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第61話 温泉に現れた不思議な来客
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初夏の陽気が牧場全体を包み込み、木々の葉が風に揺れる音が心地よく響いていた。悠真は納屋の前で、ベルの毛刈りを終えたところだった。
「お疲れ様。今年も上質な毛が取れたな」
悠真が手を伸ばすと、ベルは「メェー」と嬉しそうに鳴き、小さな首の鈴を揺らした。その瞬間、微かな静電気が悠真の指先をくすぐった。
「おっと、気持ちが高ぶってるみたいだな。雷は出さないでくれよ」
そう言いながら、悠真はベルの頭を優しく撫でた。遠くからは、ヘラクレスの鼻息が聞こえる。角から小さな炎が放たれ、朝の牧草を温めているようだった。
「悠真さーん!大変です!」
突然、リオンが慌てた様子で走ってきた。その手には何やら茶色い小包が握られている。
「どうした、リオン?」
「トレジャーがまた変なものを持ってきたんです!」
リオンが差し出した包みを広げると、中から白く尖った鉤爪のようなものが出てきた。光の加減によって色が変わるようだ。
「これは……何だ?」
悠真がそれを手に取ると、トレジャーがカァカァと鳴きながら納屋の屋根から飛び降りてきた。黒い羽根が朝日に照らされ、青く輝いている。
「おまえ、これはどこからとってきたんだ?」
悠真の言葉に、トレジャーは首を傾げ、カァと鳴いた。
「トレジャーが山の方から飛んできたのを見ました。人家のある方向じゃありませんでした」
リオンの言葉に、悠真は首を傾げた。山の方と言えば、ほとんど人が住んでいない。
――――――
朝食の時間、悠真はリーフィアとリオンに鉤爪のことを相談していた。テーブルには美味しそうな香りのパンと野菜のスープが並べられている。
「確かに鉤爪のように見えますけど、何の動物のでしょう?」
リーフィアが鉤爪をじっと見つめている。彼女の銀色の髪が朝日に照らされ、まるで光のベールを纏っているように見えた。
「わからない。トレジャーが持ってきたんだし、危険なものじゃ無いとは思うけど……」
悠真がそう言いかけた時、突然大きな物音がした。三人は慌てて外に飛び出した。
牧場の温泉の方から、モクモクと湯気が立ち上っていた。それも、普段の何倍もの勢いで。
「何が起きたんだ?」
近づいてみると、温泉が通常より明らかに熱くなっているようだった。湯気の向こうに、何かの影が見える。
「あ、あれは……」
湯気が少し晴れたところで、彼らは驚きの声を上げた。温泉の中には、今まで見たこともない生き物がいた。二本足で立つ姿は小柄な恐竜を思わせ、全身が赤と金の鱗で覆われていた。頭には小さな角が生え、太い尻尾がゆっくりと揺れている。
「恐竜……?」
悠真の呟きに、その生物はゆっくりと顔を上げた。真っ赤な目がじっと三人を見つめている。
「怖い……」
リオンが悠真の後ろに隠れた。リーフィアも少し緊張した様子だ。しかし、悠真はその恐竜に何か引かれるものを感じた。
「悠真さん、危ないですよ!」
リーフィアの警告も聞かず、悠真は温泉の縁に立った。生き物は悠真を見つめ、ゆっくりと鳴いた。
「クゥロ……」
その鳴き声は、予想に反して優しいものだった。
「お前、どうしたんだ?怪我でもしているのか?」
悠真が尋ねると、生き物は体を少し動かした。その時、後ろ足に巻き付いた何かが見えた。よく見ると、それは藤蔓のような植物だった。
「なるほど、足を怪我したんじゃなくて、絡まってしまったのか」
悠真は少し思案した後、袖をまくり上げ、温泉に入った。生暖かい湯が体を包む。
「悠真さん!」
リーフィアとリオンが心配そうに声を上げた。しかし、恐竜は悠真が近づいても攻撃する様子はない。むしろ、助けを求めているようだった。
「少し痛いかもしれないが、我慢してくれ」
