾いていた。
「あら、もうこんな時間。お二人もそろそろ帰らないと」
「本当だ!買い物もまだ終わってないのに!」
慌てるミリアムに、アリシアが優しく笑った。
「またいつでも来てくださいね。その時はぜひ白石さんもご一緒に」
「はい!今日はありがとうございました!」
「お心遣い、感謝いたします」
ミリアムとリーフィアはアリシアに別れを告げ、急いで残りの買い物を済ませた。帰り道、夕陽に染まる空の下、二人は今日の思い出を語り合った。
「素敵な一日でしたね、ミリアムさん」
「はい!アリシア様とお茶するなんて、夢みたいでした!」
リーフィアは柔らかな微笑みを浮かべ、西の空を見つめた。
「悠真さんに話したら、きっと驚くでしょうね」
「うん!アースくんとストーンくんにも、お土産買ったし!」
二人は笑い合いながら、白石牧場へと帰っていった。春の風が彼女たちの髪を優しく撫で、その日の思い出を心に留めるように。
「行ってきますね、悠真さん!」
「気をつけて。買い物リストは見たか?」
悠真は柵に寄りかかりながら、二人を見送る。彼の黒髪が朝の風に揺れていた。
「はい!ばっちりです!」
ミリアムが元気よく手を振る。リーフィアも優しく微笑み、静かに頭を下げた。
「では、行ってまいります。お留守番、よろしくお願いします」
「任せとけ。アースもウィンドも元気にしてるよ」
悠真の言葉に応えるように、新しい仲間のアースが地面から顔を出し、首を振った。
――――――
アスターリーズへの道は、春の息吹で溢れていた。道端には色とりどりの野花が咲き、甘い香りが漂う。ミリアムはリーフィアの腕を取り、はしゃぐように歩く。
「リーフィアさん、アスターリーズは初めてですよね?私がいいところ、全部案内しますね!」
「ありがとうございます、ミリアムさん。楽しみにしています」
リーフィアの碧色の瞳が、期待に輝いていた。月影村の記憶が戻ってからというもの、彼女の表情はより豊かになっていた。
「まずは中央広場に行きましょう。今日は市場の日だから、色んなお店が出ているはずです!」
ミリアムの予想通り、広場は活気に満ちていた。露店が所狭しと並び、行き交う人々の笑い声や商人の呼び込みが響く。
「わぁ……」
リーフィアは思わず足を止めた。故郷の月影村は山奥にあったため、このような街の様子や人の往来の多さはリーフィアには新鮮だった。
「あそこの果物屋さんのフルーツは特に美味しいんですよ!」
ミリアムに導かれるまま、リーフィアは市場の雑踏に身を委ねた。果物屋では甘い香りのリンゴを、織物屋では柔らかな肌触りの布を、そして香辛料の店では心地よい刺激の香りを楽しんだ。
「次はどこへ行きましょうか?」
リーフィアが尋ねると、ミリアムはキラキラした目で空を指さした。
「あの塔が見えますか?あそこには時計台があって、とても素敵な眺めなんですよ!」
二人は石畳の坂道を上り、時計台へと向かった。階段を登りきると、そこには街全体を見渡せる展望台があった。
「すごい……」
リーフィアの声に感嘆の色が混じる。眼下には赤茶色の屋根が整然と並び、その向こうには緑の丘陵地帯が広がっていた。
「あそこに見えるのが王宮です。きらきらしてて素敵でしょう?」
ミリアムが指さす方向には、白亜の壁と青い屋根を持つ優美な建物があった。
「王宮……あそこが……」
リーフィアは一瞬、物思いにふけるような表情を見せた。
「あ、そうだ!王宮の前にはお花屋さんがあるんですよ。リーフィアさんはお花が好きでしょう?行ってみませんか?」
――――――
王宮前の大通りには、確かに素晴らしい花屋があった。様々な色の花々が並び、その香りに包まれて二人は時間を忘れて見入った。
「この青い花は、月光草に似ていますね」
リーフィアが手に取ったのは、淡い青色の花だった。
「これはスターブルームというんですよ。夜になると星のように光るんです」
花屋の主人が優しく説明してくれる。リーフィアは懐かしそうに微笑んだ。
「私の村にも似たような花がありました」
話に夢中になっていると、突然、近くから優雅な声が聞こえてきた。
「あら、ミリアムさんとリーフィアさん?」
振り向くと、そこには淡い金色の髪を持つ凛とした女性が立っていた。柔らかな青のドレスに身を包み、穏やかな笑みを浮かべている。
「アリシア様!」
ミリアムが驚いて小さく会釈をする。バストリア王国の第一王女、アリシア・バストリアだった。
「偶然ですね。お二人とも元気そうで何よりです」
「はい!今日はリーフィアさんに街を案内しているんです」
アリシアは二人に親しげな視線を向けた。
「そうでしたか。よろしければ、少し王宮の庭でお茶をしていきませんか?ちょうど素敵なハーブティーが届いたところなんです」