悠真は優しく声をかけながら、藤蔓を解き始めた。生き物は時々「クゥロ」と鳴くものの、大人しく悠真の作業を見守っていた。
しばらくして、ようやく藤蔓がすべて解けた。恐竜は喜びのあまり、小さく跳ねた。温泉の湯が周囲に飛び散る。
「うわっ、水が!」
リオンが飛び退いたが間に合わず、湯を浴びてしまった。しかし、不思議なことにその湯は熱くなく、むしろ心地よい温かさだった。驚いたリオンが湯を見つめると、青みがかった色をしていることに気がついた。
「あれ?温泉の色が変わってる?」
悠真が首を傾げていると、その恐竜は温泉から出て、悠真の足元に擦り寄ってきた。
「お前、この温泉が好きなのか?」
恐竜は嬉しそうにこくこくと頷いた。そして、先ほどトレジャーが持ってきた鉤爪の方を見た。その様子から悠真は思いついたことを口にする。
「もしかして、これはお前のものか?」
再び恐竜は頷いた。悠真が鉤爪をよく見ると、先ほどより一回り小さくなっていた。
「もしかして、これが温泉の色が変わった原因なのか?」
生き物は「クゥロ、クゥロ」と鳴き、悠真の理解を肯定しているようだった。
「なるほど。お前はこの特別な温泉の為にここまで来たんだな」
――――――
その日の夕方、牧場は珍しい来客でにぎわっていた。新しく来た生き物――クロロと名付けられた温泉好きな恐竜は、他の動物たちに囲まれていた。
アズールは特に興味津々で、クロロの周りをぐるぐると回っている。同じ鱗を持つ仲間を見つけて嬉しいようだった。
「クロロの鉤爪には温泉の色を変える効果があったんですね。」
リオンがクロロの背中を優しく撫でながら言った。
「ああ。たぶんだけど、前に居たところの温泉が枯れてしまって、新しい温泉を探していたんじゃないかな」
悠真の言葉に、クロロは寂しそうな目で肯定するような仕草を見せた。
「でも、不思議ですね。トレジャーがどうしてクロロの爪を持ってきたのか」
リーフィアの疑問に、トレジャーはカァカァと鳴き、クロロの方を見た。
「もしかして、助けを求めていたクロロを見つけて、こっちに連れてきたのか?」
悠真の言葉に、トレジャーは誇らしげに胸を張った。どうやらそういうことらしい。
「なるほどな……それならクロロ、良かったらおまえもここに住むといいよ。あの温泉も必要みたいだしな」
悠真の提案に、クロロは嬉しそうに小さな炎を吐いた。その炎は悠真の近くの空気を温め、心地よい暖かさを与えた。
「そうだな。温泉の方にお前のための住み家でも作ってやるか」
悠真がそう言うと、テラが「ミュウミュウ」と鳴きながら飛び跳ねた。どうやら家作りを手伝うつもりのようだ。
「私も手伝います!」
リーフィアが微笑み、リオンも「僕も!」と元気よく手を挙げた。
牧場の温泉の近くでは、ベルが小さな雷を放ち、周囲を明るく照らしていた。ヘラクレスは角から出す炎で、夜の冷気を温めている。そして、トレジャーは何やら光るものを運んできては、クロロの新居予定地に置いていた。
「みんな、仲良くしてやってくれ」
悠真の言葉に、動物たちはそれぞれの鳴き声で応える。初夏の夜風が牧場を優しく撫で、星空が一段と美しく輝いていた。
翌朝、クロロの新居が完成した。温泉の横に、小さな岩の洞窟を作り、中はクロロが心地よく過ごせるように温かい石で敷き詰められていた。
「どうだ?気に入ったか?」
悠真の問いかけに、クロロは嬉しそうに「クゥロロ!」と鳴いた。その鳴き声は、牧場全体に温かさを運んでいるようだった。
「あっ、見てください!温泉が!」
リオンが指さす方向を見ると、牧場の温泉が突然色を変え始めた。クロロがまた鉤爪の一部を温泉に溶かしたようだ。
「面白いな……」
リーフィアの言葉に、悠真も頷いた。青く輝いていた温泉が、徐々に赤みがかってきた。
「青いのを被った時もいつもと何か違いましたし、この温泉も、何か特別な効果があるのかもしれませんね」
クロロは「クゥロ」と鳴き、その通りだと伝えているようだった。
「そうか、ありがとうな。でも、お前が元気に過ごしてくれるのが一番嬉しいよ」
悠真がクロロの頭を撫でると、温かな感触が手のひらに伝わってきた。初夏の陽光が牧場全体を優しく包み込み、新たな仲間を歓迎するかのように輝いていた。
「お疲れ様。今年も上質な毛が取れたな」
悠真が手を伸ばすと、ベルは「メェー」と嬉しそうに鳴き、小さな首の鈴を揺らした。その瞬間、微かな静電気が悠真の指先をくすぐった。
「おっと、気持ちが高ぶってるみたいだな。雷は出さないでくれよ」
そう言いながら、悠真はベルの頭を優しく撫でた。遠くからは、ヘラクレスの鼻息が聞こえる。角から小さな炎が放たれ、朝の牧草を温めているようだった。
「悠真さーん!大変です!」
突然、リオンが慌てた様子で走ってきた。その手には何やら茶色い小包が握られている。
「どうした、リオン?」
「トレジャーがまた変なものを持ってきたんです!」
リオンが差し出した包みを広げると、中から白く尖った鉤爪のようなものが出てきた。光の加減によって色が変わるようだ。
「これは……何だ?」
悠真がそれを手に取ると、トレジャーがカァカァと鳴きながら納屋の屋根から飛び降りてきた。黒い羽根が朝日に照らされ、青く輝いている。
「おまえ、これはどこからとってきたんだ?」
悠真の言葉に、トレジャーは首を傾げ、カァと鳴いた。
「トレジャーが山の方から飛んできたのを見ました。人家のある方向じゃありませんでした」
リオンの言葉に、悠真は首を傾げた。山の方と言えば、ほとんど人が住んでいない。
――――――
朝食の時間、悠真はリーフィアとリオンに鉤爪のことを相談していた。テーブルには美味しそうな香りのパンと野菜のスープが並べられている。
「確かに鉤爪のように見えますけど、何の動物のでしょう?」
リーフィアが鉤爪をじっと見つめている。彼女の銀色の髪が朝日に照らされ、まるで光のベールを纏っているように見えた。
「わからない。トレジャーが持ってきたんだし、危険なものじゃ無いとは思うけど……」
悠真がそう言いかけた時、突然大きな物音がした。三人は慌てて外に飛び出した。
牧場の温泉の方から、モクモクと湯気が立ち上っていた。それも、普段の何倍もの勢いで。
「何が起きたんだ?」
近づいてみると、温泉が通常より明らかに熱くなっているようだった。湯気の向こうに、何かの影が見える。
「あ、あれは……」
湯気が少し晴れたところで、彼らは驚きの声を上げた。温泉の中には、今まで見たこともない生き物がいた。二本足で立つ姿は小柄な恐竜を思わせ、全身が赤と金の鱗で覆われていた。頭には小さな角が生え、太い尻尾がゆっくりと揺れている。
「恐竜……?」
悠真の呟きに、その生物はゆっくりと顔を上げた。真っ赤な目がじっと三人を見つめている。
「怖い……」
リオンが悠真の後ろに隠れた。リーフィアも少し緊張した様子だ。しかし、悠真はその恐竜に何か引かれるものを感じた。
「悠真さん、危ないですよ!」
リーフィアの警告も聞かず、悠真は温泉の縁に立った。生き物は悠真を見つめ、ゆっくりと鳴いた。
「クゥロ……」
その鳴き声は、予想に反して優しいものだった。
「お前、どうしたんだ?怪我でもしているのか?」
悠真が尋ねると、生き物は体を少し動かした。その時、後ろ足に巻き付いた何かが見えた。よく見ると、それは藤蔓のような植物だった。
「なるほど、足を怪我したんじゃなくて、絡まってしまったのか」
悠真は少し思案した後、袖をまくり上げ、温泉に入った。生暖かい湯が体を包む。
「悠真さん!」
リーフィアとリオンが心配そうに声を上げた。しかし、恐竜は悠真が近づいても攻撃する様子はない。むしろ、助けを求めているようだった。
「少し痛いかもしれないが、我慢してくれ」
悠真は優しく声をかけながら、藤蔓を解き始めた。生き物は時々「クゥロ」と鳴くものの、大人しく悠真の作業を見守っていた。
しばらくして、ようやく藤蔓がすべて解けた。恐竜は喜びのあまり、小さく跳ねた。温泉の湯が周囲に飛び散る。