「え、いいんですか!?」
ミリアムの驚きの声に、アリシアは優しく微笑んだ。
「ええ、もちろんです。私も少し息抜きがしたかったところでしたから」
――――――
王宮の庭は、まるで絵画のように美しかった。整然と植えられた花々、清らかな水が流れる小川、そして緑の芝生が広がる。
アリシアに案内された場所は、石造りのあずまやだった。そこには既にお茶の用意がされている。
「どうぞ、お掛けください」
三人が席に着くと、侍女たちが紅茶とケーキを運んできた。薫り高い紅茶に、色とりどりのミニケーキ。ミリアムの目が輝いた。
「わぁ、素敵です!本当にいいんですか?」
「どうぞ遠慮なく。このケーキ、実は白石牧場の羊乳を使っているんですよ」
アリシアの言葉に、リーフィアは驚きの表情を見せた。
「サクラの乳を?」
「ええ、治癒の力を持つあの子の乳は、体に優しいと評判なんです。今、宮廷料理人たちの間で密かな流行になっているんですよ」
三人は和やかに会話を弾ませながら、紅茶とケーキを楽しんだ。春の陽射しが彼女たちを優しく包み込む。
「最近の牧場の様子はどうですか?」
アリシアの問いに、ミリアムが嬉しそうに頷いた。
「大きな岩亀と、白蛇の子が増えましたよ。それぞれストーンとアースって名付けたんです。特にアースは地面に潜ることができて、すごく不思議な子なんです」
「まあ、興味深いわ。またいずれ、私もお邪魔しに行きますね。ステラやルミちゃんにも会いたいですし」
会話が弾む中、リーフィアはふと思い出したように、小さな封筒を取り出した。
「あの……アリシア様、お願いがあります」
「なんでしょう、リーフィアさん」
「これを、もしよろしければ……」
リーフィアは丁寧に封筒をアリシアに差し出した。上品な紙に、美しい筆跡で何かが書かれている。
「この手紙は?」
「異世界から召喚された勇者の方々へ、月影村を救ってくださったことへのお礼の手紙です。お届けいただけると幸いです」
アリシアは静かに頷き、封筒を受け取った。
「わかりました。必ずお届けします。彼らのおかげで、多くの村や町が救われているんです。この手紙をみたら、彼らもきっと喜ばれると思います」
「ありがとうございます」
リーフィアの表情に、安堵の色が浮かんだ。胸に秘めていた感謝の気持ちを伝えられる安心感から、彼女の瞳が潤んだ。
「さて、では続きをお聞かせください。白石さんの牧場の様子や、皆さんのことなど」
アリシアの言葉に、ミリアムが元気よく話し始めた。
「そうそう!アースくんが来た日にお花見をしたんですよ。そしたらいつの間にかアースくんが紛れていて……」
「まあ、そんなことが」
「リーフィアさんが作った料理がすごく美味しくて、みんな喜んでました。アズールちゃんとシャドウちゃんもケーキを取り合いしてて、もう大変でした!」
ミリアムの楽しげな話に、アリシアもリーフィアも笑みを浮かべる。春の陽気の中、王宮の庭での女子会は続いた。
「それでは私からも少し。実は先日、エイド研究員から白石牧場の報告書を拝見したんです」
アリシアはティーカップを置き、二人に微笑みかけた。
「皆さんのおかげで、希少生物の保護に関する新たな知見が得られたそうです。王国としても、白石牧場の活動を今後も支援していきたいと考えているんですよ」
「本当ですか?悠真さん、きっと喜びます!」
ミリアムが嬉しそうに声を上げる。リーフィアも穏やかに微笑んだ。
「アリシア様のご厚意に、心より感謝申し上げます」
そうして三人の会話は尽きることなく続き、気がつけば陽はすっかり西に傾いていた。
「あら、もうこんな時間。お二人もそろそろ帰らないと」
「本当だ!買い物もまだ終わってないのに!」
慌てるミリアムに、アリシアが優しく笑った。
「またいつでも来てくださいね。その時はぜひ白石さんもご一緒に」
「はい!今日はありがとうございました!」
「お心遣い、感謝いたします」
ミリアムとリーフィアはアリシアに別れを告げ、急いで残りの買い物を済ませた。帰り道、夕陽に染まる空の下、二人は今日の思い出を語り合った。
「素敵な一日でしたね、ミリアムさん」
「はい!アリシア様とお茶するなんて、夢みたいでした!」
リーフィアは柔らかな微笑みを浮かべ、西の空を見つめた。
「悠真さんに話したら、きっと驚くでしょうね」
「うん!アースくんとストーンくんにも、お土産買ったし!」
二人は笑い合いながら、白石牧場へと帰っていった。春の風が彼女たちの髪を優しく撫で、その日の思い出を心に留めるように。
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