「うわっ、水が!」
リオンが飛び退いたが間に合わず、湯を浴びてしまった。しかし、不思議なことにその湯は熱くなく、むしろ心地よい温かさだった。驚いたリオンが湯を見つめると、青みがかった色をしていることに気がついた。
「あれ?温泉の色が変わってる?」
悠真が首を傾げていると、その恐竜は温泉から出て、悠真の足元に擦り寄ってきた。
「お前、この温泉が好きなのか?」
恐竜は嬉しそうにこくこくと頷いた。そして、先ほどトレジャーが持ってきた鉤爪の方を見た。その様子から悠真は思いついたことを口にする。
「もしかして、これはお前のものか?」
再び恐竜は頷いた。悠真が鉤爪をよく見ると、先ほどより一回り小さくなっていた。
「もしかして、これが温泉の色が変わった原因なのか?」
生き物は「クゥロ、クゥロ」と鳴き、悠真の理解を肯定しているようだった。
「なるほど。お前はこの特別な温泉の為にここまで来たんだな」
――――――
その日の夕方、牧場は珍しい来客でにぎわっていた。新しく来た生き物――クロロと名付けられた温泉好きな恐竜は、他の動物たちに囲まれていた。
アズールは特に興味津々で、クロロの周りをぐるぐると回っている。同じ鱗を持つ仲間を見つけて嬉しいようだった。
「クロロの鉤爪には温泉の色を変える効果があったんですね。」
リオンがクロロの背中を優しく撫でながら言った。
「ああ。たぶんだけど、前に居たところの温泉が枯れてしまって、新しい温泉を探していたんじゃないかな」
悠真の言葉に、クロロは寂しそうな目で肯定するような仕草を見せた。
「でも、不思議ですね。トレジャーがどうしてクロロの爪を持ってきたのか」
リーフィアの疑問に、トレジャーはカァカァと鳴き、クロロの方を見た。
「もしかして、助けを求めていたクロロを見つけて、こっちに連れてきたのか?」
悠真の言葉に、トレジャーは誇らしげに胸を張った。どうやらそういうことらしい。
「なるほどな……それならクロロ、良かったらおまえもここに住むといいよ。あの温泉も必要みたいだしな」
悠真の提案に、クロロは嬉しそうに小さな炎を吐いた。その炎は悠真の近くの空気を温め、心地よい暖かさを与えた。
「そうだな。温泉の方にお前のための住み家でも作ってやるか」
悠真がそう言うと、テラが「ミュウミュウ」と鳴きながら飛び跳ねた。どうやら家作りを手伝うつもりのようだ。
「私も手伝います!」
リーフィアが微笑み、リオンも「僕も!」と元気よく手を挙げた。
牧場の温泉の近くでは、ベルが小さな雷を放ち、周囲を明るく照らしていた。ヘラクレスは角から出す炎で、夜の冷気を温めている。そして、トレジャーは何やら光るものを運んできては、クロロの新居予定地に置いていた。
「みんな、仲良くしてやってくれ」
悠真の言葉に、動物たちはそれぞれの鳴き声で応える。初夏の夜風が牧場を優しく撫で、星空が一段と美しく輝いていた。
翌朝、クロロの新居が完成した。温泉の横に、小さな岩の洞窟を作り、中はクロロが心地よく過ごせるように温かい石で敷き詰められていた。
「どうだ?気に入ったか?」
悠真の問いかけに、クロロは嬉しそうに「クゥロロ!」と鳴いた。その鳴き声は、牧場全体に温かさを運んでいるようだった。
「あっ、見てください!温泉が!」
リオンが指さす方向を見ると、牧場の温泉が突然色を変え始めた。クロロがまた鉤爪の一部を温泉に溶かしたようだ。
「面白いな……」
リーフィアの言葉に、悠真も頷いた。青く輝いていた温泉が、徐々に赤みがかってきた。
「青いのを被った時もいつもと何か違いましたし、この温泉も、何か特別な効果があるのかもしれませんね」
クロロは「クゥロ」と鳴き、その通りだと伝えているようだった。
「そうか、ありがとうな。でも、お前が元気に過ごしてくれるのが一番嬉しいよ」
